追い、駆け、思わぬ再会
ウラヌスがカラーバレッツを統べているという事実をシンやトウキは知らない。
グレイもまたシンやトウキとウラヌス=ノワールの関係を知らない。
ウラヌスが何を考えているのか、この時はまだ誰も知る由もなかった。
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ウラヌスがシンの様子を見にいくと言って去った後、一時休息中のトウキはシンから事前に貰っていた塗り薬を斬鮫に噛まれた腕に塗り終え、包帯を巻いていた。
斬鮫「…何を考えているか当ててやろうか?」
トウキ「触れていれば感覚を共有出来てるんでしょ?対話はできるようになったけど、言われなくても分かってる…つもりだよ」
対話に成功し、斬鮫と共に戦う意思が固まったものの、マナのコントロールが上手く出来ないトウキは俯きながら包帯を巻き続ける
斬鮫「マナってのはお前の体ん中を流れるエネルギーだ。臓物みてぇにマナを供給する部位があるわけじゃねぇし、血みたいに斬れば溢れるモンでもねぇ。目では見えない内に秘められた力なんだよ。出し加減は感覚を覚えていくしかねぇさ」
トウキ「…そうだね」
斬鮫「それによ、こういうのはある時急に閃いて、いつの間にかできるようになってるモンさ。今は得た情報の整理をすべきじゃねえか?」
トウキ「なんか妙に冷静なのが恐ろしいけど…確かにそうだね。フィリアと勉強してる分身した僕が、学んだ情報を整理しながらやれる事をやらないとね。」
斬鮫「ったく…分身するってのは便利なもんだねぇ…じゃ、それと併行してこっちこっちで、お前自身が何の属性のマナを持っているのか…それを知るところから始めるとしようかね」
トウキ「確か僕が出してるのは属性を付与していないただのマナだってさっきの戦いでペルセウスさんは言ってたよね…属性かー…」
斬鮫「…自身の持つマナの属性を確かめる方法はいくつかあるが、1番効率のいい方法を教えてやろうか?」
トウキ「ぜ、ぜひ…」
斬鮫「俺の中には、過去の戦いで俺を持って戦ったヤツらから奪ったマナのカスみたいなのが残ってる。それに触れて1番しっくり来るのがお前の属性ってこった。どうだ?シンプルでわかりやすいだろ?」
トウキ「ああ!ぜひ頼むよ!」
斬鮫「よし。じゃあもう一度俺ん中に入ってこい」
包帯を巻き終えたトウキは斬鮫の柄を握り目を閉じる。そして再び斬鮫の意識下へ…暗い空間の中に意識が入っていった
トウキ「…こうやって自由に斬鮫と直接やりとりができるようになったのも修行の成果ってやつかな…!じゃ!斬鮫!頼むよ!」
斬鮫「…ウ、ヴエェェェ!」
トウキ「ん”?!」
突然嘔吐し始めた斬鮫を目の前にトウキは唖然とした
斬鮫「…んじゃ、コレ、触って確かめてみ」
トウキ「これが…効率のいい方法?は…?触れって…コレを?!お前がう”ぇって吐いたモノを?か、簡単にいうなよ…」
斬鮫「アホか。別に汚かねぇよ!むしろ目に見えないエネルギーをこうやって具現化してやったんだから、むしろ感謝しろってんだ!」
トウキ「にしたって見た目が悪すぎるよ…まぁやるけどさ…(うわ、微妙に温いし…気持ち悪い…)」
斬鮫「その感じじゃあこの属性じゃねえな。つ、次…吐くぞ…」
トウキ「ま、まさか5属性全部やるのかよ?!」
斬鮫「当たり前だろ。ヴエェェェ…」
こうして品のない戦いが今始まった…
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一方その頃、勉強部屋では…
トウキ「うわ…っな、なんか手が妙に気持ち悪い感覚だなぁ…
この感じまで共有されんのかよ…」
ウラヌス「んむぅ…?何か始まったようじゃの?」
トウキ「ええ。斬鮫の中で向こうの僕が属性を見極めているようで…」
ウラヌス「ほう。ほう…それは興味深い…そうじゃ。ちょうどキリもよいし、こちらも休憩にしようかの」
トウキ「やっとですか…ふぅ〜…」
ウラヌス「ということで休憩ついでにおつかいも頼まれてくれんかの?」
トウキ「え!?ちょっと寝たいんですが…」
フィリア「おつかい!?行く行く!!!トウキお兄ちゃん、行こ?」
フィリアの純粋な瞳がトウキを見上げてうるうると訴える
トウキ「う…うん」
あえなく負けたトウキはウラヌスから買い物を頼まれ、街の商店街に出る。
離れないようにフィリアと手を繋ぎながら歩く姿は種族は違えど、まるで兄妹のようだった
『買って来るのは果実、スパイス、その他日用品…。余ったお金は自由に使っていいよ。ついでに街の観光でもしておいで』
そう記されたウラヌスのメモを見ながら会計をしようとすると…
商人「あら、かっわいい妹さんね〜!よーしコレ、サービスしてあげる!」
トウキ「え、いや、でも…」
商人「いいのよ!小さい妹さんに食べさせてあげんな!
そのかわり…気に入ってくれたら今度はウチで買ってくんなよ…?」
トウキ「ハ、ハハハ。なかなかお上手で…」
ニコニコ笑顔のフィリアはなんだか人ウケがいいみたいだ…。
サービスで貰った棒付きキャンディを舐めながらフィリアはルンルン気分で足を弾ませていた
トウキ「フィリア、ちょっとここで待ってて?」
フィリア「う…うん」
トウキ「念のため右手の枷は服の袖で隠れてるからいいけど、あまり見られないようにするんだよ?」
フィリア「うん…」
トウキはフィリアの手を離し雑貨屋に入っていった。
子供にとって1人で待っている時間というものはとても長く感じるものだ。フィリアも例外でなく、漠然とした不安を抱いていた。
もしも、このままトウキが自分を置いていったらどうなるのだろうか?
なぜ、ウラヌスは枷を外してくれなかったのか?
なぜ、シンは一緒にいないのか?
ナゼ ジブン ハ ココニ イルノカ
色々な考えが頭をよぎり目が回る。
それでも人が行き交う通りを、まるで捨てられた子犬のように見つめ続けていた。
知らない街、知らない人、1人で佇む自分を一度見て目を逸らす人たち
色々な声、音、気配。そして…
『懐かしいニオイ』
フィリア「…!!」
何かを感じたフィリアは一心に駆け出した
トウキ「お待たせー…って……あ、あれ?フィリア?」
足元には割れたキャンディだけが残されているのであった…。
一方フィリアは駆け続けていた
ニオイがする方向へ。何も考えずただそのニオイの元へと…。
トウキ「どうしよう…フィリアー!フィリアー?!」
慌てふためいている様子を見た通行人がフィリアの駆けて行った方向を教えてくれた
トウキ「(フィリア…どうして急に…。それに斬鮫は今、分身した僕が持っている…もし…何かあったら…。いや、弱気になるな!探すんだ。見つけて一緒に帰るんだ!)」
自身を鼓舞し必死で走るも、幼く小さな亜人の姿はどこにも見当たらない。
気がつくとウラヌスと出会った噴水のある広場に戻っていた。
服屋「あれ?この間のお客さん!ウチで買った服、相変わらず似合ってるじゃない!次に服買う時もまたウチでよろしくね!」
トウキ「はい!って今はそれどころじゃ…すみまでん!ここに女の子、走ってきませんでしたか?!一緒に服を買った!亜人の!オオカミの獣人の!フィリア…」
服屋「ちょっと落ち着きなって!…そういえばさっきあっちの方向に走っていくのを見たよ?声かけたんだけど気づいてくれないくらい必死で走ってたけど…。なぁに?ケンカでもした?」
トウキ「いえ、そういうわけでは…。とりあえずあっちですね?!ってあっちは…星都へ入ってきた門の方向…?!まさか街の外に?!」
服屋「あの子にも大きくなったらいつでもおいでって言っといてね〜!」
コクリと頷きトウキは噴水に頭を沈める
服屋「!?」
トウキ「…よし。落ち着いた。絶対…絶対伝えます!ありがとうございましたあああ!」
濡れた髪をかき上げ、トウキは再び走りだす
服屋「…ったく若いねぇ。アタシも、ああやって男に追われてみたかったねぇ…。さてと!馬鹿なこと言ってないで仕事仕事…っと!」
その様子を服屋は微笑ましく見つめて呟いた
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門番「いや、そんな女の子は通っていないよ?」
トウキ「そ、そんな…でも確かにこっちの方に…」
門番「一本道じゃないからね。どこかで曲がったんじゃないかな?
とりあえず、それらしい子が来たら通さないようにはするよ」
トウキ「ありがとうございます…でも門を出ないとしたら一体どこに…?ん?門番さん、あそこは…?」
門番「ああ、街の共同墓地だよ。星に近い街の景色がよく見える…いい場所なんだよ」
トウキ「ありがとうございます!行ってみます!」
門番「あいよ。気をつけてな!」
トウキが指差し走っていった先には丘があった。トウキはそれを見た瞬間にピンときたのか、よそ見をせずに全速力で走る。
そして…
トウキ「フィリア!!」
予想は的中。ついに見つけることができた。
フィリア「トウキ…お兄ちゃん?」
先ほどまで見ていた笑顔が消え曇った表情でフィリアは振り向いた。
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フィリア「どうしてここって分かったの?」
トウキ「野生の…勘…かな?」
フィリア「かん…?」
トウキ「この丘を見た時にここにいるかなぁって思ってさ。僕も住んでた村でずっと1人だったから…なんとなく気持ち、わかったっていうかさ…。
僕も悩んだ時、星を見てたからさ…1番星がよく見えるこの場所になら、きっとフィリアもここにいるかなって。」
フィリア「…!」
フィリアの顔の表情が再び明るくなった
フィリア「…急にね、懐かしいニオイがしたの。“家族”のニオイ。それで…ここ、お星さま、近くてきれいだから。ここからならお母さんも見えるかなって思ったの。」
トウキ「そうだったんだ…。亡くなったお母さんに…。そんなに想っていたんだ…。フィリア、1人にしちゃってごめんね」
フィリア「ううん。トウキお兄ちゃんは悪くないよ…。私こそ…勝手にいなくなっちゃってごめんなさい。」
トウキ「いいんだよ…。無事なら。本当によかった…じ、実はね、お店の前で待っててもらったのはね…」
?「よぉフィリアァ!ようやく会えたなァ!」
トウキの話を遮るように別の男が後ろからフィリアを呼ぶ
フィリア「…?!?に、にい…ちゃん…?!ガルガにいちゃん?!」
ガルガ「そうだよォ。お前の家族。お前の兄…ガルガだよォ!」
突然背後から現れた兄と呼ばれるガルガ。目元が隠れるほど深く被ったフードの奥から不気味な笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。
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