第4023話 雷の試練編 ――助言――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域で待ち受けていたのはカイトも見た事がないという、とある世界を模したらしい宇宙港と、再びとなる地球側の面々との合流であった。そうして数日の探索の後の小休止で行ったミーティングで各班の合流を目指すことになり、イヴの助言を頼りに最外周を目指す事になっていた。
というわけで最外周にたどり着いて合流を目指すわけだが、そこで研究エリアの外周部への出入り口が隠されている可能性が高いと判明。カイトは一人、バイクで研究エリアの外側に到着する。
そうして紆余曲折を経て研究エリアの中庭でなんとか端末間の情報共有に成功したカイトはその後、再び一人軍用エリアへと帰還。そのままこの日は他の調査を行う時間もなかったことから、手に入れた研究エリアの地図を手に別エリアへの連絡路にあたりを付けて拠点へと戻ってくる。
「……あ、お兄ちゃん帰ってきた」
「おう、お兄様のご帰還だ……ユーディトさん。手間を掛けました」
「いえ……状況の方は如何でしたか?」
「きちんと、成果を手に入れて戻ってきましたよ」
「流石はカイト様です」
ユーディトの称賛に、カイトは楽しげに小型端末を揺らす。が、そんな彼は振っていた端末を異空間に仕舞いながらため息を吐く。
「ま、残念ながらこの拠点で情報共有やらが出来ないのが難点なんですが」
「出来れば楽だったのにねー」
「そうなんよなー」
ソレイユの返答に、カイトもまたため息混じりに同意する。まぁ、わざわざ彼が研究エリアに赴いてまで地図を入手しようとしていたように、この拠点で地図を出したり端末間の情報を共有したり、ということは出来ないようになっていた。
あの端末はあくまであの試練の場で使えるようにされていたか、それか施設そのもののシステムとリンクしてしか使えないようになっているかのどちらかなのだろう。
「まぁ、そりゃどうでも良いか。とりあえずそういうわけだから、地図は手に入った。外周部からの合流は難しそうだから、次の目標としては連絡路を見付けてそこからの合流かな」
「なんとかなりそうなの?」
「ああ。おおよその目処は立った。ちょっと移動に時間は掛かりそうだが……問題ないだろう」
やはりここらは遠未来の文明にも渡航した経験のあるからこそだろう。カイトは3次元的に表示させた地図から、大体の場所を探り当てていたようだ。彼は浬の問いかけに少しだけ得意げに頷いた。
「とはいえ、流石にもうこんな時間だし、合流するにせよ探索を進めるにせよ全部は明日だ。今日はいくらオレでもやるつもりはない」
「ふーん……でもそれだったら外の運送ルートってどういう意味があるの?」
「大規模輸送とか時間短縮だろう。徒歩で連絡路まで移動しようとすると、おそらくそこそこ時間は掛かるだろう。ま、どこまでも使わないとはオレも考えてない。何より連絡路で物資の搬送って出来ないし」
「そうなの?」
「だろう、って話だ」
連絡路はあくまでも人の行き来をするためのもので、大規模な輸送路にはなっていないはず。カイトは今まで見付かっている通路を思い出しながら浬の問いかけに答えた。
「ま、どっちにしろ明日だ明日。そろそろ先輩達も戻ってくるだろうしな」
「ふーん」
どうするにせよ、判断はカイトが行うのだ。なので浬はどうでも良かったようで、特に気にする様子はなかった。と、そんな事を話していると案の定だ。
「ふぁー……終わった終わった……あー……」
「ん? ソラか」
「おーう……はぁ」
「え、えらく疲れてるな」
がっくりといった塩梅で肩を落とすソラに、カイトは半ば笑いながら問いかける。同様に海瑠や空也ら、他の者たちも全体的に疲れた様子があった。唯一平然としているのはセレスティアぐらいなものだろう。
「まぁな……ふぅ。外周で敵が出てくる出てくる……あれ、徒歩での移動って間違ってるような気がする」
「あー……やっぱり出たのか」
「お前の方は出なかったのか?」
「オレの方は多分出しても無駄というか、出したら先に情報を手に入れられるって判断されたんだろう」
「あー……」
それは絶対にあり得るよなぁ。ソラはカイトの返答に思わず納得を浮かべる。というわけでそんな様子の彼に、カイトが指摘する。
「で、それで結局たどり着けなかったと」
「……まぁ、そうだけど。なんでわかったんだよ」
「もし合流してるなら、アイナ達が一緒に出てきてて不思議はないからな」
「あ、なるほど……」
確かに言われてみればそれはそうだ。カイトの指摘にソラは確かに、と再度納得するしかなかったようだ。というわけでソラが気を取り直して、カイトへと問いかける。
「ぶっちゃけちょっと手をこまねいた感あってさ。どうすりゃ良かったか、聞きたいんだよ」
「というと?」
「敵が多すぎるし、長すぎて逃げるのもムズいんだよ。しかもあっちのが速度が速い所為で、逃げ切るってのも難しい」
「なるほどな……他に敵の情報は?」
とりあえず無策には逃げられないようにしているという所かもしれない。そしてそうならなにか対策が必要、と考えて撤退を判断したソラは間違いではないだろう。
バイクでも数十分の長丁場だ。徒歩で戦闘を経ながら、となるとどれだけ掛かっても不思議はなかった。というわけでカイトの問いかけに、ソラが答える。
「生物兵器が人馬型? ってのとか、狼型とかそういう広い空間で戦う事を主体とした奴とか、ドロイド達も長距離の砲撃を主体としたなんか良くわかんない奴とか」
「良くわかんないじゃわかんねぇよ」
「わ、悪い……えっと……そうだな。下半身がなんか円形で浮かんでて、両側がキャノン砲? みたいなの。で、クルクル回転したりフローターで地形気にせず動くって感じ。多脚よりより悪路に適した形だと思って貰えれば良いよ」
「なるほどな……」
ドロイドは敵の射程距離が長すぎて後ろから狙い撃たれるし、生物兵器は速すぎて振り切れない。しかも下手に背を向けて宇宙服に欠損が生じれば最悪なので、ただ逃げるだけというのも難しい所があっただろう。ソラの苦い顔に、今度はカイトが納得を露わにする。
「確かにその状況じゃ逃げて背中からやられるより、正面から戦った方が得策か。とはいえ、流石にそうなるとそうなったで交戦は避けたい所ではあるなぁ……」
「そういうこと。ってわけで一時間ほど移動した所で、こりゃ無理って判断。後は警戒しながら戻って、一度戦略を練り直したって話だ」
「正解だな。その状態じゃいたずらに進んでも痛い目に遭う未来しか見えん」
ソラの判断は正しいだろう。カイトはこれがソラが彼一人ならまだしも、と現状からそう判断する。そんな彼が一番のネックになっている点を口にした。
「一番のネックは修理用ドロイドの護送があるという所か。狙い撃たれたら最後、だな」
「そういうことでさ……どうしたもんかな。順当に考えりゃ車両が欲しいけど、その車両を入手するために修理用ドロイドを使ってるわけだからなぁ……」
「そうだな……ああ、そうだ。そう言えばすっかり聞きそびれてたんだが、車両の破損具合はどんなもんなんだ?」
「え? あ、いや……そういえば俺も聞いてなかった」
修理用ドロイドに全部任せるつもりだったし、よほど大破していなければそれで問題ないはずだったので、ソラはアイナディスが見付けた車両がどの程度破損しているか気にしていなかったようだ。
そして一方のアイナディスはというと、そもそも科学技術への薫陶のない彼女に破損の程度がわかるわけもない。もちろん、一緒に居る地球側の面々も同様だ。一応アイナディスよりは詳しい、という程度だろう。
「うーん……それだったら、一度修理の程度を聞いてみて、修理用の工具箱で簡単な修理が出来ないか試してみりゃ良いんじゃないか? 確かそっちにも修理用の工具類があったんだよな? というか、そうだよ。思い返してみりゃ、自然エリアでそんな専門的な修理が出来るわけないんだよ。ってなりゃ、おそらくそっちには自動修理を行うエリアがあるんじゃないか?」
「あ……確かにあった。オートメンテナンス室。しかもガレージの近くに……なるほど。そっか。工具箱だけ持ってって、とりあえず走らせちまや良いのか。で、途中でやっちまった時にそこまで修理用ドロイドを持っていけば……」
それならまだ手はあるし、修理用ドロイドの護衛がないのなら戦闘も格段にやりやすくなる。カイトの指摘に、ソラが目を見開いて喜色を浮かべる。
「そうだ……一度車両の状況を確認するために四方から写真を取って共有して貰え。それで必要な工具を確認して、だ。まぁ、それでも無理ならこっちの車両を回してそっちと合流して、修理用ドロイドを持って行くしかないだろうが……」
「ま、それはこっち確認してからで良いだろ。とりあえずは言われた形で進めてみるよ」
カイトの助言により、ソラもかなり突破口が見付かったらしい。かなり嬉しそうに一旦は自分達だけで進める事を明言する。
「分かった……まぁ、なにかあったら言ってくれ。オレ達はオレ達でオレ達のIDが無いと先輩達が進められないからな」
「おう」
一番楽な手段はと言われればカイト達がソラ達と合流し、更にアイナディス達との合流だろう。だがそれをした場合、今度は瞬達が動けなくなる。車両はあるが運転出来るのがイヴしかいない以上、こうなるのは仕方がない所であった。と、そんな事を話していると再びテレポーテーションルームの扉が開いた。
「ふぅ……」
「ああ、アイナか。ちょうど良かった。幾つかソラから相談を受けていたんだが、お前達の方にも話を聞いて良いか?」
「構いませんが……なんでしょうか」
カイトの問いかけに、アイナディスが小首を傾げる。というわけでこの日はその後、次に向けての連携に時間を費やす事にするのだった。
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