第4話 魔法少女、勝利する
『撃てモヒ』
「――『クリスタルランサー』!!」
指先に収束した破壊光線が、視線の先をめがけて走っていく。
バシュッ!
「ドヘーッ!?」
ペンギン魔獣の顔、ど真ん中を狙ったはずの光線は、やはり少しだけ上にズレて、頭頂部を削るようにぶち当たった。ペンギン魔獣が衝撃で後ろに吹っ飛ぶ。
『だいぶマシになったけど、浅いモヒ。頑張ってど真ん中に当てられるようになれモヒ』
「わっ、わかってるっ、けど!」
後ろ向きに倒れたペンギン魔獣は、手足をバタつかせながらのたうち回っている。
『あの魔獣は一度倒れたら自力じゃ起き上がれないモヒ。落ちついてトドメを刺せモヒ』
「そ、そうなの?」
そう言われて見てみると、丸くてどこも曲がらない体型に、短過ぎる手足、どうやっても自力では起き上がれそうにない見た目をしていた。
「ド……ド……」
見た目は愛くるしいペンギン魔獣だが、近寄れば呪い液を飛ばしてくる危険な存在だ。
早くトドメを刺してやらなきゃ……。
「ドゴミクズがぁ〜☆」
……トドメ刺さなきゃ。
「クリスタル……ランサー! ランサー! ランサーッ!!」
バスッ! バスッ! バスンッ!
連射した破壊光線が、ペンギン魔獣のヒレ、足、クチバシをかすめる。
「パッ! ピッ! ポッ!?」
ペンギン魔獣が奇妙な悲鳴をあげる……あぁ、なんか私がペンギンをいたぶっているみたいな絵面になっちゃってる!?
『趣味が悪いモヒ』
「ワザとじゃないよぉ~!?」
さっさと当てなければ、そう思えば思うほど変なところに当たる。これ、私ちゃんと正義サイドだよね!?
「こ……の……」
ペンギン魔獣が何かを言いたげな表情でこちらを見つめてくる。やめてそんなつぶらな目で見ないで。
「ド貧乳がぁ〜☆」
「…………あ゛?」
その言葉に、全私がキレた。
世の中には、言っていいことと、絶対に言ってはいけないことがある。
禁忌を破った者の末路は、いつの時代も哀れなものなのだ。
バシュンッ!!
刹那、静かに放たれた破壊光線は、ペンギン魔獣の顔の中心を、正確に貫いていた。
「だっ! れっ! がっ! 貧乳だっ!!」
「ひー☆」
弱々しく、それでいてなんだか煽るような悲鳴をあげていたペンギン魔獣は、最後ににっこりと微笑んで……
「あばよ☆」
次の瞬間、まるでガラス細工のように粉々に砕け散った。
宙を舞う残骸は、光の粒子になって風に溶け、フワリと消失していく。
「た、倒した……」
『倒したモヒ』
「……」
『……』
魔獣を倒した。ようやく。
その事実を深く胸に刻み込んだ私は、その場にへたり込んでしまった。
「……はあぁぁぁ、倒したぁぁぁ……」
喜びとか、達成感より先に、何とかなってくれたという安堵が胸を占める。
魔法少女としての初陣は見るも無惨な結果に終わり、異世界でリスタートしての初戦闘。相手は前の魔獣より弱かったとはいえ、ちゃんと結果を出すことができて本当に良かった。
『やれやれ、この程度の相手にここまで苦戦するとは、先が思いやられるモヒ』
「ちょっとぉ、せっかく勝利の余韻に浸ってるのに、水を差さないでよぉ」
『奴は魔獣の中でも最弱モヒ』
「……あぁ、はい、だろうね」
『お前の使える7つの魔法、ちゃんと使い方を極めてしっかり戦うモヒ。こんなんじゃ魔王は倒せないモヒ』
「うぅ……だとしても、もうちょっと労ってくれてもいいじゃない〜!」
モヒちゃんは、声と見た目は可愛かったけど、言うことは全然可愛くない。
ペンギン魔獣もそうだったし、この異世界……魔法の国というのは、そういう世界なんだろうか?
『とりあえず、街まで移動するモヒ。拠点を作らないことには始まらんモヒ』
「はいはい、移動しますよ……」
私は重い腰を上げ、街道をゆっくりと歩き始めた。
街道の周りには草原が広がり、遠くの方には大きな木やうっそうと茂る森が見える。
改めて……異世界だ。
「……ねぇ、モヒちゃん」
『何だモヒ』
「もし、さっきの魔獣が吐き出した、呪い液……あれをもろにひっ被ってたら、どうなってたの?」
『知りたいかモヒ?』
「えっ、う、うん」
『事細かく説明すると、レーティングが一段階上がってしまうから説明するのが面倒モヒ。それでも知りたいモヒ?』
「あっ、やっぱいいです」
この異世界……やっぱり、ろくでもないかも。
「はぁ……『グロリアスロード』!!」
靴が光り輝き、私は街道を高速で走り出す。一時間も走れば、街に着くはずだ。
このヘンテコリンな異世界には、どんな人が住んでるんだろう?
わずかな期待と大いなる不安を胸に、魔法少女は走り続ける……なんちゃって。
★☆★☆★読んでくれてありがとうモヒ★☆★☆★
こんばんは、こんにちは、もしかしたらおはようございます。罪木葛士です。
勇気の魔法少女クリティカル・レイカのRe:初陣、お楽しみいただけましたでしょうか。
レイカの活躍がもっと見たいお方、モヒちゃんの喋り方がクセになってきたお方!
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