第45話 魔法少女、帰還する
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
気がつけば、辺り一面真っ白な世界。
もはや、『死んだらここに来る』で毎度おなじみ、亜空間の中に浮かんでいた。
「…………終わった?」
『終わったモヒ。ご苦労だったモヒ』
「ぃやったぁーーーーっ!!」
あまりに珍しいモヒちゃんからの労いの言葉に、思わずガッツポーズを取る。
いっぱい苦労したし、いっぱい死んだけど……ついに、ついに! 魔王討伐、達成だ!
「いやー……本当に大変だった……本当に……うぅ、ぐすっ」
嬉しさと安心感で、思わず涙がこみ上げてくる。努力して何か大きな事を達成するっていうのは、こんなに素晴らしいものなんだ……!
「うえぇぇぇ〜〜〜〜ん!」
『やかましいモヒ。静かにしろモヒ』
「感動台無し!?」
なんだよもう、ちょっとくらい浸らせてくれてもいいじゃん……!
涙でぐじゅぐじゅの顔を拭いながら、モヒちゃんの姿が浮かぶ方向にパンチを繰り出す。もちろん私もモヒちゃんも亜空間に実体は存在していないので、パンチは当たらないのだけれど。
『うぜえモヒ。やめないと生き返らせたあとにお仕置きするぞモヒ』
「海砂利水魚だけはやめてください死ぬよりキツいですお願いします」
神様って無慈悲だよねー……まぁいいけど。
「なんにせよ、これで魔法の国は平和になるんだね……いやー良かった良かった」
『うむ、これでまた何か異常が起こるまでは我も穏やかに過ごせるモヒ。しかし……お前、締めは本当に相討ちで良かったのかモヒ』
「へっ? え、まぁ痛かったけど……でも、結局帰るには死ぬんだよね? 何か問題あった?」
『お前、約束していただろうモヒ。あのコトとかいう小娘に、魔王を倒したらまた会いに行くとモヒ』
「……………………」
あ。
「あああああああああっ!?!?」
こ、コトちゃぁぁぁぁんっ!?
「うわぁっ、モヒちゃん! い、今からでも会いに行ったりは……」
『無理だモヒ。お前を元の世界に戻すのは必要事項だモヒ』
「ですよねぇ〜〜…………」
コトちゃんこと、コトセット・ステイシーちゃん。目が覚めるくらい可愛くて、彼女のためだって思ったら辛い戦いも前向きに頑張れた。魔王を倒したのは私だけど、私に魔王と戦う勇気をくれたのは、間違いなくコトちゃんだ。世界はコトちゃんの笑顔が救ったと言っても過言じゃない。
「コトちゃん……私が来るの、待ってるかなぁ……」
『たぶん、首を長くして待っているモヒ』
「うぅ…………」
『お前が別れ際に見た映像を視覚的に再生してやるモヒ』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「おねーさん……また、あえる?」
「……魔王を倒したら、絶対にもう一度、会いに来る! 約束だよ!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「うわぁぁぁぁ…………」
こんないたいけな幼女との約束を守れないだなんて、魔法少女失格だぁ……。
『エンドレスで再生しておくモヒ』
「あの、根本的に私が悪いとはいえ、責めが苛烈過ぎないでしょうか?」
『我にできることはこのくらいしかないモヒ。許せモヒ』
「悪魔かよぉぉぉぉ!?」
深い責め苦に心を抉られつつ、でもやっぱりコトちゃんは可愛いな〜ってときめいていると、モヒちゃんがいつにない神妙な雰囲気をかもし出し始めた。
『さて……お前の頑張りで、2つの世界は救われたモヒ。お前には頑張りに報いるだけの褒美を渡さねばならんモヒ』
「ご、ご褒美!?」
『我に可能な範囲であれば、望みを叶えるモヒ』
やけに保険をかけるような変な言い方だけど、今の私に望みと言われたら、これしかない!
「コトちゃんに会いたいっ!!」
『無理だモヒ』
「ズコーーーッ!?!?」
そこは『しょうがないモヒ』って言いながら手引きしてくれるんじゃないのかよぉっ!?
『お前はすでに、次に復活するときは元の世界に戻っているモヒ。魔法の国に戻すのはどうひっくり返っても不可能だモヒ』
「……そっかぁ」
こうもすげなくはっきりと断られちゃうと、何も言えなくなる。もう二度とコトちゃんには会えないんだなぁ……。
『他に何か望みはないのかモヒ』
「じゃぁ、お小遣いアップ」
『……一気に望みのレベルが下がったなモヒ』
「だってさあ、ニチアサアニメの玩具とか買い揃えるの、私のお小遣いじゃけっこう馬鹿にならないんだよ?」
世の中、何はなくともまずお金である。それは異世界の冒険でも痛感したことだし、世界を救ったご褒美としては妥当じゃないかと思うのだ。
『欲のないことだモヒ。少額の金銭で良いなら、復活した時の右手に握らせておくモヒ』
「わぁい、ありがとう♡」
きっと今、私の瞳は¥マークになっていることだろう。
『さて……準備ができたモヒ。お前を元の世界に帰すモヒ』
「……あはは。お世話になったね、モヒちゃん」
『よきにはからえモヒ』
魔法の国での大冒険も、いよいよ終わり。
目が覚めたら、いつもの日常が戻ってくる……。
「モヒちゃん……本当にありがとう。スパルタ方針は正直大変だったけど、楽しかったよ」
『正直、お前を導くのは骨が折れたモヒ。だが我の目に狂いはなかったモヒ』
「ねぇ、モヒちゃん……また会える?」
『お前に頼らざるを得ない事件が起こったら、呼びに行くモヒ。それまでは達者に暮らせモヒ』
「絶対だよっ! ……またねっ!」
そして周囲は光り輝き、意識が薄れていく——
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
目が覚めると……見慣れた天井が目に入った。
「あれ……私の部屋……?」
パジャマを着て、ベッドで眠っていたらしい。え……今までの、全部夢……?
「いや、そんなわけは……ん?」
右手に、何か硬いものを握りしめていたことに気がついた。恐る恐る手を開いてみると……ピカピカの金貨が5枚、握りしめられていた。
これが、報酬ということなのだろう。つまり……夢じゃなかった!
「モヒちゃん! 多すぎっ!?」




