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創造神の遊戯  作者: 面白味
第2章 創造神、王都で大暴れ
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62話 他言無用

部活でなかった3年ぶりのGW!

楽しすぎてヤバイ(・∀・)

早すぎてヤバイ(;∀;)



先刻までの地鳴りのような咆哮も、アンデッドたちが引きずる骨の音も、今はもう聞こえない。ただ、崩れた岩壁から零れ落ちる砂の音と、生き残った者たちの荒い呼吸だけが、この凄惨な戦場に残されていた。


空は、茫然自失となって座り込むトビーを横目に、一歩、また一歩と中央の魔導馬車へと歩みを進めた。その足取りは、血の海を歩いているとは思えないほど軽やかで、汚れ一つない。


馬車の前では、騎士団長ケイデンスが、折れた剣を杖代わりにして辛うじて立っていた。その背後、扉の影からは、震えながらも外の様子を伺う、ローゼンス――エレアの姿があった。


ケイデンスは、近づいてくる空の姿を認めると、信じられないものを見るかのように目を見開いた。


「貴様……いや、貴殿は……」

「やぁ、団長殿。ひどい有様だな。命があっただけ儲けもんだな」


空がいつもの飄々とした口調で話しかけると、ケイデンスは一瞬、戸惑ったように表情を歪めたが、すぐに深い溜息と共に剣を鞘に納めた。そして、重い甲冑を鳴らしながら、空に向かって深く頭を下げた。


「……まずは、感謝を。貴殿の……そして、あちらの執事殿と少年の加勢がなければ、我らは今頃、デュラハンに殺られていたか、あるいは不浄の仲間入りをしていただろう。ローゼンス家騎士団を代表して、礼を言う。この恩、一生をかけても返しきれぬ」


その言葉には、階級も身分も超えた、純粋な武人としての敬意が籠もっていた。しかし、空はそれを受けても殊更得意げにする様子もなく、むしろ「やれやれ」と言いたげに頭を掻いた。


「はっ、さっきまで『肉壁』扱いしてたわりには切り替えが早いな。まぁ、生きてるなら何よりだ。まぁ、あんたが生きててくれないと、この後が面倒だからな。礼なら、王都に着いてから美味い飯でも奢ってくれよ」

「……あ、ああ。もちろんだ。望むだけの物を用意しよう」



空がからかうように笑うと、ケイデンスは苦渋に満ちた表情を浮かべた。


「……面目ない。私の目は節穴だったようだ。これほどの御仁を、あのような最後尾に追いやっていたとは。この責任は、王都に着いた後、いかなる罰でも受ける所存だ」

「構わねぇよ、そんな堅苦しいのは。俺はただ、目的地に着く前に馬車が壊れるのが嫌だっただけだ」


空が適当に受け流そうとした、その時。

馬車の影から、一人の少女が震える足取りで進み出た。


「……偉大なる、光よ」


扉の影にいたエレアが、一歩前へと進み出た。彼女の瞳には、涙の膜を透かして、空から溢れ出す「無色の光」が映っている。彼女は、王族の前でさえ見せたことのないほど深い、最上級の礼節をもって深くお辞儀をした。



「お目にかかれて、光栄です。そして、我が命、我が騎士を救ってくださったこと、心より感謝申し上げます」

「……何のことだかさっぱりだな。俺はただの、どこにでもいるしがない冒険者だよ。……だろ?」


空は困ったように眉を寄せたが、エレアは静かに首を振った。


「……いいえ。私の『目』を欺くことはできません。あの日、アーリスで見たあの光。そして今、目の前に立つ、すべてを無に帰すような絶対的な存在……。貴方様こそが、この絶望を打ち払う真の光。そうでしょう?」


傍らで聞いていたケイデンスが「お嬢様、何を仰って……?」と狼狽する。

空は、真っ直ぐに自分を見つめるエレアの瞳をしばし見つめ返し、やがて諦めたように肩をすくめた。


「……やっぱり、その目か。隠し通すのは無理そうだな」


空は降参したように両手を挙げ、ため息をついた。

その時、空の雰囲気が一変した。

温和で適当な冒険者の皮が剥がれ落ち、そこには一切の感情を排した、冷徹で神々しいまでの「神」の片鱗が姿を現す。ケイデンスはその威圧感に、思わず息を呑んで一歩後退った。


「いいか、お嬢さん。そして団長殿。ここで見たことは他言無用だ。…………と言っても、この惨状の中でまともに正気を保って現場を見てたのはお前ら二人くらいだろうから、大丈夫だとは思うがな。俺はただ、静かに旅を楽しみたいだけなんだよ」


空は周囲に転がる、意識を失った騎士や冒険者たちを一瞥した。


「……承知いたしました。ローゼンスの名にかけて、貴方の秘密は守ります」


エレアが即座に頷き、ケイデンスもまた、その圧倒的な覇気に圧されながらも「誓おう」と短く応じた。



「ですが、空殿」


しかし、ケイデンスは騎士としての現実的な懸念を口にした。



「……これほどの惨状です。精鋭騎士団の半数が倒れ、Aランク冒険者までもが戦闘不能。さらに、デュラハンが現れ、そして消滅した。王国に帰還すれば、必ずや『何があったのだ?』『誰が倒したのか?』という追及が始まるでしょう。我々の証言だけでは、納得させるのは難しいでしょう……」


確かに、事実は隠せても「起きたこと」は隠せない。

空は指先で顎をさすり、適当な答えを提示した。


「……なら、あの『仮面の男』のせいにでもしておけよ。最近有名なんだろ? どこからともなく現れて災厄を狩り、忽然と姿を消す謎の強者。……そいつが偶然通りかかって、デュラハンを消滅して去っていった。それで十分だ」

「……仮面の男、ですか。なるほど、確かにその噂なら、王都のギルドも納得せざるを得ないでしょうな」


ケイデンスが納得の表情を見せた一方、エレアだけはその答えを聞いて、小さく微笑んだ。彼女の目には、目の前の空と、噂に聞く『仮面の男』の気配が同一のものであることが、分かっていたからだ。




空は周囲に広がる死体や負傷者――騎士や冒険者たちの姿を見渡した。


「それにしても、このまま進むのは忍びねぇな。後始末も兼ねて、少し『整理』しとくか」


空は虚空から再び、黒檀の艶を持つ長弓と白銀の光を放つ矢を取り出した。

エレアとケイデンスが見守る中、空はその弓を天に向かって、力強く引き絞った。


「他言無用だと言ったな? これから見ることも、その内だぞ」


放たれた一本の光の矢は、峡谷の狭い空へと吸い込まれていった。

そして、大気圏に達した瞬間。

矢は無数の小さな光の礫へと分裂し、雨のように峡谷全域へと降り注いだ。


――《極光の散華(ステラ・パナケイア)


その一つ一つが、倒れ伏した騎士たち、息絶えた冒険者たちの胸へと正確に突き刺さっていく。


「なっ……!?」


ケイデンスが驚愕の声を上げた。

光が突き刺さった場所から、見る間に傷が塞がり、失われた四肢が再生し、絶命していたはずの者たちが、大きく息を吹き返したのだ。


「……死の運命を書き換えた、というのですか……?」


エレアが震える声で呟く。


「少し記憶は弄らせてもらったが……。まぁ、『絶望的な状況で、何者かに救われた』くらいの認識で十分だろ。……最後まで役目を果たせ。死ぬのはまだ早い」


空の声は、眠りから覚めようとする者たちの意識に、静かに浸透していった。



空は弓を消すと、再び元の、どこか抜けたような冒険者の表情に戻った。


「詳しいことは王都に着いてから考えろ。今は早く、こんな湿気た場所を抜けるのが先だ。ほら、エドガー、トビー! 行くぞ!」


後方から駆け寄ってきたエドガーと、まだ腰が引けているトビーを伴い、空は何事もなかったかのように最後尾の馬車へと戻っていった。





その頃、峡谷の断崖の上。


「……が、あ……」


盗賊団の頭目ガッシュは、地面に顔を伏せたまま、ようやく意識を取り戻そうとしていた。


デュラハンが放ったあの死の咆哮。それによって、ガッシュを含めた一味の全員が、なす術なく気絶し、崖上に転がっていたのだ。


「……っ、が、は……ッ!……おい、お前ら、起きろ! クソッ、何が起きたんだ……」


ガッシュがよろよろと立ち上がり、崖下を見下ろす。

そこには、自分たちが待ち望んでいた凄惨な光景が広がっているはずだった。馬車は破壊され、騎士たちは食い散らかされ、お嬢様を容易く連れ去れる絶望の光景が。



だが。


「……は? 何で、あいつら動いてやがるんだ?」


ガッシュの目に映ったのは、整然と隊列を立て直し、再び進軍を始めようとしているローゼンス家の馬車列だった。デュラハンの姿はどこにもなく、死んでいたはずの騎士たちが何事もなかったかのように馬に乗っている。


「嘘だろ……何が起こった!?あんな化け物がいたんだぞ!? まさか、倒されたのか?」


ガッシュの顔が、怒りと焦燥で赤く染まる。


「まだだ……まだ終わっちゃいねえ! 奇跡だか何だか知らねえが、あいつらが油断している今こそ――」


ガッシュが仲間に号令をかけようとした、その瞬間だった。


――ヒュッ。


上空から、一本の光の筋が降りてきた。

それは、空が先ほど空中に放った矢の一部。

救済の光ではなかった。悪しき意図を持って崖上に潜む者たちに向けられた、静かなる「審判」の矢。


「……え?」


ガッシュが異変に気づいた時には、すでに遅かった。

ガッシュが自分の胸を見下ろすと、光の矢が音もなく自分の胸を貫き、心臓をえぐり取っていた。それは物理的な矢ではなく、空が空中に放った魔法の「残響」――悪しき意図を持つ者だけを選別し、死を執行する審判の矢。


「お頭……? ど、どうし……」 


部下たちが駆け寄ろうとした瞬間、彼らの頭上にも同じ光の雨が降り注いだ。

悲鳴を上げる暇も、自分たちが死ぬ理由を理解する猶予も与えられない。痛みはない。ただ、冷たい氷のような感触が全身を支配していく。


ガッシュの薄れゆく意識の奥底に、ひどく冷徹で、透き通った声が直接響いた。



『――正者には癒やしを。悪しき者には死を。お前たちの席は、もうこの世にはない』


「あ……が……」



ガッシュは、自分が何に触れてしまったのかも理解できぬまま、絶命した。

彼の遺体、そして盗賊団全員の骸は、まるで最初から存在しなかったかのように峡谷の闇へと滑り落ちていく。


崖下の魔物たちが、新たな「餌」の匂いを嗅ぎつけ、影の中から音もなく現れた。

明日になれば、ガッシュたちがこの世に存在した証拠は、何一つ残っていないだろう。

峡谷を抜ける風が、すべての汚れを洗い流すかのように吹き抜けた。



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