帰路と岐路…それぞれの向かう場所
斬鮫との対話を経たトウキ。腕はガルガが実体化したオオカミに噛まれた傷と、斬鮫に噛まれた傷とでボロボロになっていた
フィリア「…ちゃ…ん!…トウキにお兄ちゃん!!」
対話した空間から意識を取り戻したトウキの目の前には動かなくなった斬鮫が横たわり、フィリアが服を掴み揺らしていた
フィリア「トウキお兄ちゃん!大丈夫?!」
トウキ「…あ、ああ!大丈夫!僕、体は妙に丈夫だから…!ほら、この通り…って、い…痛てて…」
ブンブンと腕を振って大丈夫なフリをするが、さすがに痛かったようだ。
フィリア「ふふふ!その調子じゃ大丈夫そう!安心したよっ」
トウキ「フィ、フィリア…やっぱ痛い!痛いっ…!」
茶化してトウキの腕を持ち上下させるフィリアは無邪気な笑みを浮かべていた
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星が近くで見える丘の上、この共同墓地の片隅に大きな樹が生えている。
2人はガルガの亡骸をその根元に埋葬した…。
土を埋め終えしばらく経った後、フィリアを改めて見たトウキはある事に気づく。
トウキ「あれ?…ねぇ?フィリア…」
フィリア「ん?」
トウキ「背、…大きく…なった?」
さっきまで子供だったフィリアの体はいつの間にか成人女性と同じくらいの背丈になっていたのだ
フィリア「そう言われてみると確かに…服もちょっとキツいかも?」
トウキ「一体何がどうなってんだ…って、そうだ!袋…!」
暴走した斬鮫に切られた袋の中身を確認するトウキ。だが次の瞬間、重いため息を吐く
トウキ「…フィリア…ゴメンよ。せっかく買ったのに…」
トウキが袋を開けると中にはチョーカーが入っていた
しかし袋ごと中身も切れてしまっていたのだった
トウキ「…そもそもコレ、子供用サイズだし…新しいの、用意するしかないなぁ…」
フィリア「それを買うために1人でお店入ったんだ…。あ!いい考え、思いついちゃった!」
フィリアはそう言うとガルガが身につけていた首飾りを手にした。
フィリア「せっかく買って貰ったんだし、大事にするよ!それに私、にいちゃんの分も生きていくって決めたから…!」
トウキから切れたチョーカーを奪うように取り、軽やかに走っていく
トウキ「ねえ!それ、どうするのさ!」
フィリア「内緒ー!出来てからのお楽しみ!
それよりも早く帰らないとウラヌス先生に怒られちゃうよー?!」
トウキ「え、あ、やばい!戻らなきゃ!勝手に双子も解いちゃったし…かけ直して貰わないと…」
フィリア「早く早くー!そんなに遅いんじゃあ私のこと、守れないよー?!早く帰ろー!トウキー!」
トウキ「え、ちょ…待ってよー!」
奴隷の証であった枷から解放された無邪気なオオカミ亜人の少女…フィリアを追うひとりぼっちだった少年…トウキ。2人は丘を駆け帰路につく。
そんな2人を星は見守るように見つめ続けていた。
一筋の流れ星が流れた夜空を、別の場所から見つめている者もいたのである
グレイ「…もうすぐだ…星都。ここに奴らが…」
夜空を睨むように見上げた少年…グレイは腰の銃に手を触れながら、足早に星都を目指し歩き続けていくのであった
時を同じくして調べ物をしている少女…シン。男の身なりに身を包み、内に秘めた思いすら隠す彼女はこの先どうなっていくのだろうか
シン「…?!まさか…嘘だろ?!」
一冊の本を見たシンは戸惑っていた
龍脈に関する星の記憶。以前トウキのいた村で屍異奴を倒した時にみたビジョンと酷似する内容が記されていた
シン「オロチの持つ8つの頭のうち、7つの首が斬られ、それぞれが夜空を這うように散っていった。散った先のうちにあるこの雪山って…トウキのいたあの村の近くにあった雪山だ…。それにその日から吹雪が吹き始めたって…。じゃあ、あの人喰いの剣を引き抜いた瞬間に吹雪が止んだということは…。あの剣の中にその首が宿ったということか?!あの村で屍異奴を倒した時に首が斬られるビジョンを見たのは偶然じゃなかった…!あれは首自身の記憶だったのか…
それにあの時見たビジョンでオロチの首を斬った戦士が持っている剣…もしかして…」
何かに取り憑かれているかのように資料を読み漁る。手に取った資料は自身の失った故郷であるアルマリアに関する本だった
シン「…やはりそうだ。最後の首を斬り落とす前にあの剣は力を使い果たして弾き飛ばされた。その飛ばされた先は…アルマリアだ。
都では神からの賜り物と言われていたこの剣は、突然夜空から降ってきたと巫女をしていた時に教わった。
この剣は首を斬るための剣…でもこの書物に書かれた剣の形に、まだわたしは変えられたことがない…。」
七支刀のように7つに分かれた刃がそこには記されていた
しかもその刃は首を斬るごとにその輝きを失っていったという
シン「7つの首を斬って力を使い果たした剣は石のように輝きを失い、主人の帰りを待っていた…
が、戦士は最後に残ったオロチの首と体を自身と共に地の奥へと封じた…」
深呼吸をし本を閉じたシン
新たな決意を胸に、書庫をあとにする
シン「万が一、あの人喰い剣を破壊されでもしたら中に眠る首もおそらく解放される。…しかしそうなれば、周囲にどんな影響を及ぼすか分からない。龍脈のエネルギーは膨大な自然の力。止まない吹雪が世界中に吹き荒れることだってあり得る…
それにこの石の剣も龍脈と関係があった。だからあの時、屍異奴を倒した時に首の記憶が垣間見た。
すると屍異奴もまた龍脈と関連している可能性が…?
ならばこれからやる事は…屍異奴を倒しながら、首の眠る地へ赴き、記憶を繋げる。その先にきっと答えがあるはず…」
まっすぐ前を見つめシンは歩き始めた
ウラヌス「…ほう。ほう。シンも新しい目的を見出せたようじゃの。アルマリアの巫女だけが代々扱える石の剣…その本来の姿を取り戻せるじゃろうかのぉ…
トウキよ…お主の持つその剣はあまりにも危険すぎる。世界を終わりなき凍土に染め上げるか、暴走して周囲を血の海に染め上げるか…どちらも阻止するためにも持ち主の剣との強い絆、お主自身の戦いに赴くための強い思いが必要じゃった。
例の獣人の屍異奴とその妹の存在は予想外じゃったが、これも星の定めか…
じゃが無事におつかいから戻って来られそうじゃの。
そしてグレイよ…獅子の眼は常にお主を見守っておる。監視をするよう伝えたが、2人と関わることで、お主が大切なことに気づけた時、父の形見はきっと応えてくれるはずじゃ。
1日でも早く、何かを掴み取って欲しいがのぉ…」
ウラヌスはそう呟き、それぞれの身を案じるのであった…
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