天界と2つの血筋
夕です!
「今の…リュカ…?」
バッと窓から身を乗り出して2人が消えた方を見る。
もう、どちらもいなかった。
「レナちゃん…っ」
後ろではリルが床にぺたんと座りこんでいる。
さっきから握りしめていた指輪をリルに見せる。
「これ…リュカのよね…?」
「そうでしたっけ…?ごめんなさい…混乱してて…」
「そう…」
「でも…リュカ君じゃないと思うんです…。さっきの人の目。金色だったじゃないですか…。リュカ君の目は銀色です。それに…」
リルはそこで小さく笑った。
「私の知ってるリュカ君は…あんなに怖くないですしね」
「…そうね」
リュカside
「待て!!」
白服は寮からかなり離れた所で止まった。
何度も≪転移≫を繰り返して、また学園の外に出てしまっている。
「“カナタ…!場所わかるか?はやく来てくれ!!”」
≪念話≫でカナタを呼ぶ。
すぐに答えがかえってくる。
「“ああ。それよりリュカ!また魔力が…”」
「“2つ目が割れたんだ。そろそろまずいかも”」
「“そこにあいつがいるだろ!?今、気配感じた”」
「“だから、はや…”うおっ」
途中で白服が切りかかってきた。
≪念話≫が途切れる。
危ねぇ…!
『リュカ!』
ミオがどこからか出てくる。
『大変なことになってるな』
「のんきだな、おい!どこいってた…っと」
白服は人間とは思えないスピードで切りかかってくる。
【純白】を出す。
キイィインと金属音が響いた。
白服は顔をフードで隠していて口元しか見えないが…。笑ってやがる…っ。
「おいっ、誰だお前!!」
ギィイイィィンと再び金属音が響いて、ぼくと白服は互いに剣で押し合う。
「答え、ろよ…!!」
ギリギリと歯を食い縛る。
こいつ…力も相当だ。
白服が初めて口を開いた。
「あれ…?俺の事、知りませんか?」
「知るかよ!」
白服がさらに力を入れて押し返してくる。
「俺はあなたの事知ってますけど…。覚えてませんか?会ったことあるんですよ…」
「だから知らね、って!…っ」
ニヤッと笑ってくる。
そして白服はふっと力を抜いた。
「しょうがないですね。バカな父上に甘やかされてましたからね…」
「甘やかされてねぇよ。確かにあいつはバカだけど」
白服がフードをとる。
ぼくと同じ銀の髪に銀の目。
「お前…っ、天界の者か!?」
「ええ。セダ・ベイチェですよ。まさか忘れてないですよね…?」
「…忘れた。会ったことあるか?」
「ひどいですね…。……では、これは知ってますよね?天界には2つの血筋があることを」
なにが言いたいんだ、こいつ。
相変わらず白服――セダはぼくを見下ろして笑っている。
ガネルを傷つけたうえに、レナとリルまで狙って…!
なんで平然と笑ってるんだ!!
目が金色に変わる。
「あれ?怒っちゃいましたか?もう魔力制御の指輪もいくつかなくしているようですし…。俺、なんかしました?」
「ガネルを傷つけた!!リルとレナも…!!」
【純白】を持つ手に力を込める。
「ガネル…?レナにリル…?あぁ…あの人間ですね。目的のために邪魔だったのでね」
邪魔…っ。
「目的とは、なんだ…」
怒りを押さえて尋ねる。
「へえ、聞きたいですか。でもね、まだ早い。まずはもう少し天界の歴史について…お話ししましょうか」
セダは剣をフッと消した。
攻撃する気はない、ということだろう。
「さっきも言いましたが…天界には2つの血筋がありまして。あなたのホーリー家と俺のベイチェ家です。ま、ベイチェの者はもうほとんど残っていませんけどね…。今、天界を治めているのは、ホーリー家ですよね。それはホーリーがベイチェから奪い取った座なんですよ」
ここで一度セダは話を切る。
さっきまでのヘラヘラした表情とは一変、憎しみのこもった目でぼくを睨む。
「約7000年前にね…。ホーリーの下剋上ってやつです。それから今まで天界を治める権利はホーリーのものです」
「なにが言いたい…!」
「わかりませんか?ベイチェは再び天界を治めることを望んでいるのですよ。今、残ったベイチェの者はホーリーを憎んでいる…。おや…そこにいるのは光の属性神様ですか?」
ずっとぼくの肩に乗っていたミオが反応する。
『そうだ。よくわかったな』
「いえ…それくらいは、ね。…へぇ、属性神様はホーリー側か…」
セダはぼくとミオを交互に見てから、軽い口調で言った。
「では、俺はこのあたりで失礼しますね」
パッと≪転移≫で姿を消した。
ご丁寧に、気配まできれーいに消してやがる。
――と、そこへカナタが現れた。
「遅れた!あいつが結界はってたみたいだ。リュカも見つけられなかった」
「カナタ…」
「ん?どうした?」
なんだか頭が痛い。クラクラする。
「あいつ…ガネル達のこと…なんとも思って、なくて…目的のために、殺そうとしたって…」
「おい、リュカ!?」
体が傾く。
ドサッと音をたててそのまま倒れてしまった。
「リュカ!!」『どうした!?』
カナタとミオの声がだんだん遠くなって、ぼくの意識は途切れた。
次は秋雨さん!




