第6話 魔法少女、狩る
「それじゃ、私に任せてください!」
「お嬢ちゃん、頼んだぜ!」
「よろしくお願いします」
おじさんとメイドさんに見送られながら、私は歩いて橋の方へ進む。
なぜ魔法で走らないのかといえば、盗賊に警戒されないようにするためだ。
警戒されて隠れられたら、作戦どころではなくなってしまう。
「一応確認しておくけど……本当にヤッちゃっていいんだね?」
『罪人に慈悲は無用モヒ』
「気が進まないけど……わかったよ……」
やがて川が見え、橋が見えてきた。そして、橋の向こうに怪しい人影がある。
「いた。盗賊だ」
人影は2つ。
片方はやけにノッポで、ハゲ頭の細いおじさん。
もう片方はやけにチビで、頭をモヒカンにしたデブのおじさん。
二人とも皮製の鎧を着込み、手にナイフを持って、「これぞ盗賊」という雰囲気を出している。
私は、知らないふりをして、ゆっくりゆっくりと橋を渡る。
「嬢ちゃん、止まりな!」
橋の真ん中まできたあたりで、ノッポの盗賊が叫んだ。私が立ち止まると、二人ともニヤニヤしながらこっちに近づいてくる。
「おう嬢ちゃん、耳かっぽじってよく聞きな! 俺たちは……」
「オラたちは……」
「「盗賊三兄弟だ!!!」」
…………ん???
「えっ、どう見ても二人だけど……三兄弟なの?」
「弟は、俺の心の中にいるのさ……」
「そうだ、弟はオラの心の中にいるんだべ……」
「いや、どっちにいるのよ」
なんだか間の抜けた雰囲気の盗賊たち……。
「ねぇ、あなたたち。どうして盗賊なんてやってるの?」
「あぁ? どうしてだと? そんなこと、お前が知る必要ねえよ!」
「仕事サボってたらクビになったべ! だから盗賊になったべ!」
知る必要ないとか言いつつ、理由は話すんかい。
しかも理由がけっこうしょーもない。
「ねぇモヒちゃん……やっぱりやるの?」
『慈悲はない、殺れモヒ』
ちょっと気の毒に思うけれど、他にやれることもない。盗賊撃退作戦を実行することにする。
「あなたたち……神様って知ってる?」
「神様だぁ? はっ、知ってるぜ! アレだろ? ほらその……アレだよアレ」
どれだよ。
「知らねーべ!」
どっちだよ。
「神様はね、亜空間ピピピピピってところにいて、この世界を見守ってるんだよ。私はその神様に導かれて、ここにやってきた」
「あん? お前、何を言って……」
「おぉ…………おごごごご……」
先に変化が出たのは、チビ盗賊の方だった。急にピンとまっすぐ立ち、ガタガタと震え出す。よく見ると少しずつ宙に浮いていってる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『この世界の住民に我の存在を教えてはいけないモヒ』
『魔法の国の住民は神のことを知ってはいけないルールモヒ。知ると魔力が裏返って死ぬモヒ』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
この世界における謎ルール。これは裏を返せば、教えた相手は助からない、ということ。
「おご……おごごごご……ごぎぎぎぎ……」
「お、おい! どうしたんだ!?」
「……たまやー!!」
チビ盗賊は突如、一気に上空までかっ飛んでいって。
ボンッ!!
光をまき散らして、爆発四散した。
「あっ……兄貴ィーッ!!」
「えっ、そっちが弟なんだ」
魔力が裏返る……というのが、どんな状態になるのか分からなくて不安だったけど、こうなるのか……。
あまり現実感の湧かない処刑シーンにしばしぼーっとしていると、ノッポ盗賊の身体も宙に浮き始める。
「へげ……へげげげ……かぎやー!!」
ボンッ!!
キラキラ輝く打ち上げ花火が、風に乗って消えていった。
「うわぁ…………」
本当にあっさり片付いてしまった……。
「モヒちゃん、これ本当に良かったの……?」
『良いも悪いもないモヒ。ルールを厳格に適用した結果モヒ』
「ルールを厳格に、って……どっちかというとこれ、ルールの穴をついて悪用するタイプの、バグ技に近いような……」
最初に提示されるヘンテコなルールなんて、形骸化するのがお約束でしょうに……こんな最悪な形で伏線回収するなんて、アリなの?
私、ちゃんと正義の味方だよね!?
『とっとと安全を確保して、先を急げモヒ』
「わかってるよぉ……」
一度、橋を向こう岸まで渡りきって、周囲を見渡す。
道の脇に、横幅5メートルほどの、壁みたいに大きな岩がある。物陰に誰か潜んでいるかも……。
「神様は、いまーす!」
岩に向かって呼びかけるが、反応がない。もし人が隠れていれば、今ので打ち上げ花火になるはずだが、その様子はなかった。
最初に「三兄弟」などと言うから心配してしまったが、どうやら本当に二人組の三兄弟だったらしい。頭がこんがらがる。
『あーだこーだ言う割に、案外お前も容赦ないなモヒ』
「だって、しょうがないじゃん……怖いし」
とにかく、これで盗賊は片付いた。
一旦戻ってメイドさんからお礼をもらったら、先を急ぐことにしよう。
『待てモヒ』
「えっ?」
『気付くのが遅れたモヒ。魔獣が接近してきているモヒ』
「魔獣が!?」
慌ててもう一度周囲を見渡す。すると……草原の向こうから、何かが近づいてきている!
「なっ、何あれ!?」




