言うのなら……
「あ〜だり〜囚人共をずっと見てるのなんてめんどくせぇだけだしよ〜」
シビュター2は、サボるために今は誰もいないはずの牢屋がある部屋に入る。
ガサゴソ……
「……[ ファグニ・アル ]……スー……はぁ〜」
シビュター2は、胸ポケットから出した葉巻を口に咥え、魔法を唱えると小さい火球が掌の上にボァッと出てきて、それに葉巻の先端を当てて吸い始めた。
「……でも面白いよなぁ〜♪ 粋がってる奴がめっちゃ大人しくなるのはさ♪ 日頃のストレス発散になるし良い事尽くめだぜ!」
シビュター2は、牢屋を覗きながら歩く。
「しかし、296番はうぜ〜喋れないからってよ! 餌だってほとんど食いやしねー……死にたいのかね〜ぶっ殺してやっても良いが、面白くね〜からよ」
シビュター2は今度は反対の檻を見た。
「バッカだよ………なぁ………」
「…………」
泣きっ面のデブと見つめ合う。
「……なっ?! 何サボってやがる! 618番!」
口から葉巻を落とし慌てたように怒鳴るシビュター2。
「……牢屋から出られないんです……」
「……お? あぁ……そりゃ〜そうだな!
俺がここにいる事誰かに言ったら殺すぞ?」
シビュター2は、檻を掴み顔を近づけて言う。
「……分かっています……」
ケイゴは、素直に答えた。
「……よし! なら今出してやる……職場はどこが良いんだ? だが、時間的に目標は達成出来なさそうだが……」
「……それは構いません……
ソウネ選別に行かせてください」
「……おいおい、あそこは女しかいねーんだぞ? それにお前のした罪名を聞いて、殺す! とか言っていたミナだっているんだぞ?」
「……良いです……てかもう殺されるそうになりました……」
ケイゴは、儚い笑みを返した。
「……お、おう……もしかしてそこにいるのってそう言うことか?」
「はい……助けてくれたんです……自分には助けてくれる人がいた……それだけで死地に迎える」
ケイゴは、目が充血し泣いた後が分かるその顔ではっきりと答えた。
「……お前……死にたいのか?」
「死にたくないですよ……生きたいと思ってます……だから死にに行くんですよ」
「……あ? 何言ってるか分かんね〜な……まぁ行くぞ」
シビュター2は、ケイゴを檻から出し、先導する。
「…………」
……たくさん泣いた……もう十分弱音は吐いた……後は、ここから這い上がるのみ……
……これ以上下はないのだから……
ケイゴは、好きな人に言いたかった事を伝え、これから地獄は続く事を伝えられた今……諦める事をやめ、光を掴むために鎖をジャラジャラと鳴らし辛い職業に立ち向かう事に決めた。
「……ミナ〜お前の嫌いな618番連れて来たぞ〜」
「……なんで連れてくるの!」
ミナと呼ばれたシビュター女は、こちらを睨み怒鳴る。
「……サボってたから連れて来たんだよ」
「…………サボって……あんたがサボってたんでしょ?」
的確な判断だ……
「ちっ! ちげーよ! 俺は見回ってただけだ!」
「……そのクズはサボってないわよ」
「…………」
……えっ? 俺庇われてる? 辛くて苦しかったけどもしかしたら本当は良い人だったり……
「……私が殺そうとしたもの」
ミナさんは、そう俺を睨み言う……違かった……本人いる前でそう言うこと言わないでよ……なんで言うの? おかしいでしょ……
「……じゃ! 俺は行くわ!」
シビュター2は、何やらこれから起こる空気を察しその場を駆け足で去って行った。
「……クズ……よく来たわね」
ミナさんは、歪んだ笑みを作りそう言った。
「…………」
……こっわ! 何あの顔……綺麗な顔が台無しじゃないか……でも花の嫁さんの方がもっと怖いから、きつくない……
「……ネネさんと約束したからあんたは今日、目標を達成してる……なぜ来たの……」
ミナさんは、口から煙出るんじゃね? と言えるくらい殺意の目を向け俺に問う。
「……やはり優しいな貴方は……」
ケイゴは、小さく呟くとニヤける。
「何笑ってるの! また痛い目にあいたいの!?」
「……あいたくないですよ……でもそれが罪ならすれば良い……俺は生きるって決めた……その邪魔をするなら……」
「……何? また魔法で攻撃してくるつもり? 今度はそうはいかないから!」
「……シロフワさん」
ポンッ!
「……何……ヒカルンなんて出して……」
ミナさんは、警戒する。
「ピカルンって言ったら閃光してください、シロフワさん」
ケイゴは、小声でシロフワさんに言った。
「……聞こえてるんだけど……」
ミナは、小声で呟いた。
「……目を眩まします……この方法で身を守った事があったので、自分を殺そうと言うのなら、身を守ると自分は言います」
ケイゴは、生きる為に交渉に出た。
「……なぜ魔法を使えるのか知らないけど、ヒカルンで脅すなんて……全然怖くないわ」
「…………」
……的確な判断だ、俺もそう思うもん……シロフワさん可愛いもんな、逆に癒されるよなぁ……
でも……強い光が目に入ってくると人は大体動けなくなる。ほら、部屋に立てこもった人達によく投げ込まれるのあるじゃん? あれ閃光弾って言って、強い光と音で一時的に思考が停止するみたいな感じらしい……それほど光というものは恐ろしいんだ……俺は知ってる……
「……ふわぁん……これで……」
白いフワフワは……何も起こらなかった……
「……えっ……ふわぁんじゃダメってことか……う〜む」
俺は、白いフワフワに顔を近づけながら言う……魔法コントロールはそう簡単には行かないってことだな……
すると……白いフワフワは閃光した……すごい至近距離で……
「うぎゃーーー!! ぐぬおーー!!」
俺は、そのまま勢いよくぶっ倒れる。
「……何だよ……チクショー! 目が見えねーよ! [ ヒカルン ] め!」
「…………」
……がちで目が辛かった……シロフワさんは最初、じゃじゃ馬だったんだから……
「……また来たよ……」
「あれで懲りずにくるって馬鹿じゃないの〜?」
「……おっもしろ!」
囚人達は、ヒカルンを見ていた……ヒカルンは、フワフワと漂っていたがケイゴの頭に張り付く。
「……可愛い……」
「……かわいい……」
「……帽子見たい……おっもしろ!」
シロフワさんの愛くるしさは囚人達に有効だった。
「……ふざけてるのそれ……
……ちょっと可愛いかも……」
ミナは、シロフワさんに釘付けだった。
「……ふざけてませんよ……」
ケイゴは、頭からシロフワさんを剥がし宙に浮かすが、今度は後頭部にくっついた。
「……プッ!」
「勝手に動いてるの? あれ……そんな事ってある?」
「ない……おっもしろ!」
「…………」
296番は、ケイゴをじっと見ていた。
「どうせ来たのなら目標達成は取り消しにするわ……せっかくネネさんが言ってくれた事を無下にするなんてクズね」
「……そうですね……クズだ……」
「……残念だけどクズを消すのはしない事になったわ……ネネさんに感謝しなさい!」
「……はい、感謝しきれないほどに」
ケイゴは、後頭部にシロフワさんを付けたまま自分がソウネを選別していた場所に移動する。
「……俺は、生き延びてまた会える日が来るまで立ち上がるんだ……一生かかるなら二倍早くすればもう半分は外に出られるんだから」
ケイゴは、ソウネを取りに行った。
「……私も手伝うわ……でもその前に、頭に付けたまま気にならないの? 馬鹿なの?」
盾師匠は、弟子の馬鹿さ加減に呆れていたが、またいつものように戻り始めた様子を見て安堵した微笑みを浮かべていた。
悪いのならとことん悪い人なのか……それは分からないものです……




