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旅の報告。その度に

シンは筆を取り報告書に情報を書き加えている


シン「…屍異奴…ドロニンギョウ。

長い間対象者の影に潜み、マナと現れる元となった者の思念を吸い続ける『共生型』。

練り込まれた粘土のように様々な形になることが可能で、周囲の物と融合することで実体化する存在。

今回立ち寄った村にて、大勢の村人に共通した『よそ者を追い出し、安寧を保ちたい』という思考の一致により複数同時に具現化。周囲の雪を媒介に実体化、合体するも無事に討伐。

後に出会った者の話によると、屍異奴と長時間思念共生していた為、排他的な思考だけが残ったことで互いに殺し合ったそうだ。

真相は不明だが、自身が生きる為に他人を排除することしか意識を保つことが困難な状態になっていたのであろう。

次に出会ったのも同じく『共生型』。

こちらも先程と同様に複数出現。病床の息子を生かしたい親の思念と、家族を守りたい思念、子自身の生きたいという思念から人を襲い食していたが、子と母が危機に瀕した際に父を呼ぶ等人間に近い行動を取っていた。その後住処としていた廃屋を取り込み一体化。

先の村にて雪山から持ち帰った人喰いの剣の暴走により沈黙。討伐後に人へ戻ることはなかったことから、

元の人間も既にエサと化した可能性あり。また人喰いの剣が腹を切り裂いた際に多量の血肉が四散したことから

屍異奴自身に人間自体の捕食は不可能と断定。しかしながらマナは吸い尽くすようで食された人間達が再び動くことは無かった。

続いて遭遇した屍異奴は、『寄生型』の屍異奴…パラサイト。持ち主の道具に寄生し、その道具の秘められた力を利用する。道具を媒介とし、持ち主の体を侵蝕していく厄介な存在。

雷雨により滑落し、這い上がろうとする者の強靭な生命に反応し寄生。

寄生されて間もなかったため、討伐後の当人は無事であった。

今回、背負っていたバックパックに寄生したと思っていたが、後にその中に入っていた魔導針であった可能性が浮上。

引き返し確認するも魔導針の残骸が無かった為、逃げられた可能性あり…っと。こんな感じかな。」


ウラヌス「今回も多くの情報を持ち帰ってくれたの…感謝するぞ。」


シン「いえ。星が“見たもの”に対して、わたしたちが“体験したもの”…報告するのがこの文書庫を使う上での契約の1つですから。

しかしここ最近、屍異奴が複数同時に発生することが多くなってきている気がします。」


ウラヌス「そうよのう。そこについても別で動いている組織もあるそうじゃしの。」


シン「はい。彼…グレイと名乗ったその男がそのように言っていました。それに彼は今まで見たこともない武器を使用していました。一見ただの鉄の塊のようですが、敵に近接せずとも筒の先から火のマナを高火力で高速射出して射抜くことができるモノなのですが…」


この世界にいわゆる“銃”と呼ばれる武器は普及していない。

遠距離攻撃のほとんどは属性を付与したマナを飛ばすことや弓矢だけだと認識しているシンにとって、その武器は驚くべき存在であったのだ。


ウラヌス「うーぬ…儂もそのようなモノは見たことも聞いたこともないのう…。じゃがそれが本当なら、弓のように矢を1本生成するよりもはるかに早く攻撃に転じることができる恐ろしいモノじゃな。」


シン「はい。その武器を持ったグレイの目的も同じく屍異奴の討滅が目的でした。」


ウラヌス「その辺りは星が見ていた通りじゃな。容赦なく討滅したそうじゃしの。よいかシンよ、その組織を知ろうと深入りはしない事じゃ。目をつけられたら大変だからの。」


シン「わ、わかりました。ですが…彼もまた屍異奴に対して憎しみを抱いている様子でしたし、目的が共通していれば今後も避けず協力していこうと思います」


ウラヌス「ふむ。ふむ…それもよかろう。じゃがしかし、彼“も”…か。シンよ。“罪”を冠したその名とお主の身なり、アルマリアの巫女であったお前さんに一体何があったんじゃ?」


シン「星の見えない夜闇の日に滅んだ都…アルマリア。すみません。あの日のことを今はあまり思い出したくないんです…。」


星の見えない夜闇の日…

この世界における星が眠りにつくことを表し、星々が輝きを失う日が存在する。

それは同時に魔の存在が活発になり各地で蠢く日でもあった。そんな夜を忌むべき日として多くの種族に恐れられているのだ。


ウラヌス「そうか…。すまんの。さて、さて、では別の事を聞こうかの。例の龍脈の件はどうじゃった?」


シン「はい。以前伺っていた龍脈に似た特徴がある地…異常なほど自然が溢れる地というのは、あの雪山に存在しないと思います。雪に覆われ、吹雪が止まない地でしたので…。」


ウラヌス「そうか…じゃが剣を抜いた時に吹雪が止まったと聞く。不思議なものじゃ…」


シン「あの剣…人喰いの剣に何か特殊な力があるのかもしれませんね?」


ウラヌス「先程手合わせした限りではあの剣は無属性のマナを水属性に変換するくらいしか見えんかったわい。…大戦時、持ち主に関わらず1人出に動き、多くの人間を斬り殺していったというあの殺戮衝動を抑えている“何か”が別で剣の中に潜んでおると儂は睨んでおる。」


シン「まさか…屍異奴が?!」


ウラヌス「いや、直接見ようと試みたのじゃが、悪意のようなものは感じんかった。それとは違う何かとても大いなる存在のような…。引き続き彼と共に旅をしながら様子をみておくれ。」


シン「わかりました。では、わたしはそろそろ本探しに戻ります」


ウラヌス「うむ。うむ。邪魔したの。ゆっくり過ごすといい。」


ウラヌスはそう言うと星の文書庫から消え去った


シン「…さ、調べ物の続きだ」


報告書を閉じたシンは鍵が導いた本を手に取り読み始めるのであった


ウラヌス「…さて次は」


戻ってきたウラヌスは忙しく動く。

今度は人の気配のない部屋に入っていく。そして懐から一本の絵筆を取り出し床に円を描いた。すると円内部が黒く染まっていき、まるで沼のようにウラヌスの体をを沈めていった


・

・

・


時を少し遡る。

とある街にて巨大な屍異奴が現れ、街の城壁を破壊していた

その屍異奴の目前にサラシを胸に巻き、着物を着崩した派手な身なりの緋色の髪を結んだ女性が立ち塞がっていた


女性「おうおうおう!随…っ分とまぁ立派じゃねぇか!こりゃ…今宵もいい花火が見られそうだなぁ!」


肩に担いだ巨大な筒を巨大な屍異奴に向け爆音と共に玉が放たれた


女性「打ち上がれ!鯉花(こいばな)・恍惚紅色椿(こうこつべにいろつばき)!」


玉はまるで鯉が滝を登るかのように空に昇る

そして巨大な屍異奴に当たるまでの間に小さな花火が幾つか開く。

屍異奴に着弾すると、さらに大きな花火が5回程連続で花開き、周りを明るく照らした

威力は凄まじく、巨大な屍異奴は一撃で沈黙しやがて崩れ始める


女性「くぅ〜〜〜〜!やっぱり戦いは夜に限るねぇ!花火はやっぱり夜に上げねぇとなぁ!」


避難していた街の住人たちも花火に目を奪われていた


住人「いやあ〜助かった!姉ちゃん!

名前はなんていうんだい?助けてもらった礼に何かご馳走するぞ!」


女性「あたしぁエカルラートっていうもんだ。色んなところで花火を打ち上げるしがない花火職人さっ。そうだなぁ〜…腹も減ったしせっかくだ!ご馳走になろうかね!」


女性…エカルラートが花火を打ち上げた大筒を担いだ瞬間、大筒に彩られている緋色の刻印が光り出す


エカルラート「あちゃー…悪いね!ちょっと野暮用が出来ちまったみたいだ。すまねぇが礼はまた今度頼む!」


胸元から緋色の絵筆を取り出して地面に円を描く。するとエカルラートは地面に潜るように消えていった


住人「え、ちょ!あれ…?!

い、居なくなっちゃったよ…」


エカルラートが行き着いた空間には同じように複数の者たちが集まってくる


紫色の髪に小さな欠けた王冠をつけた少年、優しく微笑んでいる妖艶な雰囲気を放つ銀髪の女性、深い青髪の気だるそうな男性、水色の髪をいじりながらビクビクしている少年、黄色い髪のケラケラ首を揺らした目の焦点が合っていない女性…そしてグレイ。


エカルラート「久々の招集だねぇ〜。しっかしまあ…相変わらずおかしろい連中ばっかだねぇ」


ウラヌス「エカルラートよ。お主もその1人じゃということを忘れちゃいかんぞ?」


エカルラート「へぇ〜いへぇい。そうでしたね〜。」


ウラヌス「さて…。みんな揃ったようだし、カラーバレッツの集会を始めようかの」


特殊な空間に集まった集団、カラーバレッツ。

彼らと向かい合うったウラヌスは話始めるのであった


ウラヌス「まずは皆、日々の屍異奴討滅ご苦労。星を通して皆の活躍は見させて貰っておる。

さて、今回は屍異奴戦でそれぞれが“体感したこと"をぜひ聞かせて欲しい。

…インディゴよ、お主から良いかの?」


インディゴ「はぁ…。俺ぁ相変わらず街の掃除をしてるだけさ。

…ダウナーシティ、あの街は相っ変わらずひでぇ場所さ。特に酷かったのはつい最近、貧困街のヤツらが集団でデモを起こしたんだが、機動隊に抑制された瞬間、同時にたくさんの影から屍異奴が現れて、ビルを巻き込みながら1つになっていって巨大化したって案件があった。

…まぁ仕留めたけど。さすがに通常よりデカくなっただけあって、一撃じゃ仕留められなかった…。

ハイ、報告終わり。久々に自分の属性のマナ使ったし、喋り疲れたからさ、もう寝ていいかノワールさんよ?」


ノワール…ウラヌスの事をそう呼ぶ青髪の青年インディゴは早口で喋り終えると青色の筆を取り出し帰ろうとする


ウラヌス(ノワール)「まぁ待っておれ。次じゃ。ジョーヌ」


ジョーヌ「えへ〜。アタシはいつも通りって感じかなぁ。あ!でも〜!アタシもデカいのに出くわしたよ!そんなに強くなかったけどアタシ以上に物壊してた〜」


黄色い髪の女性、ジョーヌはヘラヘラした様子で目を合わせず話す


続いて銀髪の女性シルバ、紫髪の少年アマランスも報告を終えた頃、

水色の髪の少年ペイルは手を挙げた


ペイル「あ…あああああ…あの…僕はまだ…任務地に向かっている最中で…そ、そんなデカいヤツきたら勝てる気がしないんで、

…ブルブル手の震えも止まらないし…誰か代わりに行ってもらえませんか!?」


アマランス「相変わらず卑しいヤツだな…いいから早く行って死んで来いよ」


シルバ「あんっ。こ〜らっアンスぅ、汚い言葉を使っちゃ…めっだよ?」


アマランス「で、でもぉシルバぁ〜…アイツ、仕事しないって言うんだよぉ〜?

僕ぅシルバに褒めてもらいたくて…頑張ってお仕事したのにアイツだけ何もしないのなんてズルいじゃぁん」


シルバに諭されたアマランスは甘えたような口調でシルバを見つめる


シルバ「もう…甘えん坊さんねぇ…それにペイル、あなたは強い子よ?あなたが目を閉じれば誰だって勝てないんだから」


アマランス「シルバぁアイツより僕の方が強いもん!

それよりも早くシルバに会いたいよぉ。」


シルバ「もうちょっとの辛抱よ?

もうすぐすれば私の仕事も片付くから。そしたらたーくさん…いいこいいこして…ぎゅーってしてあげるっ」


アマランス「うん…絶対だよぉ?」


シルバ「グレイも一緒にどぉ?」


グレイ「…シルバ、俺はもう15歳。大人なんだ。いい加減あなたも子離れしてくれ…」


シルバ「血の繋がりなんてないし、いつでも甘えていいんだからね?ペイルも帰ったら…ぎゅーってしてあげるわよ?」


ペイル「ひ…ひぃ?!い、いえ、僕は…あなたみたいな人、嫌いなんで遠慮します…」


アマランス「はッ!卑しい捨て子が。お前が土下座して頼んだって王様の僕がシルバには指一本触れさせねぇからな!

…ねぇシルバぁ?アイツら…特にあの半端モンのグレイのどこがいいのさ〜」


ウラヌス(ノワール)「…ゴホン!そろそろ…進めていいかな?」


ジョーヌ「あはははは〜ノワ爺、止めんの遅すぎぃ。そろそろアタシ、お腹ペコなんですけど〜」


エカルラート「んで?それはそうと今回はどんな要件でわざわざ皆を集めたんだ?ノワールの爺さんよ。」


ウラヌス(ノワール)「…うむ。皆も体験した通り、ここ最近複数の屍異奴が一体化して、巨大な姿になる事が増えて来ておる。

今まではホワイトが察知した巨大な屍異奴の対処はエカルラート1人に任せておったが、こう頻繁に出られちゃ敵わんからの。

今後は各々が対処するように念押ししようと思っての」


エカルラート「んだよ。んなこったぃ。

アタシは今まで通り、派手な花火を打ち上げてぇから別に問題ねぇけどな!」


ウラヌス(ノワール)「お主に渡した大筒…二式恋(にしきごい)の放つ1玉を仕込む時間は?」


エカルラート「物にもよるがぁ…だいたい3日くらいかねぇ」


ウラヌス(ノワール)「それでは他の者の手も借りんと回らんの。せめて1日で仕上げて欲しいもんじゃな」


エカルラート「かーっ!バカ言っちゃいけねぇ!アタシの花火はただ打つだけじゃぁいけねえのよ!

こう…火薬1つ仕込むにも1つ1つにアッツい思いも仕込んでいかねぇといけねぇわけよ?!

分かるか爺さん!」


ウラヌス(ノワール)「…こだわりが強すぎるのも考えようじゃなぁ…」


エカルラート「かっかっか…!職人ってのはそんなもんよ。というかそういえばホワイトは見かけねぇな?全員いるんじゃないのかい?」


ウラヌス(ノワール)「ホワイトには新しい人材を探しに行って貰っておる。

今時珍しく“プランタータイプ”の子が見つかっての」


シルバ「あら珍しい〜。その子ともぜひ遊びたいわぁ。」


アマランス「ねぇシルバぁ〜。僕だって“プランタータイプ“だよぉ?植物、作れるんだよ?」


シルバ「はいはい。そうだったわね〜!

でも、あなたが得意なのは毒花でしょう?

触ったらタダじゃ済まないじゃない。…それはそうと確かに現状を考えても、戦力不足よねぇ。やっぱりクリムゾンが抜けた穴は大きいわね〜」


グレイ「父さん…。」


ウラヌス(ノワール)「クリムゾンの死は星の定めで決まっておった事じゃ。

それに嘆いても死人は甦らん。今いる精鋭で討滅していく他ないのじゃよ。

…さてグレイよ、お主も巨大屍異奴と交戦したそうじゃの?」


グレイ「は、はい。指令書にあった街に行ったのですが、屍異奴と戦おうとする別の一行と出くわしまして…。その者たちと結果的には協力してなんとか…。」


アマランス「ふっ…さすがだよ。見ず知らずの奴らがいなきゃマトモに討滅もできない半端者め…。ったくなんでお前みたいなのが生き残ってカラーバレッツ最強の男とか言われてたクリムゾンのおっさんは死んじまったんだか…。逆だろフツーお前が死ねよ。役立たずの数合わせが。」


シルバ「言い過ぎよ?アンス」


アマランス「はぁい…ごめんなさぁい…」


シルバの一喝でアマランスは口を閉じた


ウラヌス(ノワール)「その件についてじゃが、今後しばらく彼らを監視して欲しいのじゃ」


グレイ「シンとトウキに…ですか?

何故あんな自分の武器すらまともに扱えないヤツらを監視する必要があるんです?」


アマランス「(けっ。人のこと言えねぇクセに偉そうに…)」


ウラヌス(ノワール)「彼の持つ人喰いの剣、アレがどうにも気になっての。脅威になると判断したらすぐ破壊して欲しいのじゃ」


グレイ「なるほど…。確かに屍異奴との戦闘で剣の持ち主…トウキはマナを奪われ、剣自体が持ち主を無視して勝手に動いていました。アレではいつか周囲の人間にも被害が出るかもしれないですね。」


ウラヌス(ノワール)「今、彼らは星都にいる。そこで合流し、彼らの旅路に同行するのじゃ。決して組織のことを悟られぬよう謹んで行動するように」


グレイ「…はい。」


ウラヌス(ノワール)「ではこれにて終了じゃ。

巨大屍異奴に対しては各々に渡した銃をこれからも“制御”し、“熟練”し続けるのじゃ。

その先に待つ“一体化”さえすれば、今以上に容易に対処できるようにもなる筈じゃ。

まずは引き続き中に眠る魂の“捕捉”に励むのじゃ。…頼んだぞ。」


それぞれは色がついた筆を持ち地面にバツ印を描く

そして元いた場所へと帰っていった


グレイ「…ノワールはああ言ってたけど、父さんがくれたこの銃にも…魂はあるんだろうか…」


そう呟きグレイも元いた場所へ戻っていった

お読み頂きありがとうございました。


もしも

・面白い

・続きが気になる

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皆さんに見て頂けること自体が嬉しいことですし、これからも貴重なお時間を共に過ごせるよう頑張って書いていければと思いますので応援よろしくお願いします_(:3 」∠)_

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