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魔法少女転生 〜魔法少女になったのに初陣で死んだ私、異世界で残機5の魔王討伐を開始します〜  作者: 罪木葛士


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第17話 魔法少女、忍び込む

『急げモヒ。真夜中ゆえに周囲に気を配り、騒がしい音を立てないように、しかし可能な限り早く屋敷へ向かえモヒ』


「言ってることはもっともなんだけどさぁ……!」


 夜中で周囲に人通りこそないものの、『グロリアスロード』で走ったらけたたましい騒音が鳴るので、私は普通に走って屋敷へ向かう。数分であの広大な敷地を誇るステイシー邸の庭に到達した。


「うわ、こんな夜中なのに門番がいる」


 ステイシー邸の正面扉前には篝火が煌々と灯り、その篝火の前には鎧を着込んで長い棒を持った門番さんが立っていた。


「見つからないように、こっそり裏に回ろう」


『絶対に見つからないよう極秘裏かつ静謐に、しかし決して速度を落とすことなく速やかに屋敷へ近づけモヒ』


「モヒちゃん、もしかしなくても無理難題言うの楽しんでない?」


『我は一時の感情に思考を左右されるような低俗な存在ではないモヒ』


 ホントかなぁ……?




 細心の注意を払って屋敷の裏手へ回ると、周囲には誰も居ない、夜の闇だけが広がる空間があった。


「周囲に誰もいないね……ここから上に上がろうか」


 ステイシー邸は5階建てで、屋上には転落防止の柵があったから、22メートルも跳べば上に上がれるはずだ。

 私の魔法、『フラッシュジャンプ』は、魔力の込め方と姿勢の制御で高さを調整できるらしい。初めて跳んだときより、ほんのちょっとだけ高く……。


「……魔力の込め方って、どうやって調整するの?」


『知らんのかモヒ。使えないやつだモヒ』


「知りませんよそりゃぁねえ! 魔法少女になるまで魔法なんて使ったことないからねえ!」


『魔力の込め方は……♀★Φを、Ω※♂してやればいいモヒ』


「何て?」


『♀★ΦをΩ※♂してやればいいモヒ。簡単だモヒ』


「簡単とか難しいとか以前の問題だよ! 私に分かる言葉使ってよ!?」


『……お前の世界に魔法を使うためのノウハウがないせいで、お前に分かる言語に翻訳できないモヒ』


「……さよですか」


 とりあえず、初めて跳んだ時の状況を思い出す。ペンギン魔獣が近づいてきて、可愛いと思ったら可愛くないこと言ってきて、慌ててジャンプして……。


「だいたいこんな感じ? 『フラッシュジャンプ』!」


 次の瞬間、私の身体は60メートルくらい上空までポーンと跳ね上がった。

 どうやら全然違ったらしい。初回のときの3倍ぐらいの高さが出てしまっている。普通に着地がヤバい。


「わぁっ、『ライトシールド』!」


 ゴギャギャギャギャッ!


 慌てて屋根の上にシールド着地する。轟音が響き、無事着地に成功する……。


『めちゃくちゃうるせえモヒ。屋敷内の人間に気づかれたモヒ』


「わ~ん、どうしろっていうんだよ〜!」


 とにかく、誰か来る前に屋上の調査をしてしまおう!

 屋上の屋根から降りるとそこに置いてあったのは、酒樽が1個、でっかい木箱が5個、そして……蓋がパカっと開いた、金属製の箱が1個。


「なにこれ、開いてる……怪しすぎ」


 私が箱に触れると、ほわん……という音とともに、箱の触れた部分が、淡く落ち着いた色に発光した。


「わわっ、何これ!?」


『お前の魔力反応が若干弱まったのを確認したモヒ。これはオリハルコン箔を貼ってあるなモヒ』


「お、オリハルコン……箔?」


 オリハルコンといえば、アニメやゲームでは常識レベルの、なんかすごい伝説の金属だ。でも、箔ってなんだ箔って。


『オリハルコンには魔力を遮断し閉じ込めたり、吸収して周囲に逃がしたりする特性があるモヒ。通常は魔獣避けや、対魔法用の防具に用いるモヒ』


「へー、魔獣避け……」


『ただし、オリハルコンはべらぼうに高いモヒ。そのため効果が下がっても、他の金属と混ぜて合金にしたり、薄い箔にして表面だけで対応したりするモヒ』


「なるほど、金箔と一緒なんだ……」


 ファンタジー世界だけの夢の金属が、そんな世知辛い使い方をされてるとは……。


「内側は、普通の金属だね……もしかして、中に小型の魔獣が入って、隠れたりできるんじゃ?」


『可能モヒ。それなら魔力反応の変化も説明がつくモヒ』


 その時だった。


 ガチャガチャガチャガチャッ!!


 屋上鉄扉の鍵がけたたましい音を立てる。音に気づいた屋敷の誰かが屋上に入ろうとしている……!


「わっ、ヤバい!隠れなきゃ!」


 隠れると言ってもどこに? 私は周囲を見渡す。

 酒樽の陰……はさすがに小さすぎる。木箱は隙間が大きくて中が丸見え……。


「えーい、ままよっ!」


 私は目の前にあったオリハルコン箔の箱の中に飛び込み、蓋が完全に閉まりきらないように引っ張り下げた。


 箱の隙間から様子を見つつ、息を殺してじっと待っていると、ついに鉄扉が開く。


「今の音は何だァ!!!」


 まるでヤクザみたいなドスの効いた声を張り上げて飛び込んできたのは、ステイシー邸の執事長(らしい)、コズールさんだった。


(ひえ〜〜、彼にだけは絶対に見つかりたくない!)


 目立った音の発生源が見当たらないことに気づいたコズールさんは、周囲を見渡しながらゆっくりと屋上に入ってくる……。

 やめて〜、こっちに来ないで〜……。


「……何だァ、この箱。こんなもん、屋上に置いてあったか……?」


 ぎぇーっ!? ばっちり注目されているーっ!?


「あの胡散臭い魔法少女が言ってた、光る物ってこれのことか……? 中身は何だ……?」


 コズールさんは、ためらいながらゆっくりと箱に手を伸ばす。


 ……これ、詰んだ?


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