第43話 魔法少女、最終決戦に挑む
次第に意識がはっきりしてくると、復活したのはタヌキソヴァ要塞の中、魔王の待つ居室の前だった。
「ホーリー……いや……」
再び『ホーリーワイプアウト』で壁をすり抜けようとして……やっぱり取り止めた。もっと盛大に、魔王カズルメギストスへの宣戦布告を行うことにしたのだ。
「『セレスティアルソード』!!」
手に持った閃光の剣を振るい、鉄扉をバラバラに切り刻む。崩れた鉄扉の残骸を蹴り飛ばし、私は室内へと足を踏み入れた。
「頼もぉーーーーうっ!!」
「ぁ゙?」
室内に入った私が目にしたのは、玉座の上に例の鎧を座らせるように組み立てている、ビアンカちゃん……魔王カズルメギストスの姿だった。
「あっ……それ、手でやってるんだ。案外可愛いね」
「貴様……何で生きている?」
「私を導く神様がね、生き返らせてくれたんだよ!」
私の説明を聞いて、魔王は露骨に表情を歪めた。当然だろう、その力は彼女がずっと追い求めて、結局手に入らなかったものだからだ。
「貴様……そうか、貴様の背後にいる神は、蘇生が使えるのか……」
「ふふ、色々教えてくれるし、私にとって最高の神様だよ!」
『調子が良いモヒ』
ちゃんと褒めてるのに不服そうなモヒちゃんのことはほっておいて、ビアンカちゃん……魔王カズルメギストスと向き合う。魔王は、相当苛立っているのだろうか、せっかく組み立てていた鎧を再び蹴り飛ばし、私を睨みつける。
「……その様子だと、神から色々聞いて知識もつけてきたようだな」
「あなたのことも聞いてきたよ……安心して、もう遠慮はしないから」
「ふん……あと何回甦るか知らんが……何度帰ってきても私がバラバラに分割してやろう」
「安心していいよ、私にとってはこれがラストチャンスだから!」
右手を構え、狙いを引き絞る。
これで決まるなんて思わないけど……私にとっての挨拶代わりだ!
「『クリスタルランサー』!!」
放たれた破壊光線は今までで一番強烈な輝きを放ち、魔王に襲いかかる。輝きだけでなく、太さも精度も今までとは確実に違う。私の「必ず魔王を倒し、ビアンカちゃんの魂を解放してあげる」という覚悟が、威力を引き上げてくれているんだ!
「はっ、えげつないなっ!!」
対する魔王は、右腕からペンギン、アライグマ、ウシといった魔獣を射出し、それを盾にする!
「ドヒャーッ!?」
「いやーん☆」
「モー……ッ!」
輝いて消滅していく、使い捨ての魔獣たち。続いて魔王は左腕からシカとカラス魔獣を切り離し、それをけしかけてくる。
シカ魔獣が角を振り上げ突撃し、カラス魔獣が時間差で急降下攻撃を仕掛けてくる!
「『セレスティアルソード』!!」
私は後ろに退きながら、閃光の剣でシカの角を落とし、飛んできたカラスを両断する。そして、さらに時間差で接近してきていた魔王に向けて剣を振るう!
「ぬぅんっ!!」
「せぇーいっ!!」
両手をオオカミ魔獣の鉤爪付き前足に変化させ殴りかかってくる、その攻撃を回避しながら両腕を切り落とす!けれど、魔獣に変貌した部位は即座に切り離され、また新しい腕が生えてくる。ちゃんとダメージを与えられている気がしない……!
「喰らえっ……!」
魔王が足元に転がっていた鎧の兜部分を掴んで投げつけてくる。それをかわしながら、相手の足元に転がっている鎧の腕パーツをめがけて、破壊光線を放つ!
「『クリスタルランサー』!」
ガキンッ!
甲高い音とともに腕パーツが跳ねて、それが魔王の顔面にぶつかる! 魔王が怯んだ、今だ!
「『クリスタル……ランサーッ』!!」
渾身の極太ビームを放つ!
上半身を消し飛ばしてやるつもりだったけど、命中したのは左肩だった。とはいえ、腕を含めて左肩周りは綺麗に吹き飛ばした、つもりだったが……
「ちっ……」
吹き飛んだ体の部位から、魔獣が浮かび上がってきて……そのまま魔王の左肩を形作る。
「モヒちゃん、あれダメージ入ってる?」
『全てのダメージは、奴の体内にいる魔獣どもが肩代わりしているようだモヒ』
「……早く言ってよ。どうしたらいいの?」
『ダメージを肩代わりさせないためには、奴が保有している魔獣を皆殺しにするのが手っ取り早いモヒ』
「か、カタストロフ……」
『ただ、奴がどの程度魔獣を保有しているのかが不透明過ぎるモヒ。成長しているとはいえ未だ不完全なお前の魔法では、殲滅に時間がかかるモヒ。お前の魔力はともかく、体力が底を尽きるとマズいモヒ』
確かに、思えば短時間で数多の大激闘を繰り広げてきたんだ。いつ体力に限界がきても不思議じゃない……。
「他に……何か手はないの?」
『脳を狙えモヒ』
「脳?」
『不完全な概念体である魔王には、自身の魂を閉じ込めておく器が必要だモヒ。その器となっているのが脳だモヒ』
「ってことは、脳をふっ飛ばせば……」
『魂も一緒にふっ飛ぶモヒ。そこだけは代替が利かないモヒ』
言われて私は、こちらに対して身構える魔王の姿勢を見つめる。確かに、頭への攻撃に対してはガードが固い気がする。
「……分かった、仕掛けてみる」
『骨は拾ってやるモヒ』
まったくもう本当に、この神様は素直じゃないんだから。
対峙する魔王は、腰を低く構えながら、私との間合いを慎重に計っている。
「……貴様、さっきまでとは別人のようじゃないか。ずいぶんと魔法の練度にも磨きがかかったものだ」
「覚悟決めたからね……絶対にあなたを止めてみせる!」
恐らくは、これが最後の激突になる。
お互いにその予感を、肌で感じ取っていた。
「いくぞっ! 魔王カズルメギストス!!」
「こいっ! 勇気の魔法少女!!」




