第19話 魔法少女、守護する
「おねーさーんっ!」
「コトちゃぁぁぁんっ!!!」
駆け寄ってくるコトちゃんを受け止め、ぎゅっと抱きしめる。その小さな体に秘められた愛と勇気が、私を本物の勇者にしてくれるような気がする!
「ありがとう、コトちゃん……私を信じてくれて……」
「だっておねーさん、やさしいしかっこいいし、それに……おててぎゅーって、にぎってくれたもん」
うおおコトちゃん……尊すぎて涙が出そうだよぉ……。
「それに……おかーさん、ずっとへんだったの。わたしのこと、コトってよんでくれないし……」
「コトちゃんも、お母さんがおかしいって気づいてたんだね……」
「おねーさんっ、おかーさんをたすけてっ!」
「っ、うんっ! 勇気の魔法少女、クリティカル・レイカに……任せてっ!!」
文字通り、勇気100倍だ! 今ならどんな魔獣が相手でも、勝てるっ!!
「おっ、お嬢様……」
「ニャにをうろたえているのです、コズール。早く侵入者を捕らえなさい」
「し、しかしお嬢様が……」
「コトセットのことは放っておきニャさい。重要ニャのは侵入者です」
「お嬢様を……放っておけ、だと!?」
コズールさんが、疑いの眼差しでロロネア様を……いや、頭上の猫を睨みつける。
「誰よりもコトセットお嬢様を愛しているはずの奥方様が、放っておけだなんて言うはずがねぇ!! てめぇ、ナニモンだ!!」
「…………ちっ」
ロロネア様が舌打ちすると同時に、頭上のネコ魔獣が口を大きく開き、何やら赤い球を吐き出した!
バスッ!
「ギャァァァッ!?」
赤い球を肩にくらって、コズールさんは吹っ飛んで倒れた。屋上空間を恐怖と戦慄が支配する!
「コズールさんっ!!」
「執事長っ!?」
倒れ込んだコズールさんに慌てて駆け寄ろうとするメイドさんに向けて、ネコ魔獣が再び口を開く。
「うおぉぉぉぉっ、『ライトシールド』!」
とっさに二人の元へ駆け寄り、『ライトシールド』を展開する。赤い球はバチバチと音を立てて、霧のように弾けて消滅した。
「皆さん、私の後ろに隠れて!!」
突然のことに呆気に取られていた警備兵やメイドさんたちが、私の一喝に慌てて駆け寄る。メイドさんに支えられてコズールさんが体を起こす。かなり痛々しいけど、ギリギリ生命に別状はないみたい。
「……くそっ、まさかお前に助けられるとはな」
「言ったじゃないですか、私は勇気の魔法少女です!」
バスッ! バスッ!
ネコ魔獣が連続で球を飛ばしてくる。『ライトシールド』で凌ぐのはワケないけど、このまま後ろを守りながらじゃ、攻撃に転じることができない……!
「も、申し訳ございませんレイカどの……この鬼畜メガネに乗せられていたとはいえ、伝説の勇者どのに疑いをかけるなんて……」
「お、俺はずっと信じてましたよっ!! 魔法少女さんは正義の味方だって!!」
「っ、ごめんちょっと静かにしててっ!!」
一瞬でも気を抜いて『ライトシールド』の維持が途切れたら、その時点で犠牲者が出てしまいかねない。謝罪なら後で聞く……っていうか、警備兵の人! 私のこと貧乳って言ったの、覚えてるからなっ!
「ふーむ、本当に邪魔だニャ、お前」
ロロネア様の口を使ってネコ魔獣が吐き捨てる。
「せっかく魔王様のために、この女を操って街を支配してやろうとしたのに、お前のせいで台ニャしだ」
「なっ、なんて恐ろしいこと考えてんのよっ!」
今までとはちょっと邪悪さの方向性が違う……そして、間違いなく今までとひと味違う強敵だ!
「しかも、ただの人間の分際で吾輩の魔力球を防ぐとはニャ。つくづく、ニャに物だお前は」
「さっきから……言ってるでしょ! 私は魔王を倒す、勇気の魔法少女! クリティカル・レイカだ!」
「魔王様を倒す? それは無理だニャ、貴様はここで死ぬからニャ」
「やれるもんならっ! やってみなさいっ!!」
強気で啖呵を切ってはみるが、このままじゃジリ貧だ。何とか打開策を探さないと……。
『魔力の動きがおかしいモヒ。注意しろモヒ』
「と、唐突に注意しろとか言われても……なんか作戦ないの?」
『作戦は、「バッチリがんばれ」モヒ』
「役に立たな〜いっ!?」
どうにかして隙をうかがえないものか……と考えていると、急に後ろが騒がしくなった。
「おい、お前何を……!」
「おねーさん! よけて!」
えっ、避けるって何を……
ゴンッ!
後頭部から鈍い音が響いて、目の前に火花が飛んだ。
後ろから誰かに殴られたのだ、ということには、しばらく……死ぬ直前まで気が付かなかった。
「がはっ……!?」
衝撃で、魔法の維持ができなくなる。『ライトシールド』が……消えてしまう……。
「ごきげんよう、死ねニャ」
バスッ!
バスバスバスッ!!!
連発された赤い球が、私の顔面に、肩に、右胸に、脇腹に触れる。一瞬だけ遅れて、全身に地獄の責め苦を思わせるような激痛が走った。
「ぐぁっ……がぁぁぁっ……!?!?」
「魔法少女っ!!」
「おねーさーんっ!!」
全身の骨という骨をバラバラに砕かれる激烈な痛みにより、私の意識は一瞬でホワイトアウトした。




