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受け止める重い思い

斬られたガルガは仰向けで芝の上に大の字で倒れる

力なく倒れる姿は先程までの動きと異なり、まるでもともと死にかけているかのように力ないものだった


フィリア「にいちゃん…」


トウキ「フィリア…」


フィリアが呼び駆け寄ろうとした瞬間


屍異奴「ウゥウゥゥ…フィ…リ…アァァァ…」


ガルガの斬り傷から赤黒いドロドロとしたモノが溢れ出る

それはガルガの身体を包みながら無理矢理彼を立ち上がらせ、手を伸ばしながらこちらへ近づいてくる


トウキ「屍異奴?!」


ガルガ「…家族を…次こそは…」


トウキは警戒して再び斬鮫を構える


ガルガ「…もって…守って…み…せる」


トウキ「…?!」


身を包み込まれていく中、ガルガは再び目を開けて呟いた

先程までとは異なり、自身にまとわりつく屍異奴を苦悶の表情を浮かべながら引き剥がそうと抵抗するガルガから放たれたその言葉を耳にしたトウキは驚いた


トウキ「さっきまでは人間を殺すことと家族を増やすことばかりを考えていたのに…?」


ガルガ「仲間は…俺が…守る…もう二度と…あんな目には…遭わせたく…ない…だけど…だけど!お前の好きには…させない…!」


屍異奴「ニンゲンを…1人残サズ…殺スゥゥゥ!…ソシテ増ヤセ…家族ヲ…俺をォォォォ…」


トウキ「そういえばウラヌス先生に教えてもらっている時に見た資料の中で『寄生型は取り憑いた者の感情を暴走させる』って書いてあったな…。

まさか…あの時逃した魔導針の屍異奴と同じように寄生型の屍異奴…パラサイトがガルガを既に侵蝕している?!」


トウキが分析をしている間にガルガは一歩ずつトウキの元へとにじり寄ってくる


トウキ「フィリア!今までの言動は…きっとお兄さんの本心じゃない!中にいた屍異奴がお兄さんの思いを歪めていたんだ!

フィリアを…家族を思いやり守ろうとしていた優しいお兄さんは今も…ずっと必死に戦っているんだ!!」


その言葉を聞いたフィリアは、抵抗するもどんどん屍異奴に取り込まれていく兄の姿を目にしてトウキに涙ながら訴えた


フィリア「トウキお兄ちゃん!にいちゃんを…もう楽にしてあげて!」


トウキ「ああ…!わかった!」


ガルガの体をほとんど包み込み乗っ取った屍異奴は、彼の鋭く尖った爪を立てトウキに向かって突き刺そうとする


屍異奴「ニンゲン…死ネェェェ!」


爪はトウキの頬を掠め、斬鮫がガルガの胸を貫いた


トウキ「家族を守りたいっていう気持ちは、家族の居なかった僕には正直よく分かりません…。

ですが…ガルガさん、あなたの思い…あなたが守ろうとしたものは僕が受け継ぎます。フィリアは僕たちが…僕が守ります!!」


ガルガ「ああ…。妹を…頼…む」


フィリア「にいちゃん…今までありがと。私、ひとりでもがんばるから…がんばるから!!…もう…ゆっくり休んで…。にいちゃん!にいちゃん!!」


トウキは震える手を抑えながらガルガに突き刺した斬鮫を引き抜く。

そしてフィリアがガルガに抱きつくと彼が巻いていた首飾りの紐が千切れて地に落ちた。

その瞬間、体を侵蝕していた屍異奴も跡形もなく崩れ去っていく

首飾りに寄生していた屍異奴から解放され、顕になったガルガの表情はとても安らかで目からは一筋の涙が頬を伝っていた


ガルガ「…ありが…とう」


そう言って再び倒れるガルガは眠るように息を引き取った


トウキは自身の手に付いたガルガの血を見つめながら震えていた

自身の手で命を奪った罪悪感と躊躇なく斬鮫で突き刺した瞬間の肉を裂く感触に嫌悪感を覚えていたのだ


トウキ「はぁ…はぁ…。何がフィリアを守る為の刃だ…。

何が斬鮫と前の持ち主を引き裂く原因になった屍異奴と戦うだよ…こんなのただの人殺しと変わらないじゃないか…」


力なく膝をつき、うなだれるトウキの姿をみたフィリアは駆け寄ってガルガの爪が掠ってできた傷に口づけをして舐めた


トウキ「!?」


フィリア「トウキ、私はトウキに守ってもらえたよ?それに…にいちゃんを屍異奴から救ってくれてありがとう。にいちゃん言ってたもん『ありがとう』って。それに…あんな安心しきった顔で亡くなる人、私は見たことないよ。だからトウキお兄ちゃんは殺したんじゃない。にいちゃんを救ってあげたんだよ!」


トウキ「…救った?僕が…。」


フィリアはトウキの手を握り笑顔で諭す

心なしかフィリアの手が大きく感じる。

今までは子供の手だったが、今はまるで大人の手のようにトウキの手を包み込んでいるようだ。


フィリア「にいちゃんが言った通り、人間達は私達を襲った。それに、お母さん達を殺した時もなんだか楽しそうだった…。でもトウキお兄ちゃんはガルガにいちゃんの思いを受け止めてくれた。それだけで私、嬉しかったよ?だから元気を出して!…そうだ!ね!さっきの話、途中だったよね?…ほ、ほら、お店の外で待たせてた理由!教えて?」


トウキ「…。そ、そうだったね。じ、実は…」


話を逸らしたフィリアを前に、トウキは戦いに疲れからか、よろめきながらも包みを手に取った


トウキ「…コレ、フィリアに似合うかなって。いつまでも手錠だけじゃ可愛そうだろうから、ウラヌス先生に頼んで外して貰ってから渡そうと思ってたんだけど…。さっきの戦いで袋、汚れちゃったね…ハハハ。コレじゃ…」


フィリア「ううん。嬉しいよ!手錠も外れたしちょうどいいじゃん!開けて見せてよ!」


トウキが袋を開けようとした瞬間、


斬鮫「血ダァ!血肉をもっと…ヒャハハハハハ!!!」


急に斬鮫が動きだし、襲いかかってきた。そして飛びかかった斬鮫はトウキの持つ袋を切ってしまう


斬鮫「外したかァ…次こそはァァァ!」


トウキ「フィリア!!」


宙を泳ぐ斬鮫は次の狙いをフィリアに定めたのか彼女に向かって突進する


斬鮫「?!」


フィリア「…?」


フィリアは目を閉じ死を覚悟したが、

トウキが目の前に立ち塞がっていた。自身の腕を斬鮫に噛ませ、斬鮫の動きを止めていた


斬鮫「血ィ…血ィ…!血ィ!!ん?!……違う。こ、この血は…?!?」


トウキは再び斬鮫と意識が繋がり、暗い心象空間の中で対面した


トウキ「いきなりどうしたんだよ?!」


斬鮫「…今回ばかりはお前に助けられたようだな。俺もよくわかんねぇが、知らねぇうちに誰でもいいから斬りたいって気持ちになって気がついたら…」


トウキ「…もしかしてこの間、セイリュウが言ってた暴走ってこのことじゃないか?!」


『君は戦いに明け暮れるうちに無意識のうちに斬り刻む事に執着するあまり、自我を失うほど暴れ回るから…。』


以前、青い龍と話した時に警告された言葉が脳裏を過ぎる


斬鮫「…。とにかく、助かった。それと…ついでだが、お前に言っておきたいことがある」


トウキ「?」


斬鮫「これから続ける戦いってのは、綺麗事だけじゃ済まねぇ事ばかりが起こり続ける。

時には残酷な選択を迫られるし、決断しなければいけない時も来る。どんな時でも己自身が答えを導かなくちゃいけねぇんだ。それが戦いだ。

だからこそ、忘れちゃいけねぇのは相手に勝つ前に自分に克つってことだ。

さっきお前は人殺しと同じだって言ってたが、それは違う。本当の人殺しは…さっきまでの俺みたいな…理性も思いも、何もないヤツのことを言うんだ。

だがお前はアイツの思いを聞き、そして受け継ぐと言った。言ってしまえばアイツと“対話"して互いを認め合えたんだよ。その気持ちを持ち続け、忘れない限りお前は人殺しにはならねぇし、克ち続けることが出来る!

…それだけは絶対忘れるな。

それだけだ!分かったらさっさと俺の中から出てけ!」


トウキ「斬鮫…。ありがとう。僕、忘れないよ。君の相棒で居続ける為にも!」


斬鮫「な…!っせぇ!さっさと行きやがれ!」


トウキ「ああ!」


トウキは暗い空間の中を走り去るように消えていった


斬鮫「相棒ねぇ。悪くはないかもな…。だがさっきの暴走は一体…。今回は簡単に抑えられたが…次はどうなる…?こんな調子じゃ俺は…」


そう呟いた斬鮫は暗い空間の中ひとり佇むのであった

お読み頂きありがとうございました。


もしも

・面白い

・続きが気になる

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皆さんに見て頂けること自体が嬉しいことですし、これからも貴重なお時間を共に過ごせるよう頑張って書いていければと思いますので応援よろしくお願いします_(:3 」∠)_

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