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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第4024話 雷の試練編 ――移動――

 瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域で待ち受けていたのはカイトも見た事がないという、とある世界を模したらしい宇宙港と、再びとなる地球側の面々との合流であった。そうして数日の探索の後の小休止で行ったミーティングで各班の合流を目指すことになり、イヴの助言を頼りに最外周を目指す事になっていた。

 というわけで最外周にたどり着いて合流を目指すわけだが、そこで研究エリアの外周部への出入り口が隠されている可能性が高いと判明。カイトは一人、バイクで研究エリアの外側に到着する。

 そうして紆余曲折を経て研究エリアの中庭でなんとか端末間の情報共有に成功したカイトはその後、再び一人軍用エリアへと帰還。翌日になって今度は連絡路を探し出す事にしていた。


「こっちだ」


 昨日の間に瞬の班との間で地図の共有を行った事で、カイトの持つ端末にある地図データには研究エリアの地図も映し出されていた。といっても両エリアの接続部は空白状態になっており、一見すると各エリアが独立しているように見えた。が、カイトはこの何処かに連絡路があると睨んでいた。


「お兄ちゃん。ホントにあるの? 連絡路? なんて」

「あるだろう。わざわざテレポーテーションルームでしか移動出来ないなら、壁際のエリアは手間だろ。かといって近距離なのにテレポーテーション装置を設置するのは無駄でしかない。しかもテレポーテーションルームを制圧されちまうと、研究エリアへの増援が行けなくなる。必然内部の連絡路はある……まぁ、ぶっちゃけた話をするとイヴの話でそれは最初から分かってたんだけどな」

「そうなの?」


 イヴは宇宙港エリアの個人用の格納庫に重型を格納したという。その後は修理完了まで格納庫の外で奮戦していたわけだが、その後は宇宙港エリアから軍用エリアを目指したという。その時点で宇宙港エリアから他のエリアへ移動出来るルートがある事は明白だった。


「そうでありますな……ただ現在本官の保有する情報はこの基地の情報と同等。連絡路は隠されてしまっているっぽいであります」

「ねぇ、試しになんだけど……イヴちゃんって大精霊? とかの隠してる情報をハッキングとか……」

「お、恐ろしい事を言わないで欲しいであります! 本官まだ消されたくないであります!」


 浬の問いかけに対して、イヴは顔を真っ青にしながらぶんぶんと首を振る。まぁ、本来大精霊達への対応としてはこれが標準だ。エネフィアでも同様なので、こんな事を口にする地球がおかしいのであった。


「そ、そっか……」

「あはは……ま、イヴがいくら高性能を誇ろうと、大精霊達には敵わん。現状合流やらも目標にされている所を見ると、やらせるつもりはないだろう。どっちにしろ無理だっただろうな」

「そっかぁ」


 カイトの言葉に浬は少しだけ残念そうだ。だがイヴの反応もあり、無理なものなのだと納得はしたらしい。というわけで後はカイトに続いて歩いていくだけだが、そうしてたどり着いたのは軍用エリアと研究エリアの境目。ちょうどイヴの小型宇宙船があった格納庫エリアに近いエリアだった。といっても格納庫エリアには入らず、その手前にあるくの字に折れ曲がった通路に立っていた。


「考えれば当然の話か。研究エリアに格納庫なんぞ作れん。てか、軍港か? 軍港に荷降ろしして、そこから研究エリアに持っていきたい。ってなれば、人の移動でわざわざ外のガレージを経由してたら時間がいくらあっても足りやしない。てなれば、ここの付近に連絡路があるって話なんだろう」

「なるほど……で、どこに?」

「多分ここなんよ」


 浬の質問に、カイトは楽しげに笑う。先にあるのは折れ曲がった通路。一見すると行き止まりだ。しかし壁の先はというと、ちょうどここから先はエリアの境目になっており、その先は研究エリアだった。


「連絡路があるとすると、ここかもう一個逆側か……それか両方にあると考えるべきだろうな」

「壁だけど……やっぱりここは丸まってボムでどかんっ?」

「やってみる?」

「ちょ、冗談だって! なんでそんなの持ってんの!?」


 これが通じるのはお兄ちゃんだけだった。どこからともなく丸い魔石を取り出したソレイユを、浬は大慌てで制止する。丸い魔石がなにか、はこの流れを考えれば考えるまでもないだろう。というわけでそんな丸い魔石を仕舞いながら、ソレイユが答えた。


「冒険者の必需品だから」

「そ、そんな危ない必需品やめなよ……というか、そんな皆持ってるの?」

「持ってないの、多分カイトだけだよ。カイトはそこらへんに落ちてる小石で作れるから……私もほら」

「いや、オレも普通に持ち歩いてるぞ。作れるけど手間だからな」

「えぇ……」


 危険極まりなくないか。兄を含めユリィもソレイユも小型の爆弾を持ち歩いているという異世界に、浬は思わずドン引きしていた。


「まぁ、これが何かと便利なんよ。遺跡に閉じ込められた時とかな。お前も一個持っとくか?」

「持つかぁ!」

「魔力を注がない限り爆発しないから、思ってるより安全だぞ? 魔力を注がない限り単なる石だからプラスチック爆弾とかより安全で、火薬なんかと違って水中で使えなくなる事もない」

「それでも要らんわ」


 一個持っとけよ。そんな塩梅で差し出してくる兄に対して、浬は断固として拒否する。


「そうか? まぁ、確かに地球に居たら役立つことはあんまりないが……試練……は、まぁ中に用意されてるから別だが。裏の色々な荒事に関わると爆弾が必要になる場面割とあるんだが」

「そもそもさぁ……荒事ならそうなる前にお兄ちゃんがなんとかしといてよ」

「……それもそうか」


 他の誰でもなくオレ自身のために。浬の甘えたような言葉に対して、カイトは確かにそれはそうだと思わず納得したらしい。そもそも彼としても、弟妹が要らぬ荒事に巻き込まれるのは御免被りたい所だ。

 もしそれがまだ避けられなかったのなら仕方がないと諦めもするが、おおよそ彼女らの近辺で起きるだろう荒事は大半が彼が原因だ。巻き込まれる前提で物事を考えるのは、それはそれで彼の沽券に関わった。というわけで彼は取り出していた魔石を仕舞うと、再び眼の前の壁に向き直る。


「まぁ、気を取り直して……とりあえずこの壁の先に通路があるんだろう、と思うております」

「それは良いんだけど……どうするの? もちろん、爆弾は無しで」

「わかってる……イヴ、お前確か音響測定あったな?」

「あるでありますが……でも最初のボディに比べれば性能は落ちるでありますよ?」

「それで良いよ。この壁にやってみてくれ」

「わかったであります」


 カイトの要請を受けて、イヴが壁際に寄っていって両手と右耳を壁にくっつける。そうして準備が整った所で、イヴが両手の先から特殊な音波を発した。


「……空洞であります。この先にまだ通路が続いているであります」

「だろうな……さて、問題はどうやってこの壁を動かすか、だが」


 イヴの返答でこの先に隠し通路がある事は間違いなくなったわけだが、同時にまだこの壁をどうやれば動かせるのか、という答えにはたどり着いていない。


「イヴ、この壁の開閉は何でコントロールしてる?」

「普通にどこかのコンソールと思うであります。おそらくですが、この壁は本来エリア間の移動を不能にする隔壁だと思うであります。それを大精霊様が試練に合わせ修正したのだと思うであります。もしそうであるなら、間違いなくここからでは解除出来ないと思うであります」

「なるほどな。エリア間でトラブルが生じた際に降りる隔壁か……そりゃ現地で下ろせても上げられんか」


 例えば今のように敵の侵入を許した場合に、他エリアへの侵攻を防ぐためのものというわけか。というわけでカイトは懐から一つの魔道具を取り出した。それはナイフのように尖った先端を持つ魔道具で、浬には使い方はいまいち想像が出来なかった。


「それ……押収物保管庫で見付けた道具? 見覚えあるけど……」

「そ、あそこに押収されていた魔道具……それがなにかというと」

「そ、そんなものまで押収されてたでありますか……この状況にはぴったりでありますが……」


 試しにイヴを流し見たカイトだが、イヴは案の定どこか呆れるような様子で首を振っていた。


「ま、そういうこったろうと思ったよ。どこかで隔壁が降りてるパターンはな……」

「だから何なのって」

「隔壁を強引にこじ開けるための魔道具だ。要は隔壁の上下を操作している部分に直接干渉して、強引に隔壁を上げたり下げたりするためのものだな……ま、軍用以外はほぼほぼ犯罪者が使うものだ」

「な、なるほど……そりゃ押収されるよね……」


 そしてイヴちゃんも呆れるわけだ。浬は押収物保管庫に収められていたハッキングツールの一種とでも言うべき魔道具に、思わず顔を引き攣らせる。


「で、イヴ。どこらに突き刺せば良い?」

「……本官から聞いたとは絶対に言わないで欲しいでありますよ。そこの四角い亀裂の部分であります」


 一応は軍人である手前、軍の施設の隔壁を強引にこじ開けられる機能を教えるのは憚られたようだ。とはいえ、進まないと自分も脱出出来ない以上、情報を提供するしかなかったらしい。どこか不承不承という様子で、カイトへと隔壁の解錠が可能な場所を指し示す。


「よし……よっと!」


 先端に魔力を纏わせると、カイトはまるでバターにナイフを突き立てるように軽々と隔壁の操作部へと魔道具を突き立てる。


「よし……システムハック開始……よし。上昇と」


 隔壁のシステムなぞ遠隔で出来るか出来ないかを除けば、単に上か下かしかない。である以上、システムそのものとしては簡単だった。

 というわけで持ち手部分と思われた部分に嵌められていたモニターに表示された操作キーをカイトは操作。隔壁を上げるように指示を出す。すると、ガコンという音と共に壁が上へと動いていく。


「……これで完了、と」


 隔壁が上がりきった先にあったのは、少しの通路と一つの扉だ。この扉の先が研究エリアという事だと考えられた。


「よし。じゃあ、研究エリアに行きますかね」

「あ、お兄ちゃん。一つ質問」

「うん?」

「宇宙服、着てかなくて良いの?」

「いや、今日は研究エリアの様子見だ。先輩の話だと、冷凍エリア以外にも幾つか軍用のアカウントが必要らしいエリアがあったそうだし、地理も把握してない。敵の情報もな」

「なるほど……」


 カイトの返答に、浬は一つ頷いた。というわけで一同は一旦瞬の班との合流を目指して、研究エリアへと足を踏み入れる事になるのだった、

 お読み頂きありがとうございました。

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