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大切な場所  作者: 緋絽
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30/62

藍と緋色

夕です!


地獄の劇が始まる。

ぼく達は今、舞台裏に待機している。

ああ…帰りたい。

「いよいよだな」

カナタに声をかけられる。

「帰る…」

「だめですよ!」

ガシッとリルにつかまる。

この劇、すべてアドリブで突っ切るため、ラストはどうなるかわからない。

まあ、魔法はOKらしいから、つまったら魔法を使って乗りきれ!と、リル様に言われた。

アナウンスがかかる。

「……、それでは次は『お姫様vs王子様』です!どうぞ!」

は、始まった…。

最初の場面はケンカをする姫と王子だ

わーっと歓声があがった。

笑い声が多い気がするけどな。

まずはぼくのセリフから…

「“あら、緋色(ヒイロ)様。ごきげんよう”」

反対側からカナタが出てくる。

か、顔が笑ってやがるー。

「“(アイ)姫か。おはよう”」

「「“……さて”」」

ふたりで目をキランとさせる。

「“朝から貴方に会うなんてっ。――風よ、我が敵を切りきざめ――≪かまいたち≫!!”」

「“それはこっちのセリフだっ”」

藍姫(ぼく)の起こした風は緋色王子(カナタ)めがけて飛んでいく。

カナタは【漆黒】――魔武器を出してそれを避ける。

「“あまいっ”」

ぼくも【純白】を出してかまえる。

ここでナレーション。ちなみにナレーターはレナだ。

「“隣同士の国の後継者、藍姫と緋色王子。ふたりは幼なじみだが、とぉ―――っても仲が悪いのだった。それでも毎日なぜか顔を合わせてしまうふたりは、その度に魔法のぶつけあいをする”」

ナレーションが終わって、ぼくとカナタは戦い始める。

「“今日こそ決着をつけてやるわ”」

【純白】をかまえたまま、カナタにとびかかる。

「“うらぁっ!”」

―――そういや…カナタと戦うのって初めてだ。

カナタを見ると、目をキラキラさせていた。

カナタも同じこと考えてんのか。

「“お前はいつもそのパターンだな”」

「“うるさい!”」

ここで最初の場面が終了。

舞台が暗くなって次の場面の準備が開始される。

ぼく達は裏に戻る。

「おい、さいごのほうお前素だったろ」

「え?何のこと?」

「姫が、うらあっ!…とか言うわけないだろ」

「言うだろ。ぼくが演じてんだから」

カナタが吹き出す。

「おお、ぼくっていう姫おもしれー」

「はぁ?」

今、第2場面でガネル王とリル女王が舞台に出ている。

もちろんガネルがおされてる。おわっ、泣きそう。

「ふたりとも、あたしのナレーションでまた出番よ」

レナがマイク机のそばから言った。

「「へーい」」

カナタはぼくの背中をばんっと叩いてきた。

「戦うの楽しかったな!」

「な!」

舞台でガネル王が女王から逃げ出すのが見えた。

「“もう勝手にしてくれー。藍姫と緋色王子の結婚を許可するーっ”」

王、ヘタレだな、おい。

「いくわよ。“女王に脅されて王はふたりの結婚を許可してしまった。さあ、いやいや結婚することになった藍姫、緋色王子はどうするのか”」

同時に舞台に出る。

「“なんでお前と結婚なんて…”」

「“知らないわよ。お母様が貴方のヘタレ父上を脅しているのを聞いたわ”」

「“あんのバカが…後で殺しておこう”」

「“あら、それなら私も手伝うわ”」

「“今日は気が合うな、姫”」

「“そうね”」

レナが面白がって関係のないところでナレーションをいれる。

「“おっと、王暗殺計画ができてしまった。王は無事生き残れるのか!”」

ぼくは【純白】をだして上品に笑う。口元隠して。

「“さーて、行きましょうか。緋色王子”」

カナタも詠唱して雷の剣を作り上げた。

「“覚悟しろ、ヘタレ”」

ふたりでケケケケ…と笑って歩きだした。


まだまだ劇は続く。

…意外に楽しんでいる、リュカカナタでした。



次は秋雨さん!

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