35話「街に溶け込む土塊」
ベスタの動きに合わせつつ、慎重に後退し、倉庫の外へと出た。そして、開け放たれた扉の隙間からゴーレムの挙動を注視する。
ゴーレムは湿った土の足音を殺すこともなく、ゆったりと八咫烏の亡骸へと近づいていった。巨体が静かに手を伸ばす。
直後、その太い腕が爆ぜるように裂け、泥土が津波のように遺体を吞み込んで覆い尽くした。
やがて、引き波のように土が収まり、何事もなかったかのように元の形へと戻る。そこにはもう、青年の死体も、飛び散っていた血痕もなかった。
そのままゆっくりと振り返ったゴーレムは、一切の感情を感じさせない佇まいのまま出口へと足を向ける。その体躯は、先ほどよりも一回り以上大きくなっていた。
「……吸収したってわけか?」
ベスタが困惑を隠しきれないように呟いた。
「いえ……きっと『格納』の方が正確ですね」
リナは頬を伝う汗を拭いながら言葉を返した。
ゴーレムはのっそりと倉庫の外へ出ると、扉に土の手をかけた。ガタンっ、と重厚な金属の音を立てて、扉が完全に閉ざされる。
そのまま巨体は、すぐ目の前に佇む二人には見向きもせず、淡々と歩き始めた。
「私たちも行きましょう。これの行く先に、きっと手掛かりがあるはずです」
二人はゴーレムの後を慎重に追う。
西の空が赤く染まり、街は緩やかに夜の闇に呑まれようとしていた。
◆ ◇ ◇ ◇ ◇
倉庫を後にしたゴーレムは、地響きを立てて進みながら、土でできた胴体の中へ突如として手を突っ込んだ。そして、そこから取り出されたのは、一枚の真っ白な紙片だった。
――試験運用中
異様に目立つ真っ赤な文字。ただそれだけが記された紙を、ゴーレムはペタリと雑な動作で頭部へと張り付けた。
そのまま、姿を隠す気配など微塵も見せず、土の巨体は堂々と道の真ん中を歩み進んでいく。
「おいおい、冗談だろ……? まさか、そのまま歩き回るつもりか!?」
ベスタが呆れたように額を押さえる。リナもまた、この怪異が市民の目に映り、町全体が阿鼻叫喚のパニックに陥る事態を予想し、全身が硬直した。
だが、ゴーレムは何の動揺も見せず……そもそも感情があるのかは不明だが、平然と住宅地を突き進む。
「ねえ、ママ? あれ、なーに? ……あっ、手振ってくれた」
「試験運用中……どこかの企業の新製品か? ど、どうも……」
道を歩く親子が不思議そうに声を上げ、すれ違うサラリーマンが目を丸くして興味深げな視線を注ぐ。そんな奇異の視線を投げかけてくる街の人々に対し、ゴーレムが取った行動は思いもよらないものだった。
まるで親しげに会釈でもするかのように、太い片腕をひょいと持ち上げる。
最初は疑いの眼差しを向けていた人々も、妙に人間臭いその動作に、気まずそうに小さく会釈を返した。
「あの紙のせいで……不自然さを納得させられてる……」
普通の街で、あんな巨大な土塊が闊歩しているなど、異常そのものだ。しかし、「試験運用中」というたった一文の“免罪符”があるだけで、眼前の怪異は「どこかの企業の先端技術の実験機」へと一気に成り下がる。
ゴーレムは何食わぬ顔のまま、真西へと進み続ける。二人は一定の間隔を保ちながら、その背を追う。
街の最東端に位置する住宅地――スクルタス第二十三地区を抜け切る頃には、道沿いの街灯が点灯し、空は闇に染まっていた。
◇ ◆ ◇ ◇ ◇
スクルタス第八地区――海を押し拓いて造られた埋立地。以前、無明天魔の遺骸を回収するため、フジコと共に訪れた時の潮と鉄さびの匂いが、記憶の中で微かに蘇る。
だが、ゴーレムの進路は、打ち捨てられた湾岸の地ではなく、どこか哀愁を漂わせながらも未だ生き残る、場末の商店街であった。
そして、そこで繰り広げられた光景は、リナの予想を鮮やかに裏切った。
「おーい、お疲れさん! 今日はなんだか、いつもより体がでかくないかー?」
通りかかった酔っ払いが、巨体に向かって親しげに手を振った。するとゴーレムもまた、歩みを止めることなく片手をわずかに上げ、まるで隣人に返すように挨拶に応じる。
「おー、良いところに! ちょうど今、裏の倉庫から酒樽を運ぶのを手伝ってほしかったんだよ」
角の居酒屋から、前掛け姿の店主が焦った様子で飛び出してきた。ゴーレムはその呼びかけに躊躇なく応じ、進路を変えて店主の元へ歩み寄る。
そして、大人二人でも難儀しそうな重い木樽をひょいと持ち上げると、指定された場所へと丁寧に並べてみせた。
「助かったよ! ほれ、いつものやつだ」
店主が手渡したのは、包装されたトウモロコシだった。ゴーレムはその贈り物を自らの胴体の中へ静かにしまうと、一度だけ頭を下げ、再び西へと向きを直して歩き出した。
「……リナ、どうなってんだ。私の知ってるゴーレムは、あらかじめ決められた命令をなぞるだけの人形のはずだぜ」
ベスタが怪訝そうに潜めた声は、そのままリナの胸中を占める困惑であった。
本来ゴーレムは、指定された術式通りにしか動かない無機質なツールだ。術者が近くにいれば、都度命令を下すことはできるが、いま目の前で起きていることはそんな次元を遥かに超えている。
あの魔導人形は、明らかに人間の機微を読み取り、住民との間に確かな「共生関係」を築きつつある……
ゴーレムの足取りは変わらない。街並みの都合で折れ曲がることはあっても、その本質的な進路は常に真西を指し続けている。
そして寂れた商店街を抜けた巨体は、活気と喧騒の渦巻く商業の中心――第二地区へと足を踏み入れた。
「おお、さすがはスクルタス、都会だねぇ! 街中でこんな試験運用をするなんて……実に先進的だ!」
通りを行き交うのは、一日を終えて疲弊し、プログラミングされたかのように帰路を急ぐ市民か、あるいは連なる巨大デパート群に惹かれてやってきた観光客たち。
家路につく人々は、スルースキルが高いのか、もしくは単に疲れすぎて周囲の変化に鈍感なのか、すれ違う巨大な土塊に何の興味も示さなかった。
対照的に、極めて熱い視線を注いだのは外からの観光客だったが、彼らはこの異常極まる光景を「スクルタスにおける日常」だと勘違いしているようだった。
「……とりあえず、ベスタ様。“これ”を額に貼って、ロボットっぽく動いてください」
リナは隣を歩く「混沌の源」へ、一枚の紙を差し出す。そこには、目を引くほど鮮烈な赤色で「試験運用中」と書かれていた。
「――はい、皆さん危険ですのでご注意ください! ただいま『人工バカ英雄』が通りますよ! まだ暴走の恐れがあるので、十分な距離を取ってください!」
これほどの人混みの中で、ベスタをそのまま連れ歩くなど自殺行為だ。かといって、彼女に貌を隠せと頼んでもシャリドールの時よろしく、変顔で乗り切ろうとする未来が目に見えている。
それならば、先に手を打つまでだ……
リナの大声に反応し、街ゆく人々は身を縮めて距離を空け、避けるようにすれ違っていく。遠巻きに携帯端末のレンズを向け、この試験中の「人工英雄」をフレームに収めようとする者もいたが、それくらいは致し方ない。追跡の邪魔にならないだけ、マシと考えよう。
(……なんとか、なったわね)
土塊の後に続き、「ベスタ」というあまりにも刺激的なコンテンツを好奇から隠し通したリナは、スクルタスの中心地である第一地区へと足を踏み入れた。
◇ ◇ ◆ ◇ ◇
「……おい!」
ベスタの低く鋭い声が、静かな街の空気を切り裂いた。彼女の視線と指先が、前方を指し示す。
街路が交差する十字路、その影からもう一つ、土塊の巨体がぬっと姿を現した。
「一体だけじゃないの……!?」
引きつった声が漏れる。
新しく現れたゴーレムは、今まで追ってきた個体とわずかに顔の造形が異なっている。少しばかり切れ長の目元と、丸みを帯びた無骨な鼻。
そして、その巨体もまたごく自然に大通りの真ん中を進んでいた。
「あの人形の権利を手に入れられれば……ぐひひひ……」
通りの物陰から、ねっとりと湿り気を帯びた薄汚い笑い声が聞こえる。視線を向けると、テレビの報道番組などで見覚えのある老政治家が、欲望に目をギラつかせながら影に身を潜めていた。しかし、ゴーレムたちはその卑しい声に見向きもしなかった。
そして土塊たちは、互いに顔を合わせることも、歩みを緩めることもなく同じ道を進み始めた。
「リナ、第一地区ってよ……」
ベスタの問いかけに、言葉は返さず、無言で頷く。
スクルタス第一地区。街の地理的中心であると同時に、権力と欲望が蠢く政治的中心でもある区域。
脳裏に、仮説がよぎる。複数体のゴーレムの存在。そして、それぞれ異なる方角から現れた彼らが、いまこの地で巡り合ったという事実。
もし仮に、八体のゴーレムがこの街に存在し、それぞれが魔力奔流の発生地点を「掃除」しているとしたら……
最東端の個体が真西へと直進し続けた理由も、説明がつく。ゴーレムたちの目的地は、街の中心――すなわち、“ここ”……
(まさか、“あの男”が関わっているんじゃないでしょうね……)
一瞬、不快な笑顔を浮かべる新市長の顔が思い浮かんだが、即座に却下する。あの男に、『八咫烏』に喧嘩を売るほどの度胸はない。
「合流したってことは、目的地が近いってことだよな……」
ベスタの低い呟きと重なるように、リナもまた前方を歩む二体の土塊へと視線を向けた。
しかし次の瞬間、その足取りは唐突に、脈絡もなく脇道へと逸れた。
彼らが足を踏み入れたのは裏道だった。主要な通りに比べれば、人通りはまばらだが、決して見捨てられた路地ではない、どこにでもある生活道路。
二体の巨体は変わらず、すれ違う市民に対し、太い腕を軽く上げて親しげに会釈する。すれ違う人々もまた、穏やかな笑みを浮かべ、当然のように挨拶を返す。
だが通りを進むうち、胸のうちは次第に鉛のように重さを増していった。
この道を、自分は知っている。ついこの間、ここを通り、ある依頼人と会った。その依頼をきっかけに、自分は世界の深淵へと足を踏み入れ、今や英雄と肩を並べて異常な土塊たちを追いかけている。
けれど、そんなことはありえない。いや、あってはならない。だって、“あそこ”は……
「あそこが……」
ベスタの低い声が、リナの思考を断ち切った。
視線の先、ひっそりと佇む一つの建物。二体のゴーレムは、まるで住み慣れた我が家に帰るような迷いのない動作で、その古びた門をくぐり、奥へと消えていった。
そこは、脳裏に描いていた建物そのものだった。
自堕落な院長。無数の栄光を勝ち取る天才少年。そして、異形天魔の眷属によって、実の父親を能力者へと書き換えられてしまった依頼人、斎藤ヒカルの働く場所――
――スクルタス孤児院
異形天魔の影を追い、天界の禁忌に触れ、魔力奔流の真実に迫った果てに、自分はまたしても、この孤児院へと廻り戻ってきた。
「……今日は引くぞ」
凍りつくような低い声が、静寂を割った。
慌てて隣へ視線を向けると、ベスタはかつてないほど険しい表情を浮かべ、大剣の柄に手をかけていた。
「……どうしてですか!? 早く中を……」
「私ら、視られてる……」
その声は低く、そして信じられないことに、微かに震えていた。
「視られること自体はよくあることだ、構いやしねぇ。だが……」
ベスタは射抜くように孤児院を睨みつけながら、言葉を継いだ。
「問題なのは……いつから、誰に視られてたのかが、まるでわからねぇことだ!」
切迫した言葉に押されるように、反射的に周囲を見渡す。建物の窓、道を通り過ぎる通行人の視線……だが、おかしなところはない。ただ平和で無機質な、日常の風景が広がっているに過ぎない。
「……私らの敗けだ。どうやら、この先はガチモンの『禁域』らしい」
ベスタはそう告げると、踵を返した。
彼女を引き留めようと言葉を口にしかけたが、その手を見てすべてが喉の奥で凍りついた。
最強の英雄の手は、小さく震えていた。
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
二人は言葉を交わすことなく、馴染みの看板の下へと辿り着く。いつもなら温かい珈琲の芳醇な香りと、穏やかな笑顔が迎えてくれるはずのその扉が、今はまるで世界の終わりの境界線のように重々しく感じられた。
リナは震える手で、使い慣れたはずのドアノブへと手をかける。
――カラン。
入店を告げる愛らしい鈴の音が響く。
しかし次の瞬間、視界に飛び込んできたのは、予想だにしない異様な光景だった。
「……えっ、リナさん!? まだ出発してなかったんですか?」
入り口のすぐそばで、笑顔を完全に忘れた加藤が、魂の抜けたような顔で立ち尽くしていた。
「……いえ。今日の昼に天界に着いて、さっき帰ってきたの」
淡々と口から今日のスケジュールが飛び出した。そのあまりの過密さに、改めて戸惑った。本当に自分は、ついさっきまで天界にいたのか……
加藤が愕然と立ち尽くしている理由は、すぐに理解できた。
いつもなら穏やかな時と静寂が支配しているはずの回顧録は、今や隙間なくひしめき合う白銀の甲冑によって埋め尽くされていたのだ。
「お待たせしました。こちら、当店オリジナルブレンドです」
その白銀の中心で、マスターは普段と変わらぬ柔らかな手つきでトレイを運び、屈強な兵士たちに次々とカップを差し出している。
いつもリナが座っているカウンターの上には、考えられないほどの勢いで山積みになったサンドイッチ群があった。ここは本当に喫茶店なのだろうか、ひょっとしたら本当はどこかの軍の野営地だったのかもしれない……
「ベスタ……随分とのんびり『観光』を楽しんでたようだなあ……!?」
そして店のど真ん中には、白い軍服に身を包み、美しい青髪をなびかせた「鬼」が鎮座していた。
「……ゲッ! サオリ!?」
彼女の立ち昇る殺気とも言える強大な覇気は、空間そのものが歪んでいるのではないかと錯覚させるほどの存在感を放っていた。
「……とりあえず、お前たちが集めた情報について聞かせてもらおうか!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
「……以上が、私とベスタ様が目撃した事の全てです」
リナが語り終えると、店内には重苦しい沈黙が落ちた。
黒幕と思われていた八咫烏の無残な亡骸。日常に溶け込むゴーレム。そして何より、ベスタをして撤退を選ばせた孤児院という禁域。
提示された情報のあまりの密度と重圧に、居合わせた天界軍の兵士たちは、互いに顔を見合わせたまま言葉を失っていた。
「……なるほど。ベスタ、お前にしては冷静な判断だったな」
サオリは腕を組み、猪突猛進の暴走機関車でしかない友の、撤退という判断を褒めるように頷いた。
「では、私の方からの報告だ。お前が一方的に連絡を切った後、私もすぐに転移魔法を借りるべく対策課の拠点へ向かった。……が、そこは既に『もぬけの殻』だった」
その言葉に、リナは持ち上げていたカップの手をピタリと止めた。
「……いなくなっていた、のですか? インセラ様たちが……?」
「ああ。それも、書きかけの資料も器具も何一つ片付けられることなく、ただ人だけが霧のように消えていた」
サオリの眉間に、深い苦悩の皺が刻まれる。
「完全に油断していた。これまで、インセラ殿からは事あるごとに許可申請や報告を受けていたが……制度上、彼らは完全に独立した組織……私に対して報告する義務など、最初から無い! 今際の際に、まんまとやられたということだ」
「……ちょっと待て。サオリ、お前……転移魔法も無しに、どうやってここまで来たんだ?」
重苦しい空気を切り裂くように、ベスタがどこか呆れたような視線を向けて尋ねた。
「何を当たり前のことを訊いている。……『走る』以外に何がある。それが最も確実で、最も早い」
(……走る?)
リナの脳内で、シャリドールからスクルタスまでの途方もない距離と高低差の計算が瞬時に弾き出される……が、どう頑張っても導き出されるのは、規格外の脚力と持久力という信じがたい結果だけだった。
「話を戻そう」
兵士たちの引きつった視線を無視し、サオリは強引に話題を戻した。
「これまでの情報を整理すれば……対策課もまた、ここ『スクルタス』に潜伏している可能性が極めて高い。それも、我々には明かせない意図を持って、だ」
兵士たちの顔に、明らかな困惑が広がっていく。
異形天魔に加え、ソレを隠匿しようとする謎の第三者。協力体制を敷いていたはずの天魔対策課の失踪と、暗部である八咫烏の暗躍。
そのどれもが深い闇に覆われたように、取っ掛かりがない。
「あの……素人意見で恐縮なんですが。その、潜入調査なんてどうでしょうか」
そんな中、カウンターの片隅で小さくなっていた加藤が、躊躇いがちに手を挙げた。
「僕、ちょうどスクルタス孤児院の担当をしてまして。あそこの職員は、銀行経由の人間か、あるいはスポンサー企業からの出向者で構成されているんです。……ひょっとしたら、皆さんのお力になれるかもしれないと思いまして」
言い終えた後、加藤はもう一度「素人意見ですけど」と付け加えた。
「はっ、おもしれえじゃねえか、それ!」
ベスタが膝を叩き、店内を揺らすような笑い声を上げた。
「ってか、もうそれしかねぇだろ! 難しく考えすぎてたが、今私らが掴んでんのは『孤児院』がクセェってことだけだからな! なぁ、サオリ!」
しかし、サオリは腕を組んだまま、険しい表情で店内に居並ぶ面々を見渡した。
「潜り込ませるとして、誰が適任かだ……私やベスタは顔が割れすぎている。他の奴らも論外だな。どう贔屓目に見ても、孤児院に向いてる顔ではない。子供を寝かしつける前に、泣かせて回るのが関の山だ」
サオリの指摘通り、幾多の死線を潜り抜けてきた兵士たちの険しい表情や威圧感溢れる体躯は、平穏な施設の職員を装うにはあまりに「戦場」の匂いが強すぎた。
「となれば、自ずと選択肢は絞られてくるが……」
サオリが言葉を途切れさせた瞬間、店内全員の視線が吸い寄せられるように一点へと集中した。ちょうど適任が、都合よくこの喫茶店に居合わせていた。
知的な佇まい。派手すぎない美貌。そして何より、既に一度現地を訪れ、「顔見知り」もいるという実績。
リナは手に持っていた珈琲カップを静かにソーサーへと置いた。
黒い液面に映る自分の顔を、彼女はどこか他人事のように見つめることしかできなかった。




