スタイルの違い
2月某所。小さい子どもが遊ぶような公園で男二人。
「約束通り。」
「初心者らしく、真面目だねぇ。」
お互いの装備を視認しての一言だ。
親友の装備は大きな径口をもつ銃、ショットガンぽい。
「いいだろ、こいつのおかげで戦闘戦歴は勝ち数が上だ。」
「だがしかし、ここで土に倒れろ。」
「そっくりその言葉を返す。」
右手のバングルの対人モードをオンにする。視認できる範囲が戦闘エリアとなった。つまり視認できなければ攻撃できないが相手から見えていれば有効射撃になる状態になった。
「ルールは簡単。撃ち殺すまで。」
西部劇にあるような背中を合わせて10歩。一歩毎にカウントを数える。不意打ち防止にバイザーにも保護機能有効表示がある。
「1...2...3...4...5...6...7...7...9...10!」
向き合った瞬間、お互いの身体は正面を避ける横飛びから始まる。正確には親友は10のカウントで俺を見ずに適当に発砲した。
脚をかすめたと、ライフゲージは減っていた。
「くそ、雑すぎたか。」
つまり初手殺しに失敗したみたいだ。ショットガンの欠点はリロードが長い。つまりチャンスだ。
訓練は活きた。回避しようとする身体の太もも辺りは13発の銃弾を受け入れている。ここでリロードした。
次の弾を数発撃つ頃、向け合った銃口でお互いのライフゲージは0だった。
「「引き分けかよ。」」
一度対人モードを切り、ベンチで休む。今回の戦闘で10クレジットの取得、Cz75の弾丸1発を得たと表示がある。
「おまえ、優遇を持ってないか?」
親友があきれたような解せぬ表情で聞く。
「SSRが優遇なのか?」
「マジ?あんなに命中させられないのはそれか。こっちは拡散度合いの上昇、つまりSRの集弾度の悪化による命中率向上がメインだぞ?」
しばらく沈黙が続くと、なにか閃いたのか、
「なぁ、接射してお互いのスキルを譲り合わないか?」
「もしかすればなんだが、レアリティーの高いスキルほど的は小さいんじゃ無いか?」
再び沈黙は続く。自分で言ってなんだが、ありえなくない。むしろ肯定せざるを得ないほどの実感はある。
試しにCz75を構える。
耳元でスキル取得モードに移行しますと無機質な音声が流れた。バイザーの側面が遮光され、遙か先に大きな回転する板があり、一つの風船が高速で動いている。
「回転盤のアレに当てるのか。」
構えを解くと、10秒以内に構えなければ中断します。と表示。つまりは腕前が無ければ取得できないみたいだ。
親友も同じ状況に、
「こっちは数枚の穴あき障害を狙うって、萎えるわ。」
と、一言漏らすのみだった。
どうやらスキルによって難易度が変わるみたいだ。
スキルが反映されるのであれば、全て外せばどうなるか。再びCz75を構える。
回転盤は無く。小さな的に単純に貼り付けられた風船が揺れていた。
「スキルを外せば条件が変わる?いや、良い情報だけどもさ。」
親友は当てる自信などない。こっちの的はスーパーボールほどだ。
「無理だ、スーパーボールほどの大きさを抜くなんて!」
「諦めるんだな?よし。俺は対人を繰り返してスキルを増やす。」
親友との距離はさらに近づくことは無かった。
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となりの市にサバゲーのフィールドがある。そこが「World Lost World Order」の企業公認戦場として提供始めたと親友からそのホームページのリンクをメッセージに貼られて知る。
一つの戦場の大きさは中学校の体育館ほど。ゴルフ場の跡地を買収して建てられ、廃墟に近い石の衝立が立ち並ぶよく出来た場所。地面は砂利が敷かれており、歩けば音が鳴ることが想像出来た。
最大5対5の戦闘ができる様にブースが作られている。1試合20分につき一人5000円。カラオケボックスのようなこぢんまりとした受付には数人の人が居る。決して安くは無いが、ヘッドセットの貸し出しも行われており、意外にも人気だった。
この戦場を提供している施設では現金で「World Lost World Order」の追加DLC、つまり優遇武器を所持できる。
レンタルできる『BARLE』にはDLCの全ての武器が実装済み。ただし、1時間7000円となかなかに強気な値段であるが。
腕のバングルさえあれば、ヘッドセットはどれを使っても同じということもここで知る。時々、当たりと呼ばれるバングルがあるという噂も聞こえた。
さて、列がはけて俺の番。
「ようこそカッパーフィールドへ。レンタルセットは1時間7000円で1枚のサービスチケットが付属します。別個バングルのみの購入も5000円で可能です。もし、バングルをお持ちであればヘッドセットは1時間2000円で貸し出しします。一試合ごとに遊戯チケットを切りますのでどうぞお買い求め下さい。」
「チケット3枚、ヘッドセットのみの貸し出しをお願いします。」
「料金はサービス料や各種税込みで19500円になります。」
正規セットをどれだけ用意しているのだろうか。その裏側はさぞ恐ろしいことになっているのだろう。
「確かにお預かりしました。ヘッドセットはこちらをご利用下さい。」
とレシートと三枚の樹脂製チップをもらい、ヘッドセットの接続ブースに進む。混線しないように電磁シールド処理がされていた。
【チュートリアル経験済み新規バングルと接続します...】
【接続しました】
何も設定すること無く接続は終わる。フリー待合でチーム抽選も行われているみたいだから登録する。
装備はあの銃、スキルのままだ。
「おい、無課金初心者が居るぞ。」
「じゃぁ、スキルは期待できないな。」
目立つようにしゃべる高校生を無視して抽選結果を待つ。
【抽選が開始されました。】
【第二フィールド 青サイド】
【10分後に開始します。】
表示は淡々と行われると、集団で動き出す。第二フィールドの青。この表示だけは待機ブースに付くまで消えなかった。
5人入ってきたが、武器で初心者だとあざ笑った高校生達は参加辞退をおこなっていた。この次点で3対5が確定する。
「勝利クレジットと目当ての糞ガキめ。」
戦闘服を身につけていた中年男性が小さな声ではあるが、聞こえた。
「ネームは不要よね。臨時チームだもの、個別撃破で。スキルはエコー。索敵寄りよ。」
スエット姿の妙齢女性がスキル構成を伝える。
「じゃあここのDLC、アサルトライフルが良さそうだな。」
「対人初心者です。精密な射手を持ってます。」
「ルールは殲滅だったよな。」
「そうよ。まぁがんばって。」
「公開スキルは【強弾】【50%】【ハック弾】つまり散弾的アサルトだ。俺より前に出るな。打ち抜く。」
「さっきも言った通り、【エコー】【跳弾】【50%】よ。」
「すみません、50%とは何ですか?」
「そうか。知らないか。50%の確率で自動回避するスキルだ。」
非公開枠には回避の達人、公開枠には精密な射手をセットし、
「命中させる自信はそこそこありますが、公開できるスキルは【精密な射手】しかありません。慎重にプレイします。」
「ま、気兼ねなくやろうや。」
【フィールドが解放されました。侵入して下さい。】
【1分後、対戦は開始されます。】
バイザーの端に残り秒数が赤文字で表示される。はめ殺しの扉が開くのを待つ。
「よし、刈るぞ!」
「おー」
男性の鼓舞につい反応してしまった。
扉が勢いよく開く。勢いよく3人は飛び出した。




