職場の洗礼……
「…………」
はっはっはっ♪ 参ったね〜これは……職場変えさせてもらおう! うん!
ケイゴは、右隣から来る視線に冷や汗を流す。
「…………」
……やばいんだって……めっちゃ睨まれてるんだよ……顔動かせないよ? マジで……場違いで本当すいません……なんでこんな場所にしやがったんだよ! あの人! こうなるの分かってたよね?! 俺、女性襲う最低野郎なんだぞ?
実際は……襲われたい派です!!
「……すいません」
ケイゴは、意を決してシビュター女に話しかける。
「近づかないで……で? 何?」
シビュター女の特徴は、薄い茶髪で、短く切り揃え、まるで男の人の様に髪型をツンツンしてて、シビュターは皆同じ制服ようで、軍服のような構造をしている、色は黒だった。
その人は、俺から5m離れた位置からそう言う。
「……そ、その……仕事の場を変えたいのですが……」
俺は、その場で動かない様にして言った……ヤバイ、ガチでキツイ……早くここから出て居なくなるから……そんな目で見ないで……
「…………」
シビュター女は、腕に付けている時計みたいな物をチラッと見た後こう告げた。
「……その時間はないわ……今から他の所に行ったとしても、目標は達成出来ないわよ? それでもいいなら、好きにするといいわ」
シビュター女は、出入口を指差して言う……そうして欲しいの?……その指差しはそうなんでしょ……
「………分かりました……」
……我慢するしかないか……ここにいる人達だって俺と居るの嫌だと思うけど……奴隷になるにはいかない……盾士になれなくなる……
ケイゴは、自分のいた場所に戻る。
「…………」
……これは……あの一瞬で……
ケイゴが戻ると、左隣の人以外場所を移動し、山の様に積まれたソウネが自分のいた場所を埋め尽くしていた。
「…………」
……この方が俺的にも? 気が楽? いや〜嬉しいな! ありがとう!
ケイゴは、ソウネの隣に立ち一つ取る。
「……はぁ……」
……泣きソウネ……
ケイゴは、そのソウネの葉の裏を見て、葉脈を天井に付いている暗いヒカルンで透かして見た。
「……見えづらいなぁ……」
ケイゴは、近づけたり遠ざけて見てみるが、見えそうで見えないもどかしさが残るだけだった。
「…………」
……俺の秘策、使えないじゃん……もう終わったな……
ケイゴは、ゆっくりとソウネを机に置く。
「…………」
ケイゴは、ふと左が気になり隣を見ると、ケイゴを髪で顔が見えない人がこちらを向いていた。
「…………」
……貞……てか女性なのか? めっちゃ細い……胸もないし、腕もほとんど骨……脚は、ズボン履いてるてても分かる……俺の許容範囲を超えた細さだ……やっぱムチっとしたくらいがいいよな……
ケイゴは、その人の体を上から下に眺めて失礼な事を考えていると。
「…………」
そ〜とソウネを一つ、ソウネの山にプラスする。
「…………」
……そう言うの……俺が見てない時にやって欲しいんだけど……やられたくないけどもさ……てか、朝いた29……6? たしか……
ケイゴの強制に積まれたソウネの山に一つプラスするのは……ケイゴの牢屋の前さん296番だった。
「…………」
296番は、ソウネを置き終わると自分のソウネの山を選別して行った。
「…………」
……よくもやってくれたな……296よ……まぁもう一つくらい関係ないくらい終わってるしな……ふっ……
ケイゴは、机の上にある一つのソウネに目を落とす。
「……それでも……やるしかない……」
ケイゴは、ソウネを睨み気を改める。
「…………」
俺は、生きると決めた……お腹も空いている……俺の体はまだ生きたいと主張している、はは♪ ソウネを取りに行く時間が短縮出来た……そう考えるんだ……負けるな俺……
「……あの人から学んだ事は……無駄じゃなかった……」
ケイゴは、ソウネを両手に一つずつ持ちクロスする。
「……♪ デブが何故太るか知ってるか?……
……好きな物を食べまくるからだ! ガジッ!」
ケイゴは、クロスを解除する間にソウネ二つを小さく噛みちぎる。
「……?!」
隣の296番は、それを見て髪から覗く片目が見開いていた。
「……右毒ソウネ……左毒ソウネ……」
「「「「……ぇ………」」」」
ケイゴを見ていたシビュターと数名の囚人達は、あり得ない光景に固まる。
「……さぁ……俺が死ぬまでに何個ソウネが出るかな?……俺の運の良さ、見せてやるよ……」
ケイゴは、ほくそ笑み空いた席に毒ソウネを置いた。
「……サドンデス選別……あの人はこの山を1時間もかからない……先生」
ケイゴは、潤んだ目で次のソウネを掴み口に運ぶ。
「……俺……ソウネ……やっぱ好きだ……大好きだ……授業また……受けたいよぉ……」
ケイゴは、手に取るソウネを嚙り、それがまた両方とも毒であるのを確認し置く。
「……死にたくない、だから食う……俺はデブだから……食って食って、毒を食らってやる!……奴隷に落ちるくらいなら死んだ方がマシだ」
ケイゴは、誰にも聞こえないくらいで呟き手を動かし食い、その繰り返しで自分の視界が歪んで見えるのを涙のせいにして選別していく。
……いや、これは……毒ソウネか? まだだ! ここからが俺の力を見せる時……簡単な方法だ……それは!
食う!
……それはダメですよ、ケイゴさん
っ?! せ、先生
それは、最終手段で、やってはダメと言いましたよね? 毒ソウネの場合、お腹壊しちゃいますし、下手したら毒状態になっちゃうんですから
……す、すいません……
「……モグモグ……腹いてぇ……」
ケイゴはそれでも必死にソウネを喰らっていくき毒ソウネの山を増やしていく……薬ソウネはまだ山にすらなっていない。
……自分……好きです……
……ソウネが、大好きです
…………そ、そうですか
私も好きですよ? ソウネ
「…あああーー!! 嫌いになれるわけねーー!! 好きすぎて中毒だーー!!」
ケイゴは、狂ったようにソウネを喰らい叫び、ニヤける。
「……アイツ……壊れちゃったわね……」
「まぁ、そうなるだろ……おもしろ」
「……初めてよね? ああやってソウネを食べて自殺しようとする人♪」
囚人の女性達は、ケイゴの奇行を面白がりニタァと笑う。
「…………」
296番は、ケイゴのソウネの山から一つゆっくり掴み取ると自分のソウネの山に戻した……他の囚人達にバレない様に。
「……モグモグ! 毒! 毒! 毒! 薬!! 毒!!薬!!! 薬!!! 毒ーー!!」
ケイゴは自分の命を燃やし、何かに落ち詰められるかの様に山を作っていく。
「あなた! ソウネを食べるのをやめなさい! そんな事したら値が低くなるでしょ!!」
シビュター女は、ケイゴに近づくわけではなく、離れた位置から気持ち悪い人を見る目で怒鳴る。
「……腹が減って仕方ないんです、モグモグ……へへ♪」
ケイゴは、ヨダレを垂らした状態で口がベトベトしていながら、目の下にクマを作り、気持ち悪い笑みをシビュター女に振り返り向けた。
「……狂ってる……気持ち悪い!!」
シビュター女は、あからさまに気持ち悪がりそれ以上言う事は無かった。
「……モグモグ!」
……俺の顔気持ち悪いだろ? これが俺……そうこれが俺だ。
皆に蔑まれ、嫌われて、醜いオークで、デブな俺……でもね?
……俺も人間だ、生きたいんだよ! 死にたくない! 死んでいいと思ってるけど本音はそんな事なんて無いんだ! 愛されたかった! 好きと言いたかった! 俺だって! 恋したかったんだ!
あぁ! エッチしたかった! 今も思ってるさ、あの場で言った事は、俺の本音だ! 最低だろ?! ……だからこそ、言いたくなかった! 誰だって心の中は酷いこと考えたりするだろ? それを口にしただけだ、本当にするつもりなんてない、ある訳ないに決まってる! 俺は、女性の笑った姿が……楽しそうにする姿が見たくて……でも……俺は弱すぎる……守れない……約束したのに……あの人とこのライトセルを……貴方の盾になりたかっただけなのに……
ケイゴは、ソウネを食選別していき涙を流す。
「……モグモグ!」
毒ソウネの山を作り、自分の手に感覚が薄れていくのを感じ、死が近づいているのを感じて、それでもニヤけるケイゴ。
……門番である私は、ライトセルに住む皆んなを守って……冒険者になるケイゴは……
……私を含めてライトセルを守ってほしいわ
……え?
……でも……あの時の約束破ったら許さないから……必ず帰ってくるって……
「……約束果たせそうに、ありません……でも……」
……私は、貴方がいなくなるのは嫌よ……もう私たちは、知り合い……私は門番でこの町を守りたい、この町に住む……
ケイゴも含めてみんなを、ね?
えっ?
ケイゴは、恩返ししたい人が居るんでしょ? 私も居るの……レンくんともう1人……
……だから……その人に恩返ししたくても、ケイゴがそんな辛そうな顔してたら出来ないわ……
「……俺が恩を返したいのは……貴方だから……笑わなきゃ♪」
ケイゴは、ほとんど開かない涙目の下にクマを、身体中から変な汗を流しフラフラで、口の周りには、ヨダレでベトベト、ヒゲは伸び、髪はボサボサ体系は相変わらずデブのままに鎖に繋がれ囚人となって、囚人とシビュターの女性達から向けられる殺意の視線を浴びでもなお……
その頬は上がり、ソウネの汁で少し緑っぽい歯を見せて笑う。
「……カフィス飲みだい……」
俺は、救われたあの日からずっとずっと……
「……貴方に救われていた……」
[ キュアキュア ]
「……毒は解けるけど……貴方へ思いは、やっぱり……」
ケイゴは、白い光に包まれた。
「……解けないや」
そして、光が晴れた時ケイゴは……
……晴れた笑顔だった。
ケイゴは、弱いけど少しずつ成長していた……
頑張ってくれ! 618番




