第44話 魔法少女、魔王を討伐する
「舐めてくれるなよ、魔法少女……例えお前とて、私を止めることはできんっ!」
「よく言うよ、止めてもらいたがっているくせに!」
一合、二合……閃光の剣を振るい、数多の爪と牙を振り回す魔王と切り結ぶ。魔王の攻撃は激しいけど、全然ついていけないほどではない。抑え込んでいるうちに、今度はこちらが押す展開になる!
「うおおおおっ!!」
「ぐぬぅうううっ!!」
渾身の斬撃が届くが、頭への直撃は回避される。袈裟斬りに両断された胴体は、切断面から魔獣が飛び出し瞬時に繋がる!
「ははっ、血も涙もないな!」
「そっちこそ……人間辞めすぎでしょ!」
相手にとっては、頭部を殺られる以外は致命傷にならない。だからこっちは構えが上段に偏り、どうしても大振りになる。斬り合いは押してはいるものの、決定打にはなかなか届かない……!
「ぐっ……本当に、ふざけた魔力量だな貴様……! 今までに見た中でも、ずば抜けてバケモノじみているぞ!」
「お褒めに預かり光栄の極み……ビアンカちゃんこそ、たくさんの魔王を倒した『元』最強の魔法少女だけあるね。手強すぎるよ……」
「っ、ビアンカと……呼ぶなッ!!」
激昂した魔王の攻撃が激しくなる。爪や牙だけじゃなく、角や骨など、魔獣の身体で武器になる部位はすべて使って押し込んでくる!
「死ねぇぇぇぇっ!!」
「くぅぅぅぅっ!?」
捌ききれない……!
左脇腹に骨の一撃をもらってしまって、真っ赤な血がどろっと流れる。
『内臓に傷がついたモヒ』
「うん……不甲斐なくて、ごめん……」
『最後まで世話が焼けるモヒ』
本当に、骨は拾ってくれるみたいだ。
歯を食いしばりながら、相手の追撃を捌いて一歩踏み込む!
「せやぁーーッ!!」
「ぐわっ!? クソったれがっ!!」
振り下ろした一撃は、頭部をかわされ、肩に深々と突き刺さる。閃光の剣の維持を解いて、もう一歩だけ踏み込む……!
魔王は、斬られた胴を繋ぐのに魔獣を動員しきってしまっている……今だ!!
「おりゃぁっ!!」
私はおもむろに、右手の人差し指を魔王の鼻の穴めがけて突っ込んだ!
「ふがっ!? ……お゙っ、お゙ま゙え゙っ!!」
「これで……避けられないでしょ?」
私の意図に気づいた魔王が、慌てて左手をシカの角に変える。だけど、もう遅い!
「『クリスタル……ランサーッ』!!!」
魔王の角が私の脇腹を刺すのとほぼ同時。
ほとばしる勇気の輝きが、魔王の脳を吹き飛ばした。
「ぐぁ…………あ、あぁ…………」
魔王が全身に光を帯びながら後ろへ倒れていく。立て続けに内臓へダメージを喰らった私も、覆いかぶさるように倒れ込む。
「う……ぐぐ……見事だ……勇気の魔法少女……」
「どう……いたしまして……ふへへ、痛いや」
「…………ふふふ、魂に傷がついて……ようやく私も解放される……ありがとう、レイカ……」
「えへへ、倒した相手にお礼言われるなんてね……」
魔王としての魂が傷ついた……魔王の生命が尽きかけているビアンカちゃんは、本来のビアンカちゃんとしての心が強く出ているらしく、とても優しげな表情を浮かべていた。
「それにしても、強いね、レイカは……魔力だけじゃない、その前向きな心……迷いの無さは、恐ろしいくらい強い……」
「あはは……その割に未熟過ぎて、モヒちゃんに助けてもらっても、あなたに勝つのがやっとだったけどね……一人で多くの魔王を倒した、ビアンカちゃんの方が強いんじゃない?」
「ふふ……あなたは神に生命を繋いでもらったけれど、私は代わりに味方の魔法少女の生命を踏み台にしてきたようなものだから……きっと、あなたの方が強い……よ……」
ビアンカちゃんの全身が光に包まれて、次第に崩れていく。同時に、内臓に深刻なダメージを受けた私の視界も、次第に暗くなっていく。
「あぁ……私って、本当にどうしようもない……仲間の生命を守れなかったくせに、その仲間を取り戻したくて、暴走して……結果、魔王に堕ちて、あなたにも迷惑を……」
「迷惑なんて……まぁ迷惑か、だけど……大丈夫だよ」
ともすれば眠ってしまいそうなほどまぶたが重かったけど……必死でビアンカちゃんに微笑みかける。
「困ってる人を助けるのが、私の使命だから……ビアンカちゃんのお困り事も、解消できた……でしょ?」
それを聞いて、ビアンカちゃんはキョトンとしたあと……今までで一番素敵な笑顔を浮かべてくれた。
「本当に……本当にありがとう……勇気の魔法少女、クリティカル・レイカ……!」
「どういたしまして! ビアンカちゃん!」
こうして、魔王カズルメギストスは消滅し……
私の、最後の残機は、闇に落ちていった。




