一緒にお風呂
彼女が体を洗う様を湯船から眺めつつ考える。
こうしてみている限り、ただの女の子だ。……なんて。
見ているだけで既にただの女子、とは言いがたいわけだが。
小さな顔、とがった顎から西洋人形のような細くて長い首が伸び、それはまるでアスリートのような無駄なものの無い胴体へと繋がっていく。
確かにおっぱいは大きいとは言えないが、張りがあってカタチもなかなか。なにより胴体とのマッチングが彫刻みたいですごく素敵。
そう言う意味で大きさは、これ以上でも以下でもダメだと言えよう。
そしてその頂点には、元々が浅黒い肌である以上、もちろんピンクではないけれど。
絶妙な半径で地肌とは色味の違う、大きさとカタチを計算されたかのような円が彩り、その中心にはやや小さめの突起が、控えめに自己主張をしている。
女子の私から見ても、これはもう。見るだけで無く触りたくなる。
と言うかそのうち、理由を付けて揉みしだく! 先っちょだってつまんで指先で転がしてやるぜ! と思わせる。
お腹は腹筋がうっすら浮き上がり、胴回りはとてつもない細さ。
なのに、椅子に腰掛けたお尻はふっくらと丸みを帯び、それは陸上選手のような実に合理的な太さのももへと繋がる。
まぁ、見る限り。“いろいろ”お手入れの必要な部分はあるようだけれど。
聞いていた通りに野良だった、と言うことであればさもありなん。
でも、現時点で。何処かから何かがはみ出すわけでも無さそうだし。
しかし、なんということだろう。“体毛”が髪の色とほぼ同じとは!
むしろ変に処理がなされているより、よほどエロチックだとさえ……!
明日以降、私がこの手で直接お手入れしてあげるっ! これは絶対っ!!
……とか。
うん。実際の処、当たり前だが考えたのはそういうことでは無く。
ただの、では無く。すごく綺麗な可愛い女の子なわけだ、彼女は。
なのに、どうしてあんなにも他人に優しく出来るんだろう。
ゲロまみれの見知らぬ人に普通に手を差し伸べたりさ。
立場が逆でも私にはできそうにない。
そして、彼女はさらに、人知を超越した凄い力が使える。
体を隠すのを諦めてスポンジで腕を洗いながら華ちゃんが言う。
「こうして裸になってみると、改めて桜がうらやましい」
「ん? どこが?」
「……真っ白でふわふわの肌。それに比べて私は黒いし、どこもかしこもゴツゴツしていて柔らかく見える部分が何処にも無い。一般的な男性の思う女性のからだ、それはお姉様や桜なのだろうと、そう思う」
――だからあなたの前で服を脱ぎたくなかった、もう良いけど……。なるほど、こちらとは180度逆の事を考えていた。
ハーフなんだし、むしろ似合ってるし。なんて思って居たものの。
地黒なのは気にしてたんだね、ちょっと意外。
まぁ、基本的に外見に関しては、日本人に近い価値観をもっているようだし。
それに毎日、アヤメさんやアイリスさんとはイヤでも顔を合わすのだ。
だったら気持ちはわからないでも無いかな。
華ちゃんの場合、黒いと言っても多少日に焼けた程度にしか見えないし、裸になればなったで、まさにその肌の色が背中からお尻、太もものラインを際立たせる。
余計な肉がなくスッキリとした体のラインも彼女から見るとコンプレックス。
――色の白いは七難隠す、私の孫なのにねぇ。どうしてこんなに白いのかしらねぇ。昔良くお風呂に入る時、ばあちゃんがそう言って私を褒めてくれたのを思い出す。
現状はきっと七つを超えて難があるんだろうな。
ねぇばあちゃん、ごめんね。私、難が隠れきってないや……。
だいたい、ただ白いだけならアヤメさんは日に当たった事無いような白さだったし、アイリスさんなんかどうする、と言う話だ。
あの人達なら五十難くらいあっても隠れ切りそう。
それを毎日見ていたらコンプレックスにもなるよな。
ホントに肌の色も含めてトータルパッケージとしてカワイイのになぁ。
ふむ、世の中って難しい。
彼女は洗い場で立ち上がると、石けんの泡を流し始める。
「基本的には細いのにおっぱいあって、その上お尻もちょうど良いふっくら加減で太ももがムチムチで、なのに太すぎもしない。男子はそう言うの凄く好きだと思うんだぺぼ……」
華ちゃんは、お尻の辺りを私の目から隠しつつシャワーヘッドを持ったままジタバタし始め、風呂場中に盛大にお湯をまいていく
「先日雑誌で読んだところに拠れば、それは下半身デブなのであって、男性は先ずは胸の大きさを最初に……」
「基準を何処にぶべ、置くかのぼ、問題べ……、華ちゃん、一回シャワー置いてっ!」
「あ、ごめんなさい! 大丈夫?」
「ま、まぁ。シャワーのお湯にあたって死ぬ人は居ないんだけどね、はは……」
……なにもそんなに取り乱さなくても。
もしかすると男性の目というのを、必要以上に気にしてるのかも知れないな。
あんまり免疫無さそうだし。
「……からだ流したら私も頭洗うから、もう一回入ってくれる?」
「ごめんなさい。いま、すませる」
――いつもはシャワーだけだから湯船は知らない、二回入るのが正しい作法なの? と言う華ちゃんが、今は湯船からこっちを見てるんだろう。
うわぁ……、おっぱいとかじっくり見られてる感じなんだろうか。
至近距離で見られてると思えば、これは落ち着かないな。
開き直って腕を開き、頭を洗いながらちょっと反省。
今日は、うん、“処理”はお休みしちゃおう。単純に恥ずかしい。
明日、教えてあげながら一緒にやろう。
問題があるとしたら。……必要性、理解してくれるだろうか。
だいたい。
気になるとすればおっぱいだってそうだけれども。それ以前に。
日本人でも普通にいる程度のその肌の色ではなく。
でも髪の毛とか目の色の話なんか、聞いても良いのかなぁ。
でもそれこそ、よほど余計なお世話だし。
「気になる? 髪の毛と、目の色」
湯船の縁からこちらを眺める、無表情な藍色の瞳。
「え? ……うん、まぁ」
でも彼女は、ふと表情を崩した。
「みんなそう言うしね。ふふ……、ずっと聞きたそうにしていたのはわかっていたけど。……。桜は優しい」
……バレてた。




