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余命わずかな公爵令嬢は、最後に最愛の婚約者からの愛を望む  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)
第三章 彼女が亡くなった後、人々は……

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33 愛に満ちた家族の娘の末路 マージョリー視点

その後、お父様の訃報を聞いた。

元々病気に罹っていたお父様は、あの後すぐに亡くなってしまったとのこと。



誰もいなくなったアーヴィング公爵家は、お父様の遠い親戚である伯爵様が相続することになった。

本当なら私が公爵家を継ぐ立場だけれど、私には当主なんて務まらない。最初からわかっていて、わざわざ爵位を継承する選択なんてしない。

伯爵様は仕事面において有能な方だと聞いたから、彼ならきっとアーヴィング家を立て直すことができるだろう。



お姉様の元へは多分行けないだろうけど、二年もの間苦しんだのだ。

これでお姉様も少しは、気が楽になったかな。今やお姉様の気持ちなんて知ることはできないけど、そうだったらいいなと心の中で願った。



***



アカデミーを卒業してから一年が経った。

同級生たちは爵位を継承したり、婚約者と結婚したり、騎士や文官になったりとそれぞれの道を選んだ。



そんな中、私は一人辺境にある修道院で修道女として生きていた。

ちょうど礼拝を終えた私は、修道院内の掃除をしていた。ここには使用人なんて当然いないから、身の回りのことは全て自分でやらないといけない。



私は元々アーヴィング公爵家の令嬢だったけど、姓を捨てて平民になった。

今はただのマージョリー。平民の女の子とも、対等に話している。



「マージョリー、次はこっちを手伝っておくれ」

「はい、院長」



掃除なんて貴族令嬢だった頃にはやったことがなかったから、覚えるまでかなり苦労した。



修道女としての仕事は、掃除とお祈りだけではない。

怪我人の手当てや子供たちへの教育も、修道女の大切な職務だ。



私は元々貴族令嬢で王立アカデミーに通っていたおかげか、教育の面ではかなり重宝された。

それでもマーガレットお姉様や他の貴族の子息息女たちに比べれば、大したことなんてない。



「……こんなふうになるなんて、全然想像してなかったなぁ」



掃除中、外に出た私は青い空を見上げて呟いた。



アーヴィング公爵家の相続権を放棄した私には、二つの選択肢が与えられた。

どこかの貴族家に嫁ぐこと、身分を捨てて平民として暮らすこと。



前者を選べば以前ほどではないにしろ、それなりに贅沢な暮らしができたはずだ。政略結婚ではあるものの、衣食住には困らない。大きな家に住み、豪華なドレスや装飾品が与えられ、何もしなくても美味しいご飯が食べられる。

子供を産み、女としての幸せを享受することもできただろう。



だけど、私は結婚という道を捨て、平民になることを選んだ。



「……どうしてだろうな」



子供の頃、密かに夢を抱いていた。

大きくなったらお母様のように優しい旦那様と出会い、愛のある結婚をし、愛に溢れた家庭で暮らす。

女性であれば誰もが夢見ることだろう。



実際、お父様は私に政略結婚を強要しなかったし、お母様も私の意思を尊重してくれた。

恋愛結婚で結ばれた二人を見て育ったせいか、私もいずれはそうなるのだと信じて疑わなかった。



――この貴族社会では、政略結婚なんて当たり前なのに。



馬鹿みたいに夢を見ては、思い通りにならないとすぐに嫌気が差して人に当たる。

私の昔からの悪い癖だった。今思えば、私もお母様に似ていたのかもしれない。



「お姉様……ごめんね」



お姉様には何の罪もなかった。いや、お姉様のお母様にも罪はなかった。

一番罪深かったのは紛れもなく私のお父様とお母様だ。

婚約者を裏切ったお父様と、相手のいる男性と平然と関係を持ったお母様。



二人が犯した罪はとても重く、お姉様とそのお母様の人生を破壊してしまった。



政略結婚が嫌だから平民になることを選んだのかと言われれば、そういうわけでもなかった。

普通の貴族の令嬢であれば、大半が結婚を選ぶだろう。愛のない結婚だったとしても、平民として暮らすよりかはずっとマシな生活を送れるはずだから。



なら、どうして私は結婚という道を捨てたのかって?



――私ね、加害者は楽に生きてはいけないと思うの。



人の不幸を踏み台にして得る幸せなんて、許されないはずだから。

お父様はたった二年であの世に逝ってしまったけれど、きっと地獄のような苦しみの中で生きていただろう。



修道院での暮らしは、予想通り楽ではなかった。貴族令嬢のときのようにドレスは着れないし、欲しいものも買えない。結婚は当然できないし、生涯神にその身を捧げなければならない。

毎日朝早く起き、決められた毎日を過ごす。自由なんてものは存在しなかった。本音を言えば、窮屈でたまらない。



でも、後悔はしていない。



「お姉様……一回くらいお墓参りに行ってもいいかな?」



決して、仲の良い姉妹とは言えなかった。

姉妹らしいことなんて一度もしたことがなかったし、むしろお姉様を故意に虐げてさえいた。



もしも次の世界で、またお姉様と会えたら――



「きっと私たち……今度は良い関係になれると思うの」



マージョリー・アーヴィング――いや、シスターマージョリー。

彼女は今日も、そして明日も明後日も一年後も、命の灯が消えるその寸前まで――果てしない後悔と懺悔の中で生きるだろう。




読んでくださってありがとうございます!


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