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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第4034話 雷の試練編 ――再起動――

 瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域で待ち受けていたのはカイトも見た事がないという、とある世界を模したらしい宇宙港と、再びとなる地球側の面々との合流であった。

 そうしてたどり着いた遠未来の宇宙港の一角にある低温エリアに足を踏み入れたカイト達だったが、そんな彼らを待ち受けていたのはエリア全体に広がる氷塊であった。というわけでひとまず凍結した低温エリアの調査を進める一同であったが、イヴよりこの異常が予備の動力炉の非常停止に引きずられる形で引き起こされた可能性が示唆。

 凍結したエリアの回復を目指して、予備の動力炉の再起動するべく行動を開始するわけだが、その最中案の定エリア一帯の凍結が動力炉の非常停止によるものだと判明。排管の中を動く生物兵器の襲撃を受けながらも、なんとか動力炉の再稼働に成功する。


『反応炉安定化終了! シールド展開!』


 ぶぅん、という音と共に、動力炉全体を覆い尽くすようなシールドが展開される。というわけで動力炉の安定化処理まで終わった所で、カイトがソレイユに問いかける。


「了解。ソレイユ、残存は?」

『まだまだ居るっぽい』

「どーっすっかな」

『いっそ全部焼いちゃう? 排管なら逃げ場無いし』

「それも手だなぁ」


 ユリィの提案に、カイトはそれも手だが、という様子で同意する。そんな様子のカイトにユリィが問いかける。


『なんかある?』

「いや、全域が温まっちゃって保管庫の連中とかまで目覚めると厄介だなー、と」

『あー……確かに魔術自体に飛び火しないようにできるけど、燃えた後はどうしようもできないからねー……』

「そう……で、そこに排管という狭いエリアが加われば、一気に全体を熱して別の異常を引き起こしかねない」


 自身の懸念を理解したユリィに、カイトは一つ頷いた。


『じゃあやっぱり駄目かー』

「だな……さりとて排管の中を冷やすと今度はまた同じ事になるだろうし……さて、どうしたものか」


 冷やせばまたエリア全体が異常を来しかねないし、逆に温めれば今度は冷凍保存しているだろう実験体達を目覚めさせかねない。別に自分達だけなら実験体が何十体目覚めようと問題にはならないが、浬らはそうは言えない。迂闊な事はできなかった。というわけでどうやって動力炉の防衛を行おうか考える一同であったが、そこにイヴが口を挟んだ。


『ああ、それなら問題ないであります。ちょっと待って欲しいであります』

「『ん?』」


 どうやらイヴにはなにか手立てがあったらしい。再度制御端末を操作して、なにかをしようとしていた。というわけでしばらくの後、排管の出入り口にシールドが展開される。


『これでよし、であります。排管は非常時に閉鎖出来るようになっていたであります。警戒レベルを上昇させて、動力室に入れないようにしたであります』

「なるほどな……中に居る奴らは?」

『封鎖はあくまで動力室のみであります。そこだけはしょうがないであります』

「それはしゃーないか」


 どうやらあくまで動力炉を保護するためだけのものだったからだろう。とはいえ、それでも問題はなかった。


「とはいえ……そうなるとここからはどこで襲撃を受けてもおかしくない、ってわけか」

『であります……あ、そうだ。ちょっと待って欲しいであります。ついでなので動力炉を守るドロイド達を手配するであります』

「出来るのか?」

『出来るであります。この動力炉は基本独立した警備システムを保有しているであります。ハッキング等で操られて、という事のないよう独立したシステムであります』

「そりゃ良い。やってくれ」


 自分達が張り付かなくても良いようになっているようだ。カイトはイヴの返答に上機嫌で頷いた。そうして更に数分。動力炉を守る独立した警備システムが再起動して、動力炉を守るドロイド達が転送されてくる。


『来たでありますな。コマンダー』

『繧、繧ィ繧ケ繝槭Β』

『動力炉の防衛行動を再開するであります』

『繧、繧ィ繧ケ繝槭Β』

『待って。何?』


 一応言語だろうとはわかるのだが、何を言っているかさっぱりわからない。そんな防衛ドロイドの司令官とでも言うべき個体の返答に、思わず浬が待ったを掛ける。


『ん? ああ、翻訳機能が同期されてないでありますからな。このドロイド達は本官らの言語でないと喋れないし、意思の疎通が出来ないであります。なので浬殿が試しに話しかけても反応はしてくれないであります』

『ふーん……やってみても良い?』

『どうぞであります』


 どうせ出来ないので問題ない、と判断したのだろう。イヴは浬の問いかけに頷いた。


『えっと……コマンダー? 整列!』

『……』

「……そもそも話しかけられたとさえ認識してないみたいだな」

『……』


 流石にそれは考えていなかった。浬はカイトの指摘に僅かに赤面する。まぁ、幸いヘルメットのお陰で顔は見えなかったが。というわけでそんな彼女に笑いながら、カイトは自身の方を向くコマンダーを見る。


「ま、そんなもんだ。こっちの言葉は登録されていない言語。未知の言語として反応しないようにセッティングされているんだろう……そもそもイヴの翻訳もオレ達の翻訳と同期させてやってるわけだしな」

『そ、そっか』

「そういうこったな……ま、だからといってオレ達がこいつらを動かす事もない。返答がわからなくても良いだろう」

『そうでありますな……あ、でもそうだ。一応報告を受け取れないと万が一の場合に困るでありますので、やっぱり翻訳は出来るようにしといた方が良いと思うであります』

「そりゃ確かに」


 ここから先、何があるかはわからない。ならば可能性の一つとして、動力炉への襲撃が起きる可能性は十分にあっただろう。となるとイヴしか報告を受け取れないでは、彼女が居ない場合どうする事も出来なくなってしまう可能性があった。というわけでイヴは自身の翻訳データと警備ドロイド達の翻訳データを同期。カイト達が報告を聞けるようにする。そうして少しの後、イヴが指揮官に向けて指示を出した。


『コマンダー。緊急事態条項1の1。襲撃時における指揮系統の統一に基づき、以降作戦の最高司令官は本官ではなくこちらのカイト……えっと、天音カイト殿とするであります』

『本作戦の最高責任者を確認。司令、ご用命を』

「オレか」


 どうやらイヴは指揮官としての命令権限もカイトに委ねたらしい。カイトは彼女の判断に思わず苦笑する。これにイヴが笑った。


『そっちのが良いであります。本官は指揮官型ではなく戦闘型。確かに必要に応じて多少の指揮は出来るでありますが、全軍の統括なぞは専門外であります』

「あいあい……コマンダー。動力炉の防衛を第一として、襲撃時には本端末に登録されている登録アドレス全名へ報告せよ」

『指示を確認。動力炉の防衛を第一と設定。報告を同期アドレス宛に設定……他にご用命は』


 とりあえずこれで万が一の襲撃時に全員に報告が回るようになったな。カイトは警備ドロイドの問いかけに一つ頷いた。そうして受けた問いかけに、カイトは続けて指示を出す。


「残存兵力を確認」

『残存兵力を確認……残存兵力は割り当てられた兵員の100%』

「なに? あれだけ戦闘があったのにか?」

『それはおそらく動力炉の非常停止が、ここまで敵が来る前に起きたからだと思うであります。更に言えば動力室にも敵は入っていませんでしたので、ここでの戦闘自体がなかったのだと考えられるであります』


 盛大に顔を顰めるカイトの問いかけに、イヴは動力炉を守るドロイド達の被害がなかった事について答える。


「なるほどな……てか、お前ら使わなかったのかよ。どうせ入られた所で一緒だろ。敵だって連邦の中央政府の航路データが欲しいんだから、動力炉を暴走させる事はなかっただろうしな」

『そりゃ使えるなら使いたかったであります。ただ動力炉はハイパーワープを使うのに必要だったでありますし、最終便が出た後にわざわざここまで来て指示の書き換えなぞやってる暇なかったであります』

「そりゃそうだ。出来たとしたら副隊長さんだけか」


 イヴの指摘に、カイトは思わず目を点にする。そしてこれにイヴもまた一つ頷いた。


『まぁ、そうだと思うであります。ただその副隊長とて、ここまで来て指示の書き換えなぞやってる暇があるわけなかったであります』

「そうだわな……ま、それなら有り難く防衛に使わせて貰うとするか」


 イヴの返答にカイトは一つ頷いて、動力炉防衛用のドロイドを再確認する。といってもすでに最優先の指示は出ているからか、特に動く事もなく待機状態を維持しているだけであった。と、そんな事を話していると。瞬の怒声が響き渡った。


『おい、カイト! そっちはまだ終わらないのか!?』

「ん? あ、悪い悪い。ちょっと待っててくれ。コマンダー。残存兵力の30%を制御室の防衛に割り振れ。30%は動力室、燃料貯蔵庫を定期巡回。残り40%は予備兵力として待機状態を維持」

『了解。制御室では現在戦闘が発生中のご様子ですが』

「っと、危ない……先に共有した識別情報は全て味方だ。共和国連合の生物兵器のみを敵として設定しろ」

『了解……』


 カイトの指示を受けて、コマンダーが別の一体に向けて視線を向ける。そうしてコマンダーからの指示を受けて、指示を受けた一体と十数体のドロイド達が動力室を後にして制御室へと突入。魔弾を放ち、小型の生物兵器達への攻撃を開始する。


『なっ、なんだ!?』

『援護します』

『は? え?』

「先輩。今そっちに増援を送った。一度押し戻した後はそいつらだけで事足りる」

『え? あぁ、これはお前らの手配か』


 瞬からしてみれば急に制御室から魔弾の弾幕が放たれたのだ。何事かと思ったのも無理はなかっただろう。まぁ、幸い彼も狙いが生物兵器達だけだと察して攻撃する事はなかった。


「よし。これで動力室は制圧だ……問題は帰り道かな」


 とりあえずこれで動力室と制御室は問題ないだろう。カイトはそう判断し、少しだけ肩の力を抜く。そうして、しばらくの後。一同は生物兵器の襲撃が途絶えたタイミングで動力室を後にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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