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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第4025話 雷の試練編 ――合流――

 瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域で待ち受けていたのはカイトも見た事がないという、とある世界を模したらしい宇宙港と、再びとなる地球側の面々との合流であった。そうして数日の探索の後の小休止で行ったミーティングで、各班の合流を目指すことになっていた。

 というわけで色々と探索を経て施設の外の輸送路を通って外側からの別エリアへの潜入を目指したカイトであったが、瞬達の側でゲートの開閉が出来ないどころかガレージ前まで到達が困難であると判明。別のルートを探るべく、単身で瞬らとの間接的な合流を果たすと、なんとか研究エリアへの連絡路を見付けていた。


「……なんか壮絶に嫌な予感しかしない」

「そりゃそうだろ。襲撃を受けてんだから」

「まぁ……そうだけどさ」

「なんででありますか。別に至極普通の研究所であります」


 浬の言葉に納得するカイトに、イヴは理解出来ないという様子で小首を傾げる。とはいえ、それも無理もなかった。


「いや、だって……こんな綺麗な研究所で、しかも荒らされ回ってるなんて……明らかエイリアンとかが出てきて逃げ回るハメになるじゃん」

「いや、綺麗と言われましても……本官らにとってはこれが標準なんでありますが。というかエイリアンってなんでありますか。異星人なんて珍しくもないであります」

「そりゃそうだろうけど……」


 イヴの返答に、浬は自分がおかしい事を言っている事が分かっているからこそ恥ずかしげだ。そもそもイヴの属していた文明はすでに他星系にまで活動領域を広げ、それどころか別の惑星の文明との星間戦争にさえ陥っている。その時点で異星人なぞ珍しいどころか、隣の国程度でしかなかった。


「ま、こいつの話はほっとけ。いわゆるホラゲを思い浮かべてるだけだ。研究所が襲撃を受けて実験体が暴走だ、脱走だ、なんてよくあるストーリーだろ」

「ああ、ゲームでありますか。確かに本官の所属していた文明でも使い古され過ぎたネタでありますなー。総隊長殿のお子さんが副隊長とよく喋ってたのを覚えてるであります」


 イヴの文明には地球の科学技術を更に発展させたような各種のドロイドが居たのだ。当然娯楽にしても、地球と同じように電子ゲームの類は発達していたのだろう。ホラーゲームの類もあったらしく、ようやく浬が何を想像していたかを理解したようだ。どこか苦笑気味に笑っていた。


「あれ? 副隊長さんって意外と若かったの? 無茶苦茶強い、っていうから結構年上なのかと思ったんだけど」

「いや、相当な年齢とは聞いてるであります。ただ種族的な物も相まって、この見た目と精神年齢で止まっちまった、と嘆いてたであります。見た目としては二十代前半の男性であります。まぁ、中身子供でありますが……だからか子供には大人気だったっぽいでありますな。精神年齢一緒だったであります」

「へー……」

「お前……副隊長に対してだけあたり強くねぇか?」


 ただただ強い強いだけ言われ続けた所に、実態としては気の良い兄ちゃんというイメージがいきなり降って湧いたからだろう。浬はかなり好感を抱いた一方で、カイトの方はそんな副隊長に対するぞんざいな扱いに呆れ半分苦笑い半分だ。だがこれに、イヴは鼻で笑う。


「副隊長の扱いはこんなんで良いであります。というか、あれで性格まで完璧だったら逆に嫌味にもほどがあるであります。あの性格だから良い、という方も居たぐらいでありますのに」

「え? ということは容姿も完璧だったの?」

「まぁ、本官は機械生命体なので容姿の美醜はわからないでありますが……容姿の美醜は抜きにしても割と男女から人気高かったらしいであります。良くわからんであります……ま、今の話を本人に聞かれでもしたら本官、ぶっ殺されるでありますけどな!」


 まさに鬼の居ぬ間に洗濯。ここぞとばかりに副隊長に対してぞんざいな扱いを隠そうともしないイヴに、浬はそんな事を思う。とはいえ、大笑いしながらそんなことを言えるのはイヴ自身がその副隊長を慕っているから、と言い切れただろう。と、そんな彼女に浬はふと思う事を口にした。


「というかさ……その副隊長さんって生きてるんでしょ?」

「そうでありますな。あの副隊長、最強と言えるほどの強さを持ってるにも関わらず、絶対に鍛錬は怠らなかったであります。男性人気はそこらに起因してるでありますな。別に本官らが腑抜けてた、と言うつもりはないでありますが、あれはちょっと積んだ時間が違うと思ってるであります」

「それは良いんだけど……イヴちゃんは機械生命体だよね?」

「でありますな」

「……脱出までに何があったか、とか記録抜かれたりしないの? 確か作製者? お母さんみたいなの居るんだよね。で、その人は無事で、副隊長さんも無事。ということは、今一緒に居るんじゃないの?」

「……」


 あれ、これもしかして本官すっごくマズい事してしまっているのでは。浬の指摘に、イヴの顔が一気に青ざめていく。そうしてガタガタと震え上がった彼女が、涙目で大声を上げた。


「だ、誰か今すぐ本官のメモリにアクセスしてここの記憶を削除して欲しいであります! 本官、自分の記憶メモリの削除は出来ないであります!」

「「「……」」」


 口は災いの元。思うだけならメモリには残らないが、口に出せば記録に残る。半べそで自分のしでかしていた事を思い出して必死に助けを乞うイヴに、全員が呆れたように笑うだけだ。というわけで、カイトが代表して介錯を行う事にした。


「諦めて殴られろ。残念ながら、オレ達の誰もお前のメモリを改ざんなんて出来ないからな」

「うんぐあぁああああ!」


 楽しげに笑いながらぽんっ、と肩を叩かれて告げられた言葉に、イヴが珍妙な叫び声を上げる。そうしてさめざめと泣きながら、ブツクサと呟いた。


「カイト殿も浬殿も鬼であります……悪魔であります……副隊長であります……そんな厳しい現実突きつけないで欲しいであります……本官か弱い女の子であります……」

「調子に乗ったイヴちゃんが悪いでしょ、どう考えても。というか副隊長って……また怒られるよ?」

「うぐぅ……」


 浬の指摘に、イヴはただ研究エリアの床をイジイジと弄っていた。現実逃避という所だろう。と、そんな彼女にカイトは笑いながら助言を送る。


「ま、これに凝りたらその高性能なおつむをフル活用して、なにか言う前に考えるようにするんだな……ってなわけで。先輩! 出てきて良いぞ!」

「「え?」」

「……なんだ、お前達だったのか」


 カイトの言葉に、通路の角から瞬が姿を現す。そしてその後ろからイミナら、同じ班に突っ込まれた面々も同様に姿を見せる。当然だが合流を目指し、そしておおよその合流地点の目処は立っていたのだ。近くに来ていて当然だった。


「聞いたことのない妙な声が聞こえたから警戒して壁際に隠れながら移動していたんだが……なんだったんだ? さっきのは」

「さぁな……どこかのポンコツロボットが不具合を起こしたんだろ」

「本官はポンコツであります……」

「そ、そうか……」


 何があったかまでは定かではないが、いつもならポンコツと言われようものなら反発してくるイヴが受け入れているあたり、なにかを彼女がしでかしたのだろうと瞬も理解したようだ。だがだからこそどう反応して良いかわからなかったようで、ただ引きつった顔で受け入れるだけだった。


「で、とりあえず……これで合流出来たわけだが」

「本官はお荷物であります。ただ引っ張られるだけがお似合いであります……」

「おい、イヴ。いい加減立て。仕事すんぞ」

「りょ、了解であります」


 いつまでもイジケられても困る。そんな様子で発せられたカイトの言葉に、イヴが大慌てで立ち上がる。


「ったく……先輩。とりあえず全員で情報共有をしたい。というより、こっちは全く情報がないに等しいからな。まずは研究エリアの情報を共有してくれ」

「そうなると目指すべきは会議室か、ミーティングルームだろう。通信室に全員入れれば良いんだが……こっちだけでかなりぎゅうぎゅう詰めだったからな」

「わかった。こちらはそちらの指示に従う。ルートとかは指示してくれ」


 このエリアの調査はしていないのだ。カイト達はルートに詳しくなく、瞬らに従う事にしたようだ。というわけでまずは情報共有するべく歩き出した一同だが、そこで浬は視線を感じる事になる。


「……あの、なにか……」

「……ああ、いや、すまん。カイト様の妹か、とな」

「えっと……あの、お兄ちゃんが何か……」


 浬を見ていたのはイミナだ。その理由も事情を知っていればさもありなんではあっただろうが、ここまでほとんどイミナとは話してこなかった浬が知る由もなかった。


「いや、すまない。カイト様に何かされたとか、私がなにかしたとかはないんだ。ただあの休息日の酒盛りの時も話す機会に恵まれなかったからな」

「は、はぁ……」


 浬が聞いたのはセレスティアとイミナの関係性と、二人がエネフィアとも違う異世界から来たという程度だ。なのでイミナのフルネームは知らなかったし、カイトとどういう関係なのかも知らなかった。

 一応カイトがかなり親しげかつ時折今はもう居ない友人を懐かしむ様子があったので古い仲間の親族なのだろう、とは理解している程度だった。


「……あー……その、何だ。君は一応マクダウェル家……ではないんだな?」

「だと思います……正直、わからないです」

「それはそうだろう」


 浬の困ったような返答に、イミナはさもありなんと言わんばかりに少しだけ笑う。なにせ転生したカイトがイミナ達とはまた別の異世界に渡って、そこで記憶を一部取り戻して興した家がマクダウェル家なのだ。地球に居たという浬達がわかるわけもなかったし、あまりに状況が特殊過ぎた。


「……実は私もマクダウェル家の者なんだ。私はイミナ・マクダウェル。マクダウェルの騎士の一人だ」

「え?」

「端的に話すと、カイト様の前世が私のご先祖様の兄なんだ」

「そ、そうなんですか!?」


 この世には前世の記憶を取り戻した者がいる。浬はその程度は聞いた事があったらしい。とはいえ、それが兄だとは思ってもいなかったようで、イミナの話に目を見開いて驚いていた。


「ああ……だからカイト様が興された家は私にとって親戚のようなものなんだ。しかも元々カイト様は養子でな。我々マクダウェル家の騎士達とカイト様にとって、血の繋がりなぞ無意味だ。マクダウェルの騎士の矜持を今もお持ちになり、そして雷迅卿の遺志を胸に秘められている……それで十分過ぎるほどにな」

「そ、そうだったんですか……」

「ああ……だからある意味では君もまた私にとって親戚のようなもの……なのかとな」


 カイトの近辺では色々と普通と異なる事が多すぎて、イミナも浬と海瑠をどう判定すれば良いかわからなかったようだ。ただ同時に祖先のクロードがカイトの弟だという所があり、浬らに興味を抱かずにはいられなかったのであった。というわけで困ったように笑うイミナに、浬も同じ顔を浮かべた。


「どう……なんでしょうか。私も良くわからないです。なんか急に妹が増えたり姉が増えたり……他にも家族がいっぱいだとかなんとかで、ちょっと混乱してます」

「あははは……だろうな。私もそんな気分だ。まさかこんな所で君達に会うとは思わなかった。これは雷の大精霊様に感謝している所だ」


 少なくともイミナは浬の事を気に入ってはいるようだ。まぁ、ともすれば人助けという点においてはカイトより積極的だ。ある意味善良な市民の代表とも言える浬は好感が持てたのだろう。というわけで浬はミーティングルームにたどり着くまでの少しの間、イミナとの間で会話を行う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
浬と異世界組の会話はほっこりする アウラとはまだ遭遇してなかった気がするからそことの絡みも気になる
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