第3964話 雷の試練編 ――戦闘開始――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。
そうして再び地球組と共に行動を開始するカイト達であったが、その最中に強制的に四隊に分けられる形となっていた。というわけでカイトは四つのエリアの内の一つとなる軍用エリアの攻略を目指す事になり、ひとまずは一般兵向けの居住区へと足を運んでいた。そして一般兵向けの居住区の途中で分岐を逆に進み下士官用のエリアへと向かうわけであるが、その道中。警報が鳴り響き、無許可での立ち入りが禁止されている事を理解する。
「「「……」」」
流石に警報が鳴って、おまけにホログラフの警告が常に一同の全面に展開されているのだ。何時攻撃が始まってもおかしくなく、全員無言だった。というわけで下士官向けのエリアへと更に進み続けることしばらく。浬がふと口を開いた。どうやら重苦しい雰囲気に耐えられなかったらしい。
「お兄ちゃん。そういえば下士官とか士官とか将校とかって何が違うの?」
「下士官は曹長とか伍長とかのいわゆる部隊を統率する兵士。現場の指揮官みたいな所か。士官はほとんど将校と一緒。将校は更に上の少尉とかだな。簡便的には基地やら船やら、一つの組織を預かる立場と思え。将校は更に将官、佐官、尉官に分かれる。将は俗に言う大将とかの将軍。佐官は俗に言う少佐やら。尉官は少尉とか……ま、士官は扱う兵器に関連して色々と付与される事もあるけどな。専門職、と言っても良いかもしれん」
「へー……」
流石はお貴族様かつ地球では世界の裏の顔役と言われるだけの事はある。浬はカイトが語る階級の言い回しに感心したように頷いた。そんな彼女に、ユリィが更に教えてくれた。
「カイトはそれで言えばこっちの将官だね。大陸間連合軍だと少将の地位に居るから」
「そうなの!?」
「本当は、総大将でも良かったと思うけどね。大陸間の連合軍作ったのカイトだから」
「うるせぇよ」
「え? どういうこと?」
ユリィはニマニマと楽しげな一方で、カイトは拗ねたような様子を見せるのだ。浬は何が何やらわからず、小首を傾げる。そしてこれに、ソレイユも楽しげだった。
「にぃ、追い出されたんだよねー。無茶やり過ぎて」
「うるせぇやい。あれはオレが悪いんだからしゃーない」
「どゆこと?」
「オレが悪いんだから良いんだよ。どうでも良いことだろ」
「カイトねー、撤退命令無視して戦闘継続したの。他、各国の軍と何度か交戦もしたし」
「……」
なにやってんの。浬は信じられない物を見るかのように兄を見る。だが、そんな彼女にフォローを入れたのは他ならぬユリィであった。
「だから民衆には無茶苦茶人気なんだよね、カイト。軍の権威を傘に着て無茶やる連中を叩き潰してきたから」
「え? つまりお兄ちゃん、単に悪いことしてたのと戦ったってだけ?」
「そうだよー。あと、にぃの撤退命令無視は後ろに避難出来てない街があって、それを守るためだねー。あれは私達も頑張った」
「それでも一応軍規違反だから、で追い出されたんだよねー。一度や二度ならまだしも、何回もやられちゃうと軍も統率が出来ないから」
「……やるじゃん」
確かに規則を考えれば兄がやった事は間違いではないだろうし、それに対して罰を与えるのは当然だが、人として考えればやっている事は非常に正しいだろう。下げて上げられた分、浬には好印象の様子だった。
そして同時に、それを何度も繰り返されてはその連合軍とやらも堪ったものではない事も理解出来たようだ。兄は人として正しい事をしたが、同時に軍の規則の面から追い出されたのもやむなし、と考えた様子であった。というわけで流石に妹に褒められて恥ずかしいらしいカイトがすぐに話題を転換する。
「だからそれはどうでも良いんだよ。軍規やらは兎も角、何時来てもおかしくないんだから黙る」
「「「はーい」」」
「はぁ……」
女三人寄れば姦しいとは言うが。カイトは少女三人の返答に呆れ気味だ。とはいえ、この他愛もない雑談の結果、浬の緊張も良い程度にほぐれたようだ。なのでカイトは呆れながらも良しとしておく。
というわけで良いように緊張の解れた浬を後ろに、カイトは更に進む。そうして一般兵向けの居住区同様に守衛室に似た部屋の前にたどり着いたと共に、アラートの音とホログラフィが一気に大きくなる。
「カイトー。そろそろアウトだと思うんだけど」
「だろうなぁ」
流石にこれ以上は普通に進ませてはくれないだろうし、警備システムをオフにでもしない限りドロイドを停止する事は出来ないだろう。下士官用の部屋にゲストや一般兵の権限で安々入り込めても困るし、無許可に入った時点で殺されても文句は言えない。というわけで、カイトも今までの非破壊での迎撃を諦めたようだ。そうして、彼はまるで景気付けとでも言わんばかりの様子でホログラフィを斬り捨てる。
「斬り捨て御免! ってな」
「斬れてないけど?」
「キレてないです……じゃなくて、単なる雰囲気だ」
浬のツッコミに、カイトは楽しげに笑う。そうして彼女の方に視線を向けると共に、カイトは一つ頷いた。
「じゃ、やりまっかね」
「はいさ」
「ほい?」
浬の間抜けな声が響くと共に、カイトがおもむろにゲートをくぐり抜ける。そうして次の瞬間、ただでさえ大きかったアラート音が明らかな警報音に切り替わり、周囲のライトが赤く点灯する。
「ちょ、ちょっと!? せめて一声頂戴よ!?」
「あははは……ほら、来たぞ来たぞ!」
やはり一般兵の居住区と違って、このエリアからは捕縛は出来れば。出来なければ殺傷も前提に警備システムは構築されていたらしい。周囲の壁が開いたかと思うと、現れたのは一般兵向けの居住区と異なって、円形のカメラこそあったものの二足歩行型のドロイドだった。そうしてドロイドはこちらを発見するなり、両手を振り上げて魔弾を乱射する。
「うわわわわわっ! カ、カード!」
「ほいよっ!」
「浬ー。こっちで防ぐから、防御は考えなくて良いからねー」
浬は急な事態の変遷に慌てながらもカードを投げて、火球やら石礫やらで人型ドロイドを迎撃。ソレイユは先程カイトの背でやっていたように、背負われたまま矢を連射。ユリィは二人の盾となる障壁を展開とそれぞれで戦闘行動を開始する。というわけでそれを尻目に、カイトは自身を取り囲む人型ドロイドへ向けて一瞬だけ腰を落とす。
「よし……っ!」
一瞬でカイトの姿が掻き消えて、その次の瞬間に自身を取り囲む人型ドロイドの一体の身体が袈裟懸けに両断される。
「今度こそ斬り捨て御免、ってな……さ、ここから本番だな」
カイトは楽しげに笑いながら、更に次の一体を斬り捨てる。そうして、それからしばらくの間一同は人型ドロイドの殲滅を行う事になるのだった。




