第3話 魔法少女、戦う
「ド死ねやヴォケが〜☆」
「!? 高いところへ跳び上がる魔法!! 『フラッシュジャンプ』!!」
私の背中から光のバーニアが噴き出し、身体が一瞬で空中に浮かび上がる!
ほぼ同時に、ペンギン魔獣のクチバシから、ドギツい色の得体の知れない液体が噴射された!
「うわっ、うわぁ〜っ!! 何あれ!? 間一髪!!」
すんでのところで、ジャンプによる回避が成功した。あと一瞬遅れたら、あの汚い液体をもろに被っていたかもしれない。
『危なかったなモヒ。あの魔獣が吐き出す呪い液をひっ被ると、とんでもないことになるから気をつけろモヒ』
「うん、見るからに体に悪そう……可愛い見た目してても魔獣は魔獣なんだね」
『それより、魔法が切れるから気をつけて着地しろモヒ。落ちて死んだら生き返られないモヒ』
「へっ!?」
魔法一発で、私は軽く20メートル以上跳び上がっていた。地上から学校の屋上まで届く大ジャンプである。
魔法が切れれば……当然、落ちる!
「ひっ、ひぇぇぇぇ〜っ!?!?」
自由落下の恐怖。それは抗いようのない根源的な恐怖であると同時に、ある種の解放感を同時に胸に募らせる。
生命の理から、自身を解き放て――――
「ひっ、光の盾で身を守る魔法っ!! 『ライトシールド』!!」
両手を下に突き出し、魔法を使う。私の足元に、光の盾が生成される!
ゴギャギャギャギャッ!!
盾が接地した瞬間、ものすごい衝撃音が鳴り響く。衝撃は盾が完璧に受け止め、私は安全に着地することに成功した。
「……ぷはっ、はぁ~!! び、ビビったぁ~……」
『ビビってる場合じゃないモヒ。アイツがまた来るモヒ。倒せモヒ』
「ドブカスがぁ〜☆」
やたら可愛い声で汚い罵声を放ちながら、ペンギン魔獣がよちよち歩きでこっちに近づいてくる。
「うわわわわっ、また来たっ!? えぇと、『ライトシールド』で呪い液を防ぎながら、『セレスティアルソード』で……」
『異なる魔法を2つ同時には使えないモヒ』
「えぇっ!? 何その面倒な制約!?」
『仮に『ライトシールド』で防御したとして、その後『セレスティアルソード』に持ち替える前に次の攻撃がくるモヒ。あの呪い液は射程がせいぜい1メートルくらいしかないから、遠距離から『クリスタルランサー』で仕留めるモヒ』
「! ……わっ、分かった!!」
右手の人差し指をまっすぐ伸ばし、ペンギン魔獣に対して指先を向ける。よちよち歩き姿の魔獣に破壊光線をぶち当てるなんてちょっとかわいそうな気がするけど、だからって放っておくわけにもいかない!
「破壊光線を飛ばす魔法! 『クリスタルランサー』!」
バシュゥンッ!
破裂音とともに、指先から破壊光線が射出され――――
光線は、ペンギン魔獣の頭から数センチ上をすり抜け、消滅した。
ペンギン魔獣は、無傷。
『ヘタクソがモヒ』
「えぇ、何でぇ!?」
『撃った時の反動で狙いがブレてるモヒ。しっかり狙えモヒ』
「ちゃんと狙ってるよ! 『クリスタルランサー』!」
バシュッ!
撃った破壊光線は右に大きく逸れ、地面を深くえぐる。全然当たらないっ!
「わわっ、ど、どうしようっ!?」
『来るぞモヒ。避けろモヒ』
「ドドド死ねぇ〜☆」
「ひぃっ! 『フラッシュジャンプ』!!」
再び私の身体は宙を舞う。先ほどは20メートルくらいのジャンプだったが、今度はもっと高い。50メートルくらいは跳び上がってるだろうか。
「うひいぃぃっ!?!? たっ、高いっ!! 高い高いっ!!」
『魔力の込め方と姿勢を制御することで、ジャンプの高さも調節できるモヒ』
「言うのが遅いぃぃっ!! うわわわわっ!!『ライトシールド』!!」
再び衝撃音が鳴り響き、何とか着地に成功する。
このかわし方、正しいのだろうか? 一歩間違えたら死ぬような回避方法を何度も何度もやるような戦い方、神経がもたない……!
「つっ、次っ! 次で、確実に仕留めないと!」
『しっかり狙えモヒ』
「狙ってるよ! でも、当たらないの! 何で!?」
『狙い方が悪いモヒ。素人が何も考えないで百発百中できたら苦労しないモヒ』
「ぐ、ぐぅぅ~……」
モヒちゃんの言ってることは正論だ……けど、納得いかない!!
「……教えて! どうやったら当たるの!?」
『致し方ないモヒ。教えてやるから言う通りやるモヒ』
やれやれとでも言わんばかりの空気を感じるのが、めちゃくちゃ腹が立つ。そのくらい快く教えてくれてもいいじゃない……!?
『まず、右手だけで構えようとするからブレるモヒ。構えた右手を左手でしっかり支えて、ブレないようにするモヒ』
私は言われるがままに、構えた右手を左手で支えるようにしっかり握る。なんだか、刑事ドラマで銃を構える刑事さんみたい。
『視線の先にまっすぐ指がないと、狙いがズレるのも当たり前だモヒ。構えは目の高さ、視線は片目で狙いを付けるモヒ』
左目をつぶって、右目だけで狙いを付ける……ますます銃を構えてる気分になってきた。
『手の震えは射線のズレに繋がるモヒ。しっかり脇を締めて、腰を落として構えろモヒ』
私は深く息を吸う。
焦るな……焦って撃っちゃダメだ。
モヒちゃんの言う通り……正確に狙いを付ける!
「ド底辺がぁ〜☆」
ペンギン魔獣は相変わらず可愛い歩き方でにじり寄ってくる。罵倒の語彙だけ無駄に豊富なの、本当になんなの?
『息を整えろモヒ。そして、息を止めるんじゃなく、一定のリズムで吐きながら撃つモヒ』
「息を……整える……」
すぅぅぅ……
はぁぁぁ……
張り詰めていた空気がほぐれるのを感じる。
先ほどまでビクビク震えていた指先が……ピタリと止まった。
『撃てモヒ』
「――『クリスタルランサー』!!」




