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無冠の星間皇帝  作者: 天瀬航
第一章 名もなき機体と漂流者

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第23.5話 機体・人物紹介① 第一章の機体と仲間たち

※第23話までの内容を含む紹介回です。

【ソヴリン・ゼロ】


 レンが目を覚ました時に乗っていた、製造元も来歴も分からない黒い機動兵器。


 型式:不明/全高:23.6メートル/質量:96トン。


 当初は《ラグナ》の記録上で《アンノウン》と呼ばれ、後にレンが《ソヴリン・ゼロ》と名づけた。


 機体の仮登録名は決まったが、所有権が公に認められたわけではない。


■外見と操縦


 濃紺に近い黒い装甲と、青白く光る輪郭が特徴。胴体は細く、頭部は割れた王冠のような形で後方へ伸びている。背中には六枚の細長い板があり、向きを変えて噴射することで、機体の姿勢や進む方向を調整する。


 脚の先は、元々三本の爪に分かれていた。第23話の戦闘で、右脚の爪を一本失っている。


 操縦席は胸部にある。二本のレバーと足元のペダルに加え、操縦者の意図を神経信号から補う接続を使う。


 レンが進路や攻撃の最終判断を行い、ルミが候補の計算、姿勢制御、推力配分などを担当する。


■反射補助エコー


 観測した情報から、最大0.4秒先までの動きを予測する機能。


 複数の候補を半透明の像で表示する。確定した未来を見る力ではなく、表示された候補からどの動きを選ぶかはレンが決める。


 数秒先まで青白い線で示す「通常航法予測」とは別の機能。通常航法予測は移動経路を計算し、《エコー》は直近の動きの違いを予測する。どちらも観測情報が変われば、予測が外れることがある。


■未記載路ブランク・パス


 通常の星間航路で必要となる《門標》を使わず、短距離の航路を形成する機能。


 第3話では、輸送艇ごとの離脱をレンが選び、機体と輸送艇を0.08光年先へ移した。


 最大形成距離は0.2光年。ただし、行きたい場所へ自由に跳べるわけではない。初使用時に安定して形成できた候補は、一つだけだった。


 ほかの船を伴うには、船体全体が通れる開口を作り、互いの動きを合わせる必要がある。


 到着先の安全も完全には保証できない。


 使用後は機体出力が大幅に低下し、続けて使うことはできなかった。


■収束粒子槍ピン・スター


 右前腕に内蔵されていた射撃武装。


 細い一点に粒子を集中させ、装甲を貫く。名前に「槍」とあるが、手に持って突く武器ではない。


 一射ごとに三秒の照準冷却が必要で、その間は次の射撃ができない。巡洋艦の装甲を破るには、同じ箇所へ複数回命中させる必要がある。


 戦闘では、海賊小型船の主推進器を止めるために使用した。


 第23話で右腕とともに失われた。


■構造換装ブランチ


 第23話で初めて確認された、機体の構造を組み替える機能。


 右腕の装甲と内部部品を再配置し、一発だけ撃てる長い砲身を十一秒で形成した。


 レンは巡洋艦の主砲を支える部分を撃ち、主砲の向きをそらした。これにより《ラグナ》と輸送艇への直撃を防いだが、発射の反動で機体の右腕を失い、胸部の損傷も広がった。


【ラグナと作業機】


■傭兵船ラグナ


 型式:MSC-286R/全長:286メートル/質量:28,000トン。


 ガレス・ロウが船長を務める、赤錆色の楔形の船。


 格納庫に機動兵器を最大四機収容でき、船外の救難架には損傷した輸送艇を固定できる。牽引索による回収と、船内での治療・整備に対応する。


 レンと輸送艇を漂流状態から救助した。海賊戦では、輸送艇を固定したまま乗員と避難者を守り、戦闘後は追撃よりレンの回収を優先した。


 軽粒子砲二基と近接迎撃砲四基を備える。自衛と救難のための船であり、大型巡洋艦との正面からの砲撃戦は苦手。


■標準作業機ドックハンド


 型式:CV-8/全高:14.6メートル/質量:64トン。


 レンがデブリ撤去の際に使った作業機。黄色い箱形の胴体を持ち、その任務では右腕に金属爪、左腕に切断機を装着していた。武装はない。


 神経接続を使わず、ルミによる操縦補助も受けていない。レンは自分で操作し、人質となった作業員を海賊の牽引索から解放した。


【第一章で登場した機体】


■RV-12J《ホワイト・ステップ》


 全高:16.2メートル/質量:76トン。


 金級傭兵ジン・ハオが、第一章の海賊戦で使用した人型機。《ローバー》系列の軽量改修機で、白い装甲に細い手足、平らな肩を持つ。レンが使った作業機と、大きさはそれほど変わらない。


 右手の短銃と、左手で相手の銃口や船体の向きを変える動作を組み合わせて戦う。海賊艇との戦いでは、姿勢を変える噴射口を二か所壊し、主推進器を使えば外板に衝突する向きへ追い込んで、停止させた。


 巡洋艦との戦いでは小型船の武器を壊し、進路の先へ撃って回避させることで、レンが巡洋艦を狙うための射線を開いた。戦闘後は、右腕を失った《ソヴリン・ゼロ》の帰投にも付き添っている。


【レン、ルミと《ラグナ》の乗員】


■神代蓮/カミシロ・レン


 年齢:23歳/身長:175センチ。


 黒髪と焦げ茶色の目を持つ、細身の青年。左眉には幼い頃にできた薄い傷があり、笑うと年齢より若く見える。


 日本の愛知県で物流倉庫の夜勤をしていた。仕事中の記憶はあるが、次に目を覚ました場所は未知の機体の操縦席だった。


 軍事や操縦の専門家ではなく、荷崩れや荷物の動きを見てきた経験を、進路選びや救助に応用している。


 帰る方法を探しながら、この世界でできる仕事を覚え始めた。


■ルミ


 起動:7421年3月4日/表示:青白い光輪。


 《ソヴリン・ゼロ》に組み込まれた統合支援知性。


 少女に似た平坦な声で話し、機体内では青白い輪として表示される。自分自身の製造記録も、起動以前の履歴も持っていない。


 危険を数値や観測結果で伝え、安心させるために、分からないことを断言はしない。


 レンが泣いている時には、適切な慰めの言葉を見つけられないまま接続を保っていたこともあった。


■ガレス・ロウ


 年齢:44歳/身長:198センチ。


 《ラグナ》の船長。背が高く大柄な男性で、赤茶色の髭をたくわえ、片方の目は義眼になっている。


 レンを身元不明者として警戒しながらも、救難者として保護した。


 海賊に包囲された時も、レンに戦わず退避する選択肢を示し、機体を回収した船長としての責任を引き受けた。


■ミラ・ヴェイル


 年齢:36歳/身長:172センチ。


 《ラグナ》の主任整備士。褐色の肌に、刈り上げた銀髪と灰色の目を持つ女性。左腕は肘から先が金属製の義手になっている。


 正体不明の機体にも直接触れ、外からの計測で内部の異常を調べる腕を持っている。


 無理に動かせばレンの身体に深刻な障害が残り、機体の損傷もさらに広がる可能性がある。その危険性を、レンに具体的に説明した。


■トウマ・セト


 年齢:28歳/身長:176センチ。


 《ラグナ》の航法士兼会計。黒髪を後ろで束ね、丸眼鏡をかけている男性。


 星図の照合、書類の説明、費用の計算を担当する。丁寧に話すが、説明が長くなるとガレスに止められることがある。


 機体の売却契約では、代金だけでなく、売却不成立後も残る解析権を指摘した。


■ビット


 年齢:17歳/身長:150センチ。


 《ラグナ》の通信担当。低重力環境に適応した小柄な少年で、左目は金色の義眼になっている。思ったことがすぐ表情や言葉に出て、年下扱いされると不満を隠さない。


 機体映像が裏市場で売買されていることをレンに教え、現地文字を覚える練習にも付き合った。


 遠慮のない軽口が多く、レンとルミの翻訳ができる範囲、できない範囲を、実際の表示を使って確かめている。


■ソナ・ナーン


 年齢:32歳/身長:169センチ。


 《ラグナ》の船医。濃紺の髪を短く整えた女性で、こめかみから首へ白い医療刺青が続いている。


 穏やかに話すが、診療上の判断は譲らない。レンに神経接続による損傷があると診断し、再搭乗を禁止した。


 海賊戦で出撃したレンを遠隔で監視し、呼吸困難に陥ったレンを処置するための指示と帰投の要求を続けた。


■ドラン・バスク


 年齢:39歳/身長:206センチ。


 《ラグナ》の砲手兼積荷担当。緑灰色の肌と短い黒髪、太い首を持つ大柄な男性。肩の下にもう一対の腕があり、四本の腕に合わせた四袖の作業着を着ている。料理が得意。


 口数は少ないが、レンの手の震えに合わせて、食事に使う道具を替えてくれた。


 積荷経験による助言は、レンが機体の動かし方を考える際にも役立っている。


【共闘した傭兵】


■ジン・ハオ


 年齢:33歳/身長:179センチ。


 金級傭兵。長い黒髪を束ね、左目の周囲に照準用の端末を装着した男性。軽い口調で相手をからかうこともあるが、戦闘では周囲の動きと退路を見て、短く指示を出す。


 白い機体で短銃を使い、海賊艇を制圧した。


 レンの救助判断を認める一方、助けた後の退避先まで考えていなかったことを指摘した。


 巡洋艦との戦闘では射線を確保し、損傷した《ソヴリン・ゼロ》の帰投にも付き添った。


 《ラグナ》の乗員ではなく、戦闘で協力した傭兵。


【自由港で出会った人々】


■ポルカ・ゼン


 年齢:25歳/身長:162センチ。


 船の補給品から個人用品までを扱う補給商人。肩まで伸ばした橙色の髪と丸い顔が特徴の女性で、笑いながら気さくに話す。青と黄色を組み合わせた派手な上着を着て、生活用品を載せた荷車を押してやって来る。


 おしゃべりで、商機を見つけるのが早い。必要のない物まで売りつけず、素材の分からないスーツに商品を使ってよいか尋ねられた時も、安全だとは言わなかった。


 文字を読めないレンのために、品名や価格を読み上げられる商品一覧を用意した。その不便を一人だけの問題とせず、ほかの客にも役立つ売り方へつなげようとしている。


■ラクス・ベル


 年齢:57歳/身長:181センチ。


 航宙契約局長。青黒い肌の水棲派生人類で、首に呼吸襟を着けている。落ち着いた身振りで話すが、契約と許可の範囲は曖昧にしない。


 レンに対して傭兵として働くための条件を説明し、ガレスの監督下で行う仕事を提示した。善意があっても、損害を補償できるとは限らないと教えている。


■テオ・マルク


 年齢:45歳/身長:178センチ。


 マルク商会の会長。華奢な体格で、濃茶の髪を横へなでつけている。黒に近い紫の上着には、袖口と襟に細い銀飾りがあり、皺や汚れが見当たらない。


 柔らかな口調で《ソヴリン・ゼロ》の売却を持ちかけた。所有権の確定を条件とする契約には、売却が成立しなくても残る永久解析権が含まれており、レンは同意しなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


第一章は、今回の紹介回で一区切りとなります。

次回、第24話から第二章が始まります。


引き続き、物語を楽しんでいただけたらうれしいです。

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