藍と緋色
夕です!
地獄の劇が始まる。
ぼく達は今、舞台裏に待機している。
ああ…帰りたい。
「いよいよだな」
カナタに声をかけられる。
「帰る…」
「だめですよ!」
ガシッとリルにつかまる。
この劇、すべてアドリブで突っ切るため、ラストはどうなるかわからない。
まあ、魔法はOKらしいから、つまったら魔法を使って乗りきれ!と、リル様に言われた。
アナウンスがかかる。
「……、それでは次は『お姫様vs王子様』です!どうぞ!」
は、始まった…。
最初の場面はケンカをする姫と王子だ
わーっと歓声があがった。
笑い声が多い気がするけどな。
まずはぼくのセリフから…
「“あら、緋色様。ごきげんよう”」
反対側からカナタが出てくる。
か、顔が笑ってやがるー。
「“藍姫か。おはよう”」
「「“……さて”」」
ふたりで目をキランとさせる。
「“朝から貴方に会うなんてっ。――風よ、我が敵を切りきざめ――≪かまいたち≫!!”」
「“それはこっちのセリフだっ”」
藍姫の起こした風は緋色王子めがけて飛んでいく。
カナタは【漆黒】――魔武器を出してそれを避ける。
「“あまいっ”」
ぼくも【純白】を出してかまえる。
ここでナレーション。ちなみにナレーターはレナだ。
「“隣同士の国の後継者、藍姫と緋色王子。ふたりは幼なじみだが、とぉ―――っても仲が悪いのだった。それでも毎日なぜか顔を合わせてしまうふたりは、その度に魔法のぶつけあいをする”」
ナレーションが終わって、ぼくとカナタは戦い始める。
「“今日こそ決着をつけてやるわ”」
【純白】をかまえたまま、カナタにとびかかる。
「“うらぁっ!”」
―――そういや…カナタと戦うのって初めてだ。
カナタを見ると、目をキラキラさせていた。
カナタも同じこと考えてんのか。
「“お前はいつもそのパターンだな”」
「“うるさい!”」
ここで最初の場面が終了。
舞台が暗くなって次の場面の準備が開始される。
ぼく達は裏に戻る。
「おい、さいごのほうお前素だったろ」
「え?何のこと?」
「姫が、うらあっ!…とか言うわけないだろ」
「言うだろ。ぼくが演じてんだから」
カナタが吹き出す。
「おお、ぼくっていう姫おもしれー」
「はぁ?」
今、第2場面でガネル王とリル女王が舞台に出ている。
もちろんガネルがおされてる。おわっ、泣きそう。
「ふたりとも、あたしのナレーションでまた出番よ」
レナがマイク机のそばから言った。
「「へーい」」
カナタはぼくの背中をばんっと叩いてきた。
「戦うの楽しかったな!」
「な!」
舞台でガネル王が女王から逃げ出すのが見えた。
「“もう勝手にしてくれー。藍姫と緋色王子の結婚を許可するーっ”」
王、ヘタレだな、おい。
「いくわよ。“女王に脅されて王はふたりの結婚を許可してしまった。さあ、いやいや結婚することになった藍姫、緋色王子はどうするのか”」
同時に舞台に出る。
「“なんでお前と結婚なんて…”」
「“知らないわよ。お母様が貴方のヘタレ父上を脅しているのを聞いたわ”」
「“あんのバカが…後で殺しておこう”」
「“あら、それなら私も手伝うわ”」
「“今日は気が合うな、姫”」
「“そうね”」
レナが面白がって関係のないところでナレーションをいれる。
「“おっと、王暗殺計画ができてしまった。王は無事生き残れるのか!”」
ぼくは【純白】をだして上品に笑う。口元隠して。
「“さーて、行きましょうか。緋色王子”」
カナタも詠唱して雷の剣を作り上げた。
「“覚悟しろ、ヘタレ”」
ふたりでケケケケ…と笑って歩きだした。
まだまだ劇は続く。
…意外に楽しんでいる、リュカカナタでした。
次は秋雨さん!




