第20話 魔法少女、立ち向かう
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「うわぁぁぁぁっ!?」
全身がバラバラになったかのような激痛に襲われたかと思った直後、私は見覚えのある真っ白な空間に浮かんでいた。
「し、死んでる……っ!?」
『ネコ魔獣の魔力球をくらって、全身の骨が砕けたショックで心臓が止まったモヒ』
「何それ怖……いや、急いで蘇生して!」
『感情が矛盾してるモヒ。落ち着けモヒ』
「これでおちおち落ち着いていられるか!? 私がいかないとコトちゃんに危険が危ないでしょうが!!」
『お・ち・つ・け、モヒ。お前の肉体を再構築しなきゃいけないからリスポーンには時間がかかるモヒ』
あぁ……こんなことしている場合じゃないのに!
私のバカ! なんで死んだりしたの、私!
「……あれ、そういえば私、なんで死んだんだっけ?」
『警備兵の男に後ろから殴られて、魔法を維持できなくなったモヒ。直前の魔力の流れを察するに、どうやら警備兵もネコ魔獣に操られていたようだモヒ』
「な、何だってーーー!?!?」
私を貧乳と罵った警備兵……実はネコ魔獣に操られていたということは、本心じゃなかったのか!?
『リスポーンまでに状況を整理するモヒ。あの魔獣が使う能力は2つ、破壊の魔力球と、人を操る力モヒ』
どっちも厄介な攻撃だ。絶え間なく飛んでくる魔力球を『ライトシールド』で防ぐと、反撃に転じる隙がない。そして操り能力は未知数すぎる、さっきみたいな不意打ちを食らったら残機がいくつあっても足りやしない。
「ねぇ、やっぱり何か作戦ないの……? このままじゃまた負けちゃうよ」
『操り能力は、瞬時に誰でも、何人でも操れるわけでは無さそうだモヒ。もしできるならあの場にいた全員操っていればあっさり終わっていたモヒ』
「それは助かるね……でも、誰がいつ操られるか分からない以上、結局油断できない……」
『それと反撃に転じる以上、魔力球は『ライトシールド』ではなく別のもので防ぐ必要があるモヒ』
「別のものって……私がシールドを張らなきゃ、コトちゃんたちが……」
いや、待て……あったぞ、あの場所に便利そうな物が。
「オリハルコン箔の箱……!」
『そうだなモヒ。蓋を外せれば盾になるし、箱の陰に隠れてもらえば、離れていても数人は助かるモヒ』
おそらくは、ネコ魔獣が周囲に勘付かれないように忍び込むために用意した、例の箱。
あれが突破の糸口になる……きっと!
『よし、準備できたモヒ。リスポーンするぞ、気合入れろモヒ』
「早くして! あのネコからコトちゃんを守らないと!」
意識がすぅっとぼやけ、白かった視界がどんどん暗くなっていく。
意識が浮上する感覚――いよいよ、反撃の時間だっ!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
残機、あと3
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「――――さんっ――――おねーさんっ!」
目が覚めると、眼前に泣き崩れたコトちゃんの顔があった。
「コトちゃんっ!! 無事っ!?」
「おねーさんっ! わぁんっ、生きてたーっ!!」
抱きついてくるコトちゃんを受け止めながら、周囲を見渡して状況を確認する。
すぐそこに、例の箱が立てられて置かれていた。それを二人がかりで支えているのは、メイドさんとコズールさんだ。
「っ、魔法少女! 生きてたのか!?」
「レイカどの! ご無事で!?」
どうやら二人が、倒れた私とコトちゃんを箱の後ろに運んで守ってくれていたらしい。
「何でか知らねぇが、この箱はあの魔獣の攻撃を受け付けねぇんだ。それにメイドが気付いて、お嬢様とお前をここに運び込んだ」
「突然暴れ出した警備兵は、私が殴って気絶させましたが……その間に他のメイドが3人やられました。あの魔獣もこっちには近寄ってこないので、今は膠着状態です」
「くっ……ごめんなさい、私が油断したばっかりに」
「それはお前のせいじゃねぇよ……それより、ずいぶん頑丈なんだな、元気そうじゃねぇか。俺は肩の骨が折れて片腕上がらねぇのに」
「あっ、これは……治癒魔法でして」
厳密には一回死んでるんだけど、それを詳しく説明するわけにはいかない。
「レイカどの……もうこの状況を何とかできるのは、レイカどのの魔法だけです! どうかお願いできませんか!」
「俺からも頼む……今までの非礼は全部詫びる、必要だったら俺が囮になってもいい……だから、奥方様とお嬢様を助けてやってくれ……!」
「……任せてっ!」
私は魔獣に気づかれないように這って箱に近づき、蓋の蝶番を確認する。蝶番部分にはオリハルコン箔は貼られておらず、簡単に切れそうだった。
「この蓋部分だけ、外して使います。『セレスティアルソード』!」
閃光の刃で蝶番を焼き切る。蓋が外れて、ちょうどいい大きさの盾になった。
「これでよし……コトちゃん!もっとメイドさんとコズールさんにくっついて! 何があっても絶対に離れちゃダメだよ!」
「うん! ……おねーさん、がんばって!」
「任せてっ!」
盾を構えて立ち上がると、散発的に魔力球を放っていたネコ魔獣が攻撃をやめ、訝しげにこっちを睨んだ。
「……小娘、生きていたのかニャ?」
「あいにくと、私は殺したくらいじゃ死なないんだよ!」
「ふっ、ニャらば死ぬまで殺し尽くすだけニャ!」
バシュゥッ!
飛んでくる魔力球を、構えた盾で受け止める。衝撃も反動もなく、いとも簡単に防げる。これなら……やれる!
「おねーさん!」
「魔法少女!」
「レイカどの!」
背中に、私を信じてくれる人たちの声を背負って!
「クリティカル・レイカ――――いきますっ!!」




