齧った跡後……
「ならセルト鉱山で働くしかないなぁ……」
サイバは、顎に手を添えて言う。
「……そうだな……まぁそれでも2人分なんてできる訳ないがな? 俺はコイツが奴隷になるに賭ける♪」
シビュター2は、ニヤける。
「…………」
……やはりそっちか……まぁいいさ……奴隷に堕ちる前の練習だと思えばさ?
ケイゴは、296さんを見る。
「…………」
296さんは、ケイゴと目が合うと小さく首を横に振った。
「ゆっくり体を休めて下さいね? たまには休憩しないと後々体に響くんですから……」
ケイゴは、初めての抱き抱えた女の子に優しく笑いかけた。
……せめて……296さんの分は稼いで見せる……どこの夢物語だ……俺に2人分の稼げる訳ない……奴隷には俺1人でいい……
「……じゃあ行くぞ? 296は寝かせとけ」
「……はい」
ケイゴは、お姫様抱っこで汚れた布が引かれた場所まで 296さんを運び優しく横たえさせた。
「……布団もかけましょう、ちょっと待ってて下さい」
……軽すぎる……こんな体で今まで……今日は、寝ててもらおう……
「…………」
髪に隠れてしまった顔は、ケイゴの方を向いていた。
ケイゴは、自分の檻の方に行き布を拾い上げた。
カサッ
「……ん? 何か落ちた……これは……パ……
ッ?!」
ケイゴは、落ちたものを拾い上げるとそれを見て瞬時に後ろを振り返る。
「……おい! 早く行くぞ! 場所知らないんだろ?」
サイバが、少しイライラしながら言う。
「……俺勝ち確? サイバ〜♪」
対してシビュター2は、ニヤニヤだ。
「……もう少し……待って下さい……」
ケイゴは、布を肩に担ぎ、両手で紙に包まれた何かを大事そうに持ち一点だけを見つめそこに近づきながら答えた。
「…………」
「…………」
ケイゴは、296さんの前で正座した。
「……こ、これ…… 296さんの食べてたやつ……ですよね?」
ケイゴは、両手に持っていた包みを開き、中身を取り出しある一点を指差した。
「…………」
首を横に振る296さん。
「……ぁ……ぅ……自分……その……」
ケイゴは、その反応を見て手を口に抑え揺れ始める。
「…………」
296さんは、その姿を見てるような無いような。
「……食べていい……でぇすが?」
ケイゴは、口元から手を離せず目がウルウルし始めた。
「…………」
首を縦に振る296さん。
「……ぁ……ありがとうご……あいまず」
ケイゴは、涙を流しながら口を大きく開け……
がブッ!
大きな一口で食らう。
「……なぁ……あいつ泣いてないか?」
「ん〜〜さぁなぁ……」
「……うぅ……うまい…なぁ〜……296さん……これ美味いですよ……美味しいです……」
ケイゴは、涙と鼻水がかかってしまったパンを美味しそうに食べる……大切に感謝して。
「…………」
296さんは布団の端をゆっくりゆっくりと、持ち上げてケイゴのほっぺに当てる。
「…………あぁ……良かった……俺は……偽善者でよかった……必ず……貴方を……」
……守ってみせる……
ケイゴは、 ほっぺに触れて上下に動く 296さんの細く折れてしまいそうなでも、力を与えてくれる手を両手で掴む。
「……美味しく食べたから、頑張れる……
……では、行ってきます」
ケイゴは、その手を離し悴んだ笑みを296さんに見せ、立ち上がり袖で顔をぬぐいシビュター2人に振り返った。
「……その賭け……
……俺の1人勝ちだ……」
……知ってるか? ヒロインの為なら主人公は……覚醒するって……主人公じゃない俺には無理だけどな!
……だって俺だぜ?
ケイゴは、2人の横を通り過ぎ、早歩きで進んで行った。
「お、おい! ……だとよ?♪」
「……口だけだろ……なんか一瞬ムワァって来たんだが……」
シビュター2人は、ガーリックソースの匂いを漂わせるデブスの囚人の後を追った。
「…………」
296さんは、静かになった牢屋に1人。
「…………」
(……気にするなっていった……)
「…………」
(……言う事聞かなかった……)
296は、無理をした結果体を壊した。
「…………」
(……私はもう奴隷になろうがこのままでもどちらでもよかった……だから、あの人間をヤギュの崖から救った……深く入ったから、こうなる事は分かっていた……)
「…………」
(……なのに……魔族の私を……人間は敵……)
「…………」
(……私の翼を奪った……名忠の愛した彼と同じ……
……人間……)
296さんは、思い出した事で、背中がズキズキと痛んだ。
鉄格子から覗く空は、暗く曇っていた。
ソウネを齧るケイゴと、パンを齧る296さんの……
ヤギュ・齧守りから救う異世界囚人生活始まるよ♪
なんてね?♪




