第3962話 雷の試練編 ――目標――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。
そうして宇宙港に似た場所を進んでいた一同であったが、手に入れた地図に表示される巨大ドームを目指して進むも、その到着直前にまるでこれから試練の本番と言わんばかりに幾つかの隊に分けて飛ばされる事になるも、幾つかの部屋を調査してなんとか戻れるだろう道を発見。テレポーテーション装置を使って、最初の拠点を設置した場所へと帰還するも、帰還した拠点は用意した装備が片付けられ、どこかの施設を模した拠点へと様変わり。疲れた身体を引きずってその調査を終えて、一休みとなっていた。というわけで、一夜明けて翌日。軽いミーティング後、再び一同は各エリアの探索を再開する。
「で、お兄ちゃん。ここからどこを目指すの? 色々とマークあるけど」
「そうだなぁ……」
浬の問いかけに、カイトは一度地図を表示させる。現在のカイト達の権限は軍の一般兵。それも最下級の兵士に類する権限らしい。まだこの権限だと立入禁止エリアはかなり存在しており、入退場は可能だが、というエリアもちらほらと見受けられた。
「まぁ、おそらくこの立入禁止の中でも扉にロックが掛かっていないエリアに入れば即戦闘だろう」
「まぁ、立入禁止だし」
「ああ……で、その上で考えると……おそらくこのエリアでの最終目標はあの巨大ロボットの操作権限を手に入れる事だろう」
「あれを?」
「あれを」
驚いたような浬の問いかけに、カイトは一つ頷いた。そうして、彼は自らの推測を口にした。
「あれはまぁ、おそらく軍用の巨大ロボットだろう。となると、操作に権限か免許が間違いなく必要だ。その上で何かしらの鍵も必要だろう。非常時なら兎も角、民間人が簡単に使えたら困るからな」
「まぁ……そりゃそうよね」
あんな巨大なロボットに一般人が襲われればどうなるか、なぞ考えるまでもないことだろう。となればその扱いは厳重に管理されて然るべきだし、それを使うのであれば何かしらの鍵が必要というのは当然の話だっただろう。
「まー、とはいえ。鍵の管理は本来厳重に行われているだろうし、権限にしても本来なら軍本部が管理して、こちらに許可や許諾を送ってくるのが順当だ。基地が独自に発行していたら技術の差が大きくなるし、反乱も招きかねん。そんな勝手は許さんだろう……もちろん、それでも勝手にやる奴は居るんだろうがな」
「そうなの?」
「だから内部監査があるし、内偵を行う調査員がいる。嫌な話だが、世の中性善説だけでやってけるほど綺麗なもんじゃない」
浬の問いかけに対して、カイトはやはり為政者ならばこその苦みが乗った様子でため息を吐く。そんな兄に対して、単なる一般家庭の子女でしかなく、絵空事でしか聞いた事のない浬はそんなものかと思うばかりであった。
「ふーん……大変そ」
「大変だよ……それこそ内偵を行う調査員と基地が結託、なんて事もあったりした……いや、そんな苦労話はどうでも良いな。兎にも角にも、目指すべきなのはその巨大ロボットを操るための権限の付与と、鍵の入手だろう」
「権限の付与って出来るの?」
「あれは本来なら、だ。あくまでも試練で模しただけだとすると、軍の本部なんぞ探してられん。軍の本部はこんな宇宙のどこか、じゃなくどこかの惑星だろうしな。それか、それこそ大規模なスペースコロニーを丸々一つ、なんてのもあり得たかもしれん」
「あ、そっか……ここはあくまで宇宙港と一緒に街があるだけだから……」
「おそらく、どこかへ向かうための中継地とかそういう所だろう。中継地だったら、スペースコロニーだったとしても不思議はなかったか」
おそらくスペースコロニーにしてしまうと宇宙に出た際になにかがあって飛ばされてしまうと復帰が面倒になるからだろうな。カイトは試練の難易度を鑑みて、どこかの衛星かなにかに設けられたこの施設についてそう判断していた。
「で、そうなるとどこを目指せば良いの?」
「まぁ、軍の司令部だろうが」
「……それ、ここじゃん」
「なんだよなぁ」
浬の指摘に、カイトは苦笑を浮かべる。おそらく自分達の最終的な目的地としてはこの司令室になるだろう。そう彼は考えていたようだ。とはいえ、それはあくまでここで出来る、というだけのことで、だからと今出来るわけではない事は自明の理だろう。
「多分だが、何処かからあの巨大ロボットの権限付与が可能な権限を手に入れて、ここに戻ってきて権限を付与する流れになるんだろう。そしてそれは最上位の権限で、中央ドームへの通路を開ける権限でもあると考えられる」
「なるほどね……で、それなら改めてどこを目指すの?」
「ここだ」
浬の問いかけに、カイトは地図の中でキャプテンハットにも似た帽子の絵が描かれたマークが記載された一角を指し示す。それは現在の権限では到達出来ない場所で、更にどこかを経由する必要がありそうだった。
「ここはおそらく司令の部屋だろう。本来地図に場所を乗せるとは思わんが、そこは試練として考えた。そしてそうなると……」
最終的な目的地を指し示したカイトであるが、そこから更に別の所へと地図上でラインを引く。この経路を通る、という事だろう。というわけで引かれたラインが伸びた先は、昨日最後にたどり着いた一般兵用の部屋から少し近い場所だった。
「幾つかの部屋が並んだ場所?」
「ああ。おそらく士官達の部屋だろう。そこから更に上の将校達用の部屋があるかはわからんが……あるならあるで、そこにも行かないといけないだろう。権限としては一般兵、下士官、将校、基地司令だろうな。となると、次に目指すのは一つ上の役職を持つ軍人達の部屋だ」
「めんどくさ……」
「言うな。一般兵が簡単に司令官の部屋に入れたらスパイし放題だ。呼ばれたならまだしも、呼ばれもせずに入れるわけがない。となると、後はそれ相応に信頼された者……つまり下士官達を含めた取り纏めを行う将校達ぐらいなものだろう。結局、軍も組織。お役所みたいな事になるのはしゃーない」
しかも人の生命を奪える力を振るう者たちでもあるしな。カイトはしかめっ面の浬に対して、そう説明する。とはいえ、そうなると次に向かうべき場所は定まった。なのでカイトは地図を消して立ち上がる。
「よし……じゃあ、とりあえずは昨日の一般兵用のエリアへ向かおう」
「「「はーい」」」
カイトの号令に、浬らが応ずる。そうして、一同は司令室を後にしてまずは一般兵用の居住エリアを経由するべくそちらを目指す事にするのだった。




