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邪竜様の生贄花嫁~巻き込み事故で異世界召喚された私が最愛の番と呼ばれるまで~  作者: 天希莉緒
第三章

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44.書庫にて、活路は自ら開くもの

 あくる日。

 午後の祈りを終えた私は、ロニーを連れ、侍女たちの案内で王宮の奥へと向かった。

 衛兵のいる厳めしい扉の前で、アニヤとラミヤが恭しく告げる。

 

「チカ様、こちらが王家の方々のための資料室です」 


「案内ありがとう、アニヤ、ラミヤ」


 王妃として扱われている今も、私にはわからないことがある。

 真の聖女に現れる「御印」とは、いったい何か。

 それは何をきっかけに発動するのか。


 教育係に質問しても明確な返答はないし、毎度はぐらかされてしまう。

 大事なことなのにと最初は腹がたったけど、最近は別の可能性を考えるようになった。

 そもそも彼らも知らないんじゃないか、と。


 誰も教えてくれないのなら、自ら調べるまで。

 情報は取りに行くもの、活路は自分で開くもの!


 そこで思いついたのが、特別資料室と呼ばれる部屋のことだ。

 王族しか立ち入ることができないその場所には、歴代の王や王妃たちの日記が保管されているという。


(ということは、かつての聖女の記録もあったりしない?)


 ある、きっとある。

 侍女たちの案内でたどりついた資料室は、宮殿の奥深くに位置していた。


「私は中で調べ物をするわ。少し長くなるかもしれないから、扉前にはロニーだけ残って。アニヤとラミヤはお部屋に戻っていていいわよ」


「かしこまりました、聖女様」

「では、お部屋を整えてお待ちしております」


 ロニーと侍女たちが頭を下げる。

 特別資料室に立ち入ることができるのは王族だけだ。

 私は聖女かつ王妃になることが決まっているため、入室を許されていた。


 スイちゃんを腕に抱き、人気のない特別資料室に足を踏み入れる。

 背後で部屋の扉が閉まった。

 部屋の中には私しかいない。


「スイちゃん、動いて大丈夫よ」


 声をかけると、お人形のフリで固まっていたスイちゃんが「ハー」と可愛く息を吐く。


『チカー、ココ、ナニスルトコロ?』


「調べものをするところよ。スイちゃんは楽にしてていいからね」


『ウン』


 スイちゃんは嬉しそうに頷き、私の肩にちょこんと腰かけた。


 特別資料室の広さは図書館クラスだ。

 いくつもの部屋の、すべての書架に、本がぎっしりと詰め込まれている。 

 書架のあいだを移動しながら、すぐに心が折れそうになった。

 図書館と違って明確な分類や表示もないから、有益な情報にたどり着ける気がしない。

 だめだ。くじけるな、千花。


「昔の日記は……と」


 それっぽい棚に当たりをつけて、何冊か開いてみた。


 この世界の人たちと会話ができるのと同様に、私はこの世界の文字が読めるようになっていた。

 見たこともない文字の羅列なのに、不思議で仕方ない。

 だけど、これが異世界召喚に伴う力なのかもしれないな。


「これとか、どうかな?」


 なんとか、王族の手記らしきものを見つけた。

 でも、ページをめくってみても、聖女召喚や真の聖女についての記述は見当たらない。

 

 そんな中、ある記録書に私は思わず読み入ってしまった。

 それは、かつてアスダールが他国とおこなった戦争の記録だった。

 アスダールが勝利をおさめた戦い。

 その過程で、強大な威力をもつ兵器についての記述が登場するのだ。


(なんだろう……この絵)


 空を飛び、火の玉を吐いて敵軍を撃破する巨大な兵器。

 本体についての記述はない。

 王妃教育でも、そんな凄い兵器の存在は伝えられていない。


(変なの……)


 さらに書架に潜り、年表みたいな資料をみつけた。

 聖女の異世界召喚の儀式は、過去に複数回行われているはず。

 記述がないのは不自然に感じた。

 それとも、一部の人間だけが知る秘密の儀式だったんだろうか?


(みんな名前も残らずに、邪竜の花嫁にされたってこと?)


 そうだとしたら、酷いとしかいいようがない。

 花嫁といっても、実態は生贄なのに。

 でも、イオや彼のお父さんが、全員、元の世界に帰らせてあげたはずだ――私と、もうひとりを除いて。

 

『チカ、ダレカ来ルヨ』


 おとなしく肩に乗っていたスイちゃんが、怯えた様子で囁いた。

 開いていた本の上にストンと飛び降り、体を硬直させ、お人形のフリに入る。

 同時に、背後から声がかかった。


「お勉強ですか、聖女チカ様」


 ビクッとして振り向いた先に、若い男性が立っていた。

 金髪、榛色の瞳。すらりとした長身に、美しい刺繍が施された絹の上着を纏っている。

 王都に来てからの日々で、既に馴染みを覚えはじめていた顔だった。


お読みいただき、ありがとうございます。

ブックマークや評価が大きな励みになっています。


☆読み切りの短編を投稿しました。こちらも是非お楽しみくださいませ。

「霧の夜に黒馬車は誘う~亡き恋人と話せる石を買った令嬢の話」

 N5479LR

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