第3961話 雷の試練編 ――再開――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。
そうして宇宙港に似た場所を進んでいた一同であったが、手に入れた地図に表示される巨大ドームを目指して進むも、その到着直前にまるでこれから試練の本番と言わんばかりに幾つかの隊に分けて飛ばされる事になるも、幾つかの部屋を調査してなんとか戻れるだろう道を発見。テレポーテーション装置を使って、最初の拠点を設置した場所へと帰還するも、帰還した拠点は用意した装備が片付けられ、どこかの施設を模した拠点へと様変わり。疲れた身体を引きずってその調査を終えて、一休みとなっていた。というわけで、一夜明けて翌日。軽いミーティング後、再び一同は各エリアの探索を再開する。
「よし……とりあえず司令室に問題はないな」
『こっちも問題ない……にしても、工場エリアに自然エリアか。お前の所は軍用エリア、だったか?』
「ああ。ま、先輩の研究エリアとどちらが良いか、と問われればオレもわからんがね」
『おそらく居るだろう実験体を相手にするか、洗練された軍のドロイドを相手にするか、か。確かにどちらも嫌だな』
一応出る前に司令室で問題がないかだけ確認し、全体で問題ない事を確認した上で行動を開始する。そう決めた事があり、司令室に戻り着いたと同時に通信機を起動していた。というわけで通信機の先の瞬が、カイトの言葉に笑う。
「だろう? まぁ、先輩が難易度高めな場所に送られるのは当然ではあるんだろうが」
『それは確かにそうだな』
「っと、それはそれとして。アイナ、ソラ。聞こえているか?」
『ええ。こちらは聞こえています。司令室に問題もありません』
『こっちも問題ない。つってもこっちはドロイドいなかったわけだけど』
カイトの問いかけに、アイナディス、ソラが続けて答える。なお、カイト達の所に居た大型のドロイドだが、これが居たのはカイトの所と瞬の所だけだったようだ。その代わりと言うべきか、アイナディスの所には大型の調査ドロイドが居たらしいが、ソラの所にはドロイドそのものがいなかったようだ。
一応メンテナンス用の小型ドロイドが浮遊してなにかのメンテナンスをしていた様子ではあったらしいが、それは他のエリアでも同様で、この部屋特有というドロイドは見受けられなかったらしい。
「よし……まぁ、ソラ。お前の所は工場エリア。物を作るドロイドが多いだろう。流石にどこぞのゲームみたく溶鉱炉の側を通って、とかはないとは思うが、場所の危険性は高いだろう。十分に注意するようにな」
『おう、わかってる……ある意味じゃ戦闘があまりなさそうなだけ楽かもな』
「ないわけじゃないだろう。今はまだない、ってだけで」
『わかってるよ』
カイトの苦言にも似た言葉に、ソラは笑う。というわけで一通り戻った司令室に問題がない事を各々確認すると、中間報告などの兼ね合いからここからの流れを一度再確認する。
「よし。じゃあ、ここからの流れの再確認だ。現在時刻は午前9時少し前。全員時計を確認しろ」
ここから先、何が起きるかは未知数だ。そして連携が必要になる可能性も考えられていた。なので定期的に各所で連携を取れるようにしておかねばならなかった。というわけで通信機で喋る四人以外も全員、自身の端末の時計を確認する。
「先に伝えた通り、9時から行動開始だ。モニターにオレの端末に同期した時間を表示させている。それで同期を取ってくれ……それでここからだが、各方面一つ上の権限の取得を目指す。ただし、午前中の活動は原則として12時まで。その後中間報告を兼ねて一度司令室で合流。昼を摂った後、15時まで再行動。その後は16時を目処に拠点へと帰還する」
今回、風の試練に比べて人数は更に少ない。各自に掛かる負担は風の試練より多く、地球側のレベルアップを差し引いても帳尻が合う事はない。
なので午前午後共に3時間から4時間の調査を限度として定めていた。それ以上は疲労の蓄積から不測の事態の発生が懸念されるし、翌日の調査にも差し障るという判断であった。というわけで、カイトがしばらくの間、数分でここから先の幾つかの再確認事項を全員に通達する。
「よし。以上だ……各自万が一の場合は司令室、ないしは医務室での合流を目指せ……時間だな。時間合わせ」
話している内に9時の十数秒前になっていたようだ。カイトはこの程度で、と話を切り上げて時間を合わせさせる。そうして、時間の合わせが終わった所で、カイトは最後に号令を掛けた。
「では、行動開始だ」
『『『了解』』』
いつものようにカイトの号令に応答が返ってきて、通信機が全てオフになる。そうして通信が終わったと共に、カイトは一息ついて立ち上がった。と、そんな立ち上がった彼だが、後ろを向いて浬の変な顔を見て顔を顰めた。
「……なんだよ」
「……いや、お兄ちゃん本当にそういうの出来るんだって……」
「そういうの?」
「えっと……なんていうの? 指揮っていうかリーダーっていうか?」
「にぃは元々リーダーだよ?」
浬の疑問に対して、相変わらずの様子でカイトの背に伸し掛かったソレイユが首を傾げる。
「それがイメージわかなかったってわけ」
「そうなの? にぃ、こっちだと色々な所で締めてるけど」
「うそぅ」
「そもそもにぃ、お貴族様だよ?」
「それはそうだけど」
確かに貴族だからこうして号令を掛けたりは出来て当然なのだろうけど。浬はソレイユの指摘にそれはそう、とは思いながらもどこか釈然としないものがあったようだ。どこか微妙そうな顔を浮かべていた。そんな彼女に、カイトはため息を吐いた。
「はぁ……まぁ、これでも軍を指揮する事もあるし。なんだったらクズハだって軍の指揮してるし」
「いや、クズハちゃんは見たらわかるわよ。あれはお姫様だもん」
「オレは見たらわかんねぇのかよ」
「いや、お兄ちゃんだし……」
確かにクズハは内面のお転婆さに目を背ければ、容姿はまさに清楚なお姫様だ。といってもそのお転婆さとてカイト達と旅をして様々なドタバタに巻き込まれて培われた結果だ。なので公的な場では真面目にしているので、見るからにお姫様であると言える。
彼女ならば正しくファンタジーのように軍を指揮する姿も様になるだろう、と思ったようだが、いつもの兄を見慣れた浬には想像が出来なかったらしい。
「はぁ……まぁ、お兄様とてお仕事は別の姿って事だ」
「そもそもその姿自体魔術の偽物と言えば偽物だしねー」
「それは言わないお約束」
そもそもの話として、カイトは地球に帰還する上で容姿の年齢を偽っている。なので今浬らの前で見せている姿はある意味偽りと言っても過言ではなく、ユリィの指摘に楽しげに笑うばかりであった。と、そんな二人にソレイユが問いかけた。
「そういえば別にここでその姿にしておく必要なくない?」
「……まぁ、ねぇな。だがいきなり本来の姿になったら皆やり難くないか? それにどうでも良いだろ。オレが何歳の姿か、なんて。爺だと動きが鈍るから駄目だけどさ……まぁ、本来の方が良いなら本来に戻るけど。後は必要なら、か」
「私どっちでもー」
「私もどっちでもー」
「え? 私?」
この流れで私に選択肢が回ってくるの。そんな様子でユリィとソレイユの視線に浬は目を見開く。
「え……私もどっちでも……」
「ほら、結局どうでも良いんじゃねぇか」
三人とも結局オレの姿には興味がないのか。カイトは三人の返答に苦笑いだ。というわけで、今日も今日とてそんな呑気な様子で、試練はスタートする事になるのだった。
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