第3967話 雷の試練編 ――移動――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。
そうして風の試練同様に自分の妹を筆頭にした地球側の面々と再合流を果たす事になったわけだが、そんなこんなで一同は四つの部隊に分けられて、それぞれが割り当てられたエリアの攻略へと臨むことになる。
というわけでカイトはユリィ、ソレイユに妹の浬と共に軍用エリアを割り当てられる事になり、その調査を進めていたのだが、下士官向けエリアへとたどり着いた一同はそこでついに完全に戦闘を目的としたドロイドによる妨害を受けつつもなんとか下士官用のエリアへと到達。一般兵用のエリア同様に調査を開始。幾つかの部屋を調べた末に、鍵の掛かった金庫を見付けていた。
「……まぁ、当然のように誰の端末でも開かないよなぁ」
見付かった金庫は幾つかの部屋の中でも少し上の地位に居るだろう者の部屋だった。下士官の中でも比較的将校に近い地位に居る者か、専門職などの重要な地位に居る者の部屋だろうと察せられた。
「さて……後の問題はマスターキーがどこにあるか、だが……」
「カイトー。あったのこれだったー」
「あいよー」
ベッドの下から出てきたユリィが投げ渡したメモを受け取って、カイトは机にそれを乗せてメモを開いてスマホ型端末をかざす。この部屋を探している最中、ベッドの下になにか紙が落ちている事に気が付いて中を調べようと思ったのだが、ベッドはやはり固定されているのか動かなかった。というわけでユリィが小型化して、下に潜り込んでいたのであった。
「……ふーん」
「何が書いてたの? 下暗くて見えなくてさー」
「また鍵をなくしたって? また司令にどやされるぞ。さっさと探しとけ。マスターキーを管理人室から借りてるから後で持ってくる。中庭の倉庫の整理だ……だな」
「この部屋の誰かさんが鍵を失くした事を聞いて、マスターキーの在り処を話してる……とかかな?」
「だろうな。それでその某は中庭とやらの倉庫の整理があって、後でこそっと持ってきてくれるとか話してるという所だろう」
スマホ型端末に表示される文面をカイトが読み上げて、それに対する所感を口にする。どうやら端末にある程度記載されている言葉が登録されていれば全文翻訳出来るようになっていたようだ。話し言葉として完全に翻訳が出来ていた。
「ということは、次の動きとしては中庭かな」
「管理人室は守衛室……かな?」
「いや、多分違うだろう。ちょうどこの下士官用のエリアと一般兵用のエリアの中間に少し大きめの部屋がある。ここだ……これが管理人室なんだろう」
ユリィの問いかけに対して、カイトは投影させた地図の中で無視していた部屋を拡大させる。当たり前というか当然というか、部屋が多くまだまだ未探索の部屋は多い。
なんだったら一般兵の居住エリアにも未探索の部屋はある。最悪は総ざらい、とは考えているし、時間は無限ではあるが、他のエリアとの足並みもある。ゲームではないのだからある程度の見切りが必要、と必要な物を見付けた後は次のエリアへ向かっていた。というわけでこのエリアの探索は一旦切り上げるべき、という様子を見せてきた状況に、浬が問いかけた。
「どうするの? 先にこっちにも行ってみる?」
「……そうだな。管理人室になにか良い情報があるかもしれん。メモがある、ってことは間違いなく紙もある、って事だ……ま、そりゃそうだけどさ」
「普通いきなり石板から魔道具のメモ帳にはならないもんねー」
「だわな……実際、医務室のガラス瓶にも紙のラベルは貼られていたわけだし」
量産品の保存容器にまでホログラフで情報が投影されるように出来れば一番良いのかもしれないが、流石にそんなことをしていると費用が嵩む。高度に発達した文明でも費用対効果で紙のラベルを貼る、というある意味では原始的な方法のままなのはある意味自然な事だっただろう。
「よし……じゃあ、ここからの動きだが……まずは一度来た道を戻って、分岐まで移動。その後分岐にある管理人室を中継地として、更に少し戻ってこの道へ……おそらくこの一際大きな空白が、件の中庭だろう」
どうやらここからは少し戻らねばならないらしい。浬はカイトが地図に書き記すルートを見て、そう思う。と、そんな彼女だがふと分岐にある管理人室に首を傾げる。
「あれ? そういえばこの管理人室っぽい部屋。二つあるけど、これどっちなの? 大きい方?」
「それはわからんが……おそらく小さい方が管理人室で、大きい方は休憩室か仮眠室だろう。24時間勤務だった場合、当然管理人も休む必要がある。あるが、管理人室に風呂やベッドがあっても困るだろう? となると、仮眠室や休憩室が別にあって、そっちで休憩していることがあっても不思議はない」
「あー……確かに管理人に用事があって部屋に行って、ご飯中だったら気まずいもんね」
もちろん常駐してくれているのならそれに越したことはないが、管理人という名の通り何かの維持管理のため部屋を出ている可能性はある。ただそうなった時に急ぎの要件が発生し、休憩室で休んでいる別の管理人に対応を依頼、というのはあり得るだろう。すぐ横に休憩室があっても不思議はなかった。
「そういうことだな。というわけで、ある意味ではこの両方が管理人室と言えるかもな……まぁ、管理人室を一度探索。その後休憩室で一度小休止を挟む、というのが順当か」
「ふーん……まぁ、確かにそろそろお腹空いたと言えば空いたかなぁ……」
「そうだな。そろそろ良い時間だ。管理人室を経由していたら、おそらく昼を越えるか、ちょうど良い時間だろう。休憩室で昼休憩は順当かもな。それに休憩室なら簡単な水場や調理具があるかもしれん。少し借りよう」
そういえばもうそろそろ昼に差し掛かる時間か。腹時計でそれを理解したらしい浬に、カイトは少し笑いながらも、次の指針を決定する。というわけで、次の行き先を決めた一同は鍵の掛かった金庫の部屋にマーキングを行った後、管理人室を目指して移動を開始する事にするのだった。
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