星々と枷、刻まれていくもの
ウラヌス「ほう。ほう…帰ったか。」
トウキ「はい…ですがフィリアが…」
ウラヌス「“星”から聞いておるぞ。無事に枷にかけられた呪いを解き放ったそうじゃの。」
トウキ「ま、まじない?」
ウラヌス「フィリアちゃんの右手につけられた奴隷の証である枷には強い呪いがかけられていたのじゃ。
【成長阻害】の呪いじゃよ。獣人は幼体からの成長が人間のそれよりも早い。
そして獣人の強い身体能力も成長に比例して強くなるのじゃ。強くなられちゃ管理が難しくなるからの…。
幼体のままであれば、じっくり調教できると考えておったんじゃろうの。
そしてその呪いを解く鍵は『心からの強い思い』を叫ぶこと。
逆らえない状況に置かれれば、そんな事をすることはまず無いからの。実に手の込んだやり方よ。」
トウキ「いつでも外すことができると言っていたのはそういうことだったんですね。
…でも、あの村にまだ他にも同じように苦しんでる亜人の子達がいるかもしれません…どうにか助け出せませんか?」
ウラヌス「フィリアちゃんがいたところなら既に儂が近くの都市にある警察組織へ通報しておる。
取り締まられるのも時間の問題じゃろうの。」
トウキ「よかった…!!よかったね!フィリア!」
フィリア「うん…。」
ウラヌス「さて、改めて聞こう。
フィリアよ、お主はこの先どう生きたい?お主を縛る枷はもう無い。自由の身じゃ。そして、共にここに居る理由も無くなった訳じゃが?」
フィリア「…いいえ。私、もっと学びたい。ウラヌス先生にもっと色々な事を教わりたいんです!それに…私…その…」
フィリアは尾を振り、頬を赤らめながらトウキから貰ったチョーカーを見せる
ウラヌス「む?!それは…トウキから?!」
フィリア「はい…」
ウラヌス「…トウキよ。犬種の獣人にチョーカーを渡す理由は知っておるか?」
トウキ「へ?いえ、知らないです…」
ウラヌス「隷属の証…いや、この場合は伴侶の証というべきかの。」
トウキ「それってつまり…プロポーズ?!へ、え、あ!で、でもそれは子供用の大きさでサイズが合わなくて…そ、それにフィリアがバッって勝手に持って行っ…」
フィリア「だから私、ここでもっと勉強したいんです!!そしていつか…亜人も人間の子も関係なく学べる学校を作って、先生になりたいんです!」
トウキの話を遮ってフィリアが訴える
ウラヌス「うむ。うむ。よう言った。ではお主が選んだ道、突き進むが良い!儂もちょうど助手が欲しかったところじゃ。教える代わりに儂の手伝いをする…そんな感じでどうかの?」
フィリア「…はい!!」
フィリアはトウキに舌先を出しながらウインクをした
その様子を見てトウキは苦笑いしながら髪を掻く
ウラヌス「さて、色々あったがトウキよ、お主もどうやら戦いを通して何かを得られたようじゃの?」
トウキ「はい。今回、僕は屍異奴を…いえ、フィリアの兄を手にかけました。…それは僕がこの先、忘れちゃいけない重しになると思います。ですが、フィリアがそれだけじゃない事を教えてくれて、剣が…いや、斬鮫が一緒に戦ってくれる事を認めてくれたんです!」
ウラヌス「ほう。ほう。人喰いの剣が…か。先ほどよりも顔つきが凛々しくなったのはそれか。それだけでもおつかいの成果はあったってことよの。」
トウキ「…まさか先生、今回の屍異奴の侵攻、最初から把握してたんじゃないですか?」
ウラヌス「…だとしたら?」
トウキ「…何故、僕に行かせたのです?」
ウラヌス「全ては“星の声”を聴いたまでさ。…さて、さて。ではトウキ、最終試験といこうかの。」
トウキ「最終試験?」
ウラヌス「なーにさっきの戦いの続きよ。包みたまえ…星陣」
トウキとフィリアを巻き込みウラヌスが発生させた星陣は周囲を包みながら広がっていく
ウラヌス「そして…限界突破!星詠…ペルセウス!」
トウキ「?!…ペルセウスさん…」
ウラヌス「合格条件はペルセウスを倒す事。なぁに。星の使徒は生身の人間ではない。死ぬ事はないから思う存分戦うといい。」
ペルセウス「…」
ウラヌス「ペルよ、3じゃ。メデューサの盾の使用も許可する。そして…」
ペルセウス「…良いのですか?そのような事…」
ウラヌス「…何も言うな。この試験、どのような事が起こるか分からぬのが戦いだと言う事を改めて体験させるのじゃ」
ペルセウス「…はっ。ではトウキ殿、ゆくぞ!」
ペルセウスは右手に持つ剣でトウキに斬りかかる
トウキは斬鮫を構えて応戦するが、激しく斬りかかるペルセウスに気圧され防戦一方である
トウキ「くっ…この間までのペルセウスさんと違う…。」
ペルセウス「本気で来なければ、ケガでは済まさぬぞ!」
トウキ「ぐっ!」
防御が甘くなった隙を突かれ脇に蹴りを受けたトウキは吹き飛ばされる
そして…
ペルセウス「…フィリア殿、すまぬ。」
ペルセウスはフィリアを背後に回り、首元に刃を当てるのであった
トウキ「フィリア!!ペルセウスさん!?どうして…」
ペルセウス「武器を捨てよ。さもなくば彼女をここで殺す。」
トウキ「ペルセウスさん!」
ペルセウス「二度は…言わん」
フィリア「うっ!」
首元に刃をつけられ、腕で首を締め付けられたフィリアを前にトウキは苦虫を噛み締めるように斬鮫を投げ捨てた
トウキ「くっ…」
ペルセウス「そこを動くでないぞ」
フィリアを抱えながらペルセウスはトウキに寄ってくる
トウキ「ペルセウスさん!フィリアは関係ない!僕はどうなってもいいからフィリアを離してください!」
ペルセウス「笑止。」
ペルセウスは剣の柄頭でトウキの顔面を殴る
ペルセウス「そんなことで相手の好きにさせては何も救えん!人質も!自分も!何もかも全てを失うぞ!」
しかし殴られ続けるトウキの目は死んでいなかった。
次の瞬間、殴り続けるペルセウスの背後に投げ捨てられた斬鮫がペルセウスの右腕を切り千切ったのだ
トウキ「このくらいじゃやられないさ…僕の体は…妙に丈夫だからね!」
トウキはペルセウスの懐に飛び込みフィリアを奪還する
トウキ「…フィリア、離れてて」
フィリア「うん!」
ペルセウス「くっ…抜かった。よもや数刻でここまで自在に剣を操るようになるとは…」
トウキ「操っていません!僕たちは…一緒に戦っているんです!」
ペルセウス「!」
斬鮫の剣先を向けながらペルセウスに斬りかかる
ペルセウス「なんのっ!」
メデューサの盾の目を開き、トウキの動きを止める
トウキ「あ、足が…動かない?!」
ペルセウス「先程は少々驚いたが、身動きがとれなければ赤子同然よ!」
トウキ「…ど、どうか…な!」
斬鮫はトウキのマナを得たことで動くことができる。ペルセウスに向けられた剣先は顎のごとく開き、そこから勢いよく水流が放たれた
トウキ「その目で止められるのが1つだけなのはこの間の戦いで分かっていたさ!今、止められたのは僕の体の動きだけ!斬鮫の動きが止められてないのなら、僕のマナを斬鮫が吸収して放てばいいのさ!名付けて…キリサメウォルター!」
斬鮫「なーんか拍子抜けた名前だなァ…」
ペルセウス「み、見事…ぐ、ぐおおおお…」
ペルセウスは星屑となり消えていった
ウラヌス「ほう…ほう…それがお主の見つけた解か。武器としてでなく共に戦うとな。その思いはいずれ物との絆を紡いでくれることじゃろうぞ。
…ついでじゃ。もう1つこの老ぼれの試験に付き合ってはくれんかの?」
トウキ「ええ…。いいですけど次は何を…?」
ウラヌスは自身の趣味の部屋と語ったちょうこくぐ座とちょうこくべや座を呼び出した
ウラヌス「武器を使い、彫刻を作ってみるのじゃ。大ぶりだけでなく繊細な動きを身につけるのと、己の持つイメージを武器と共有し、1つの形にするんじゃ…これはプロセスでいうところの“研鑽”のうちの1つとも捉えることができるぞ。」
トウキ「なるほど…。斬鮫、どうだい?やってみないかい?!」
斬鮫「…いいだろう。どんな物ができるかは期待しないがな!」
トウキ「そう言うなって…ウラヌス先生、斬鮫もいいって言ってくれました!よろしくお願いします!」
ウラヌス「うぬ…うぬ。…ならばこの木材をお主の持つイメージを形に起こしてみなさい。お主の心と剣の中に宿る存在を…思い浮かべ、形とするのじゃ!」
斬鮫「妙に用意周到だな…おいトウキ、何か裏があるんじゃねェか?」
トウキ「何言ってるだよ〜!考えすぎだよ!せっかくだしやってみようよ!」
斬鮫と対話を試みる時のように静かに目を閉じた。
トウキ「僕達の中にある…イメージの共有…」
暗い空間…斬鮫の心象空間の中を斬鮫と共に飛ぶように進んでいくと、やがて青い龍の影と重なった
セイリュウ「…どうやら一歩前に進んだみたいだね〜。2人とも顔つきがこの間よりも凛々しくなったみたいだし〜。きっと…この先も…」
再びセイリュウは霧散していくが…
トウキ「!?」
斬鮫「…これは…水?」
今まで暗く、何も無い虚しい空間だったが、いつの間にかトウキの踝まで水が溢れていた
トウキ「なんだか力も湧いてきた気がする…」
斬鮫「俺もだ…これが俺たちの…」
やがてトウキは目を開き、斬鮫と共に目の前の木材に形を与えていくのであった…
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