海より出でる異変
受付嬢「グレイ君、お仲間の様子はどう?」
グレイ「ああ。教えて貰った薬屋のエリクサーが効いて今は落ち着いているよ。この宿も斡旋してくれて…感謝する。」
受付嬢「いいのよ全然!困った時は支え合うのがこのザーザスのやり方なんだし!
…それとウチの旦那から聞いたんだけどね…あの海に出た巨大なイカなんだけどね…実は昔から存在してた特別環境破壊生物らしいのよ。」
シン「その話…もう少し詳しく聞かせてくれませんか!?」
目を覚ましたシンは勢いよく起きあがろうとしながら問いかける
グレイは落ち着くよう諭し、再び横にさせる。
受付嬢「ええ。…昔、この町には凄腕の漁師がいたの。その人が持っていたモリはどんな巨大な獲物も絶対に逃がさないって噂になってたそうよ。
なんでも獲物に刺したモリから足が現れて、捕らえて離さないんだって。
狙った獲物を離さないモリはその漁師しか使いこなせないから、いつしか漁師のモリはこの港の宝みたいになってたわ。
でもある時、漁師が海で行方不明になったそうなの。それ以降、あの海ではあの化け物が出るようになったそうよ。偶然かもしれないけどね…
漁師達の間じゃ海で命を落とした漁師の亡霊じゃないかって噂になってるの。
でも不思議だわ…今まで人を襲うなんて事なかったのに…もし出くわしたとしても獲った魚を海に返せば何もされないって聞いてたけど…どうしてこんなことに…」
『オマエのせいだ』
夢に出てきた言葉がシンの頭を過った
グレイ「大丈夫か?」
シン「あ…ああ。そういえばトウキは?」
グレイ「…。あいつは……」
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トウキ「くらえ!水刃斬!」
トウキは水の斬撃を飛ばして巨大イカと戦いを繰り広げていた。巨大イカは吸盤から触手を出してトウキを絡め取ろうとするが、トウキは斬撃で触手を切り落としていく。
そして巨大イカはトウキの足場となっている舟ごと叩き潰そうと触腕を振り上げる
トウキ「まずい!」
咄嗟に水のマナを足に集中してジェットのように足から射出させて舟から離脱に成功するが、叩き潰された舟は砕け散るように霧散してしまう
斬鮫「退路は絶たれたな…さて、勢い良く港を出てきたワケだが…このあとはどうするつもりだ?」
トウキ「なぁにこれからだよ!それ…狙いは定めてあるさ!行ってくれ!斬鮫ぇ!」
水のマナを噴き出しながら宙に浮く的となったトウキ目掛けて無数の触手が迫る中、トウキは斬鮫を投げ飛ばす
斬鮫「…なるほど!そういうことかよっ!!っと!」
斬鮫はトウキのマナを得て巨大イカの足めがけて飛んでいく。その先にはシンの石の剣が突き刺さっていたのだ
トウキ「(さっきの戦いでこっちがマナを纏った状態ならヤツの触手は体を掴むことが出来ないことは分かっている…。それに今はグレイが目を1つ潰したことで視界は限られてて、今なら攻撃する僕自身に注意が向いている。死角からなら確実に…)」
無数の触手を避けながらトウキは距離を取りながら掌から放つマナリス【ウォルター】で注意を引きつける。
それでもなお迫る触手を腕に纏ったマナを使って打ち払っていく。
斬鮫はその隙に石の剣が刺さった腕の肉ごと抉り取り奪還に成功するが
トウキ「しまった!?マナが…」
斬鮫「なに?!まずい!」
急にトウキのマナはエンジンストップでもしたかのように不意に出なくなり、動きが鈍ってしまう。
やがて触手に捕まったトウキの頭上にまで振り上げられら触腕の一撃を受け、海面に叩きつけられ沈んでしまう
斬鮫「トウキ!!!」
海に沈むトウキ目掛けて斬鮫も海に潜るが…
斬鮫「くっ…俺が貰ったマナも尽きかけてきやがる…沈んでいく…体が…うご…か…な…っ」
斬鮫の目の輝きが薄れていった瞬間、石の剣が鈍く光を放ち始めた。そして斬鮫のアゴが開き、中から青く長いマナの塊が海を泳ぐように抜け出していった…
トウキ「ああ…痛い…。さすがにあんなにデカイ腕でぶっ叩かれたら痛い…よなぁ…息もできない…意識が遠のく…意識が…!!!」
沈んでいくトウキ。巨大イカも海に潜り力尽きたトウキに迫り来る。今度こそ一巻の終わり、死を悟ったその直後、突然トウキは踠き苦しみ出す
トウキ「アアアアアア!?
(な、何だこの感覚…?まるで自分が自分でなくなっていくような…。血が…沸騰して細胞の1つ1つが身体から溢れ出しそうなこの感覚…痛い…苦しい…熱い…!何だこれは…)ウアアアアアア!」
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シン「…夢を見たんだ。トウキが、トウキじゃなくなってしまうような…そんな夢を!…頼む!急いでくれ!」
グレイ「いくらマナで動く機械仕掛けの舟でもこれ以上はスピードが出ない!!
それにこんな広い海だ!どこにいるかなんて…」
受付嬢の旦那から借り受けた小舟に乗ったグレイとシンも海に出ていた。
辺りを見渡していた次の瞬間、大きな鈍い音と共に目を疑うような光景が2人の目の前に現れた
グレイ「なんだよ…これ…」
海面から突き出した氷の柱が巨大なイカの体を串刺しにして磔にするかのように姿を晒せていた
氷の柱は巨大イカを突き上げ、その体すらも凍りつかせていく
周囲には冷気が漂い始め、突き刺すような海風はその鋭さを増していた。
巨大イカは自らを貫いている氷の柱を触腕で叩き壊し、再び海に潜り退散しようとするが
トウキ「ウグゥァァァァァァ!?!?」
海面から勢い良く飛び出したトウキの拳を受け再び宙へ舞う
獣の如く唸り声を発したトウキは明らかに様子がおかしい
シン「トウキ!!」
グレイ「なんだ?!あれは…?!」
シン「わからない…けど似てる。夢に出てきた姿に…鬼人に。」
なんとトウキの頭部からは2本の角が生えていた。目の色は碧色から黄色に変色し、我を忘れたように爪を立て巨大イカに食らい付いていた
トウキ「…ガァウ!!」
そして氷の柱が突き刺さったことで出来た穴の中から何かを見つけ、勢いよく引き抜いた
グレイ「あれは…槍?」
シン「いや、あれはモリだ!きっとさっき聞いた伝説の漁師が持っていたっていうモリだ!…まさかあのイカは…!?」
トウキ「ウウウウ…オオオオオオ!」
力を誇示するかのようにモリを天に突き立てた後に海面に叩きつけられた巨大イカに引き抜いたモリを突き刺す。
すると巨大イカは突き刺さった体よりも小さなモリへ吸い込まれるように消えていった。
グレイ「まずい…!波に飲まれる!」
しかし空中から勢いよく巨体が海面に叩きつけられた反動として生まれた大きな波に、近くにいたシンとグレイの小舟は飲み込まれてしまう
シン「ぐああああああ!」
トウキは再び力尽きたように動かなくなり、海へ沈んでいく…。
先程まで生えていた2本の角は縮んでいき、やがて頭部に埋もれていった。
薄れていく意識の中でセイリュウが迫り、自身の中に入り込んできたのを感じた。
セイリュウ「武器は持ち主に似るっていうけれど、想像以上だったねぇ〜。キミ、斬鮫より危険だよ。
ひとまず僕の力の一部をキミの中に入れさせて貰うよぉ。その力を抑えるための…“怠惰”の氷をね。キミ自身が一体何なのか、これからも見定めさせてもらうよ…。ん?この気配は…もしや…?」
荒れ狂う海の中で自身に似た力を感じたセイリュウ。その姿を見つめる目が海の奥底で怪しく光っているのであった。
海に沈んだ斬鮫と石の剣。そして意識を失ったトウキ、さらには波に飲まれたシンとグレイを巻き込むように潮の流れは急変し、海は荒れ始めていく…
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