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邪竜様の生贄花嫁~巻き込み事故で異世界召喚された私が最愛の番と呼ばれるまで~  作者: 天希莉緒
第三章

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50.大誤解、大ピンチ

男性キャラクターの乱暴な言動があります。

苦手な方は今エピソードをスキップして、次回更新の続きからお読みください。

「……様。聖女様!」


 肩を揺すられ、我に返った。 

 気づけば私は床に仰向けになって、ジャスティン殿下に上半身を抱えられていた。

 見下ろす殿下が、ホッとした表情を見せる。


「よかった、意識が戻られた……!」


 瞳だけを動かして周囲を見まわせば、そこは、もといた資料室だった。

 さっきまで、目の前には幼いイオがいて。

 彼に触れることさえ、できそうだったのに。

 あれは夢だった……?


「え……私、どうして……」


「ネックレスを手にした後、いきなりお倒れになられたのですよ。とにかく、医者を呼びましょう」


「ユズハ」


 目眩に耐えながら、呟いた。

 ジャスティン殿下が訝しげに眉を寄せる。


「いま、何と?」


「……真の聖女と呼ばれた女性の名は、ユズハ、ですか?」


 殿下の顔が、ふたたび強張った。


「何故それを……? 聖女ユズハの名は正式な記録にはありません。王族しか知りえないことです。兄上がチカ様に伝えたとも思えませんが」


「じゃあ、私が見たのは」


 夢じゃ、なかった。

 視線を上げて、ケースの中で輝くネックレスを見上げる。 

 つらなる青い石の正体は、竜の鱗だ。

 あのネックレスの持ち主の名前は、「ユズハ」。

 一度は生贄として捧げられたのに、邪竜の森から戻って王妃となり、聖女と呼ばれたひと。


 震える手で、自分のペンダントを握りしめた。

 竜の鱗どうしが呼び合って、過去の記憶を見せたんだろうか?

 そして黒炎の王子の正体は、幼い日の……


「イオ」


 虚空に向けて呼んだ私の声をかき消すように、突然の怒号が響いた。


「離れろ、不埒者ども!!」


 背後からの大声に、私はビクッとすくみ上がった。

 靴音も高く近付いてきたのは、豪奢な白ジャケット姿のラスティン国王だった。


「兄上……!」


 何かを言いかけたジャスティン殿下の胸ぐらを、国王が乱暴に掴む。


「ジャスティン! 貴様、聖女に手を出そうとしていたな!? 弟とはいえ反逆罪に値する行為だぞ!」


「兄上、いえ陛下、誤解です!」


 ラスティン国王は耳を貸さず、弟の体を書架に叩きつけた。

 衝撃で棚からこぼれた本が、尻餅をついたジャスティン殿下の上にバラバラと落ちる。


「貴様が聖女に懸想しているのは気づいていたぞ。なんとか二人になろうと画策しているのもな! 資料室で逢引とは考えたものだ」


「け、懸想だなどと! 私は聖女様と、我が国の今後について話し合いができればと……」


「ええい、黙れ!」


 国王の足がジャスティン殿下を蹴りつける。


「何するの!?」


 止めに入った私の腕を、ラスティンは乱暴に掴みあげた。


「なまくら聖女が! 一人前に男に色目を使いおって! 来い!」


「違います! ちょっと、放してっ」


 ものすごい力で引っ張られ、無理やり資料室から連れ出される。

 

「チカ!」


 扉の外で待っていたロニーが駆け寄ってきた。

 資料室への入室資格をもたない彼は、王弟と国王が次々に資料室に入っていっても、私に知らせることができなかったのだ。


「ロニー、いいから!」


 いまにもラスティンに抗議しそうな気配を察して、必死で制した。

 この状況でロニーが国王の不興を買えば、彼の身にも危険が及ぶ。

 宮殿の廊下を国王に引きずられ、私は自室に連れ戻された。


「チカ様、おかえりなさいませ……こ、国王陛下?」


「皆、出て行け!」


 動揺する侍女たちをを怒鳴りつけて部屋の外に追い出すと、ラスティンは力任せに私を寝台に突き飛ばした。  


「つけあがりおって! そなたの産む赤子のほうが、よほど役にたつであろうよ」

 

 ものすごい力で抑えこまれ、重たい体が覆い被さってくる。

 近づく顔が、怪物に見えた。

 

「やだ……っ!」


 叫んだとき、すぐ近くで、

 ガシャーン!!

 と、何かが壊れる大きな音がした。

 ラスティンが跳ね起きるように私から離れる。


「うわっ、なんだこれは……水!?」


 慌てふためく顔や髪が、びっしょり濡れている。

 壁際にあったはずの花瓶が割れ、破片と花が床に散らばっていた。

 中の水だけが、床ではなくラスティンめがけて降り注いだのだ。


「……気味が悪い。興冷めだ」


 水浸しの金髪をかきあげ、ラスティンが舌打ちをする。

 後退りしながら、


「聖女よ、望み通り続きは婚礼のあとにしてやる。式は七日後に行うぞ」


「な……七日後……?」


 耳を疑う。

 予定より十日も早い。


「忘れるな。そなたは余のものだ」


 捨て台詞を残し、ラスティン国王は靴音も高く部屋を出ていった。



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