↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命わずかな公爵令嬢は、最後に最愛の婚約者からの愛を望む  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第三章 彼女が亡くなった後、人々は……

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/52

38 結婚、そして婚外子 アーヴィング公爵視点

スペンサーは他国へ留学した婚約者シェリアのことなど忘れ、リデルに夢中になった。

彼女のいるクラブに通い詰め、恋仲になるまでそう時間はかからなかった。



リデルはいつだって、彼の望み通りの言葉を与えた。



「スペンサー、世界中があなたの敵に回ろうと私だけはずっとあなたの味方よ」

「たまにくらい休んだっていいのよ。あなたはいつも頑張りすぎなんだから」

「あなたはきっと、立派な当主になることができるわ」



彼女の傍は彼にとって楽園のようで、彼は隙あらば彼女の元を訪れた。

そんな彼の元を、あの日共にいた友人が血相を変えてやってきた。



「スペンサー!!!お前、正気なのか!?」

「……お前」



友人は彼に大股で歩み寄ると、その胸倉を掴んだ。

スペンサーは鬼気迫る表情の友人を、ただじっと見つめていた。



「何の用だ」

「お前、あのときのクラブの女に会いに行っているというのは本当か!?」



スペンサーが女の店に足繁く通っているという噂は、既に社交界に広まっていた。

公爵家の次期当主ともあろう人間が、婚約者を置いて夜の街で遊び歩くだなんて醜聞もいいところだ。



「ああ、それがどうした?」



スペンサーは悪びれる様子もなく尋ねた。



どうせ浮気するなとでも言いに来たのだろう。

リデルとの関係は浮気ではなく、真実の愛だった。



(お前も俺たちの関係を不貞だと言うのか?俺はそんな最低な気持ちで彼女と付き合っていないんだ……)



しかし、そんな彼を前に友人は予想外のことを口にした。



「――お前、いい加減に目を覚ませよ!あの女はお前の地位と財力が目当てで近づいてるだけだ!」

「……何だと?」



その一言に、スペンサーの目の色が変わった。

友人はそんな彼を何とか説得しようと、口を開いた。



「ああいう店で働いてる女に本気になるなよ……大体お前、シェリア嬢がいるだろう。後戻りできなくなる前にさっさとあの女とは縁を……」

「――くだらないことを言うな!」



スペンサーは彼の手を振り払い、怒声を上げた。



(リデルが俺の地位目当てに近づいてきているだと?ふざけるな、彼女がそんな女なわけがない)



信じない、彼女は俺のことを心から愛しているんだ。お前に彼女の何がわかるんだ。

スペンサーは友人の忠告をまともに聞き入れることなく、そのまま追い返した。



「お前、帰れ!二度とここに来るな!お前はもう友人でも何でもない!」

「な、何だよ……俺はお前のためを思って言ってやってんのに……」



いくら言っても聞かないスペンサーに、彼は諦めたように帰路についた。

去り際、彼はかつての友であるスペンサーに向けて言い放った。



「どうなっても知らないからな!」



その一言に、彼は余裕の笑みで言葉を返した。



「ああ、俺はきっと幸せになれる。彼女が傍にいてくれるならな」



絶対に幸せになれると、信じて疑わなかった。

その選択が、後に不幸を招くとも知らずに――



***



留学から戻ってきたシェリアは、スペンサーが不貞行為をしていることなど全く知らなかった。

ただ、突然冷たくなった彼に困惑していた。もしかすると、このとき既に彼の気持ちが別の女性にあるということに気付いていたのかもしれない。

それでもシェリアは何も言わなかった。



なぜ、婚約者の不貞を疑いながらも何も言わないのか。



――シェリアはスペンサーのことをとても愛していた。

余計な口出しはしたくなかったし、彼が望むことならば、全て叶えてあげたいと思っていたからだ。



スペンサーはそんな彼女の優しさに甘え、ある日婚約の破棄を告げた。

シェリアは泣くことも拒否することもせず、ただ静かに受け入れた。



てっきり何か言われるかと思ったスペンサーは、呆気ない終わりに拍子抜けしてしまった。

シェリアとの婚約破棄を済ませた彼は、すぐにリデルと婚約した。

そのせいで両親とはほぼ絶縁状態となったが、リデルがいるなら厳しいだけの父と母なんていなくてもよかった。



その後、スペンサーとリデルは結婚し、二人の間には愛娘のマージョリーが生まれた。

マージョリーはリデルによく似ていて、とても愛らしい子だった。スペンサーは二人が傍にいれば、きっとどんな困難も乗り越えられると信じて疑わなかった。



そんなある日、彼の元にある幼い少女がやって来た。

腰まで伸びた金髪、透き通るように美しい青い瞳、かつての婚約者にそっくりだった。



「……マーガレットです――お父様」

「……」



彼の脳裏に、夢だと思っていたシェリアとの一夜が思い浮かんだ。

まさか、あれは現実だったのか?理解が追い付くまでかなり時間がかかったが、年齢的にも彼の子供で間違いなさそうだった。



スペンサーはマーガレットと名乗った自身の娘を、アーヴィング公爵家に受け入れた。

何でも母親のシェリアが亡くなる前に、困ったときにはスペンサーを頼るようにとマーガレットに言っていたのだという。



マーガレットを受け入れることに、当然妻のリデルは猛反対した。

元婚約者の産んだ子供を、受け入れたくないと思うのは当然かもしれない。



スペンサーはそんな妻を何とか説得した。



「ホルブルック公爵家の令息と婚約させればいい……ちょうどマーガレットもあそこの令息を好いているようだったしな……」



マーガレットが自身の子である以上、追い出すわけにはいかない。

しかし、愛する妻と娘の機嫌を損ねるわけにもいかない。スペンサーはその間で板挟みになっていた。




読んでくださってありがとうございます!


ブクマ、いいね、評価などしていただけたら励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。