おい!
「おおっ、ついにお二人が姉弟なのに付き合ってる事をカミングアウトするんですね!」
「なんでだよ!」
「なんでよ!」
燈色が驚愕の表情を浮かべながら言った一言に、俺と姉貴は同時に突っ込んでいた。
「いえ、冗談ですよ冗談」
こいつのは本気なのか冗談なのかわかんねーんだよ・・・。
「それで、私は何故呼ばれたのでしょう?」
「わからん」
なあ、普通わかんねーよなあ。
「ギルドにとって重大発表をするのに、真司が全く役に立たないからに決まってるじゃない」
「いやお前、別に重大でもなんでもねーだろ。みんなの反応なんて「あ、そうだったんだ」とか、そんなもんだぞ」
「そんなわけないじゃない!普通姉弟なのに付き合ってるとか思わないわよ!」
「里奈さんは、これが普通じゃないって自覚はあったんですね?」
「ちょ、一般論よ一般論!」
俺と燈色に突っ込まれて、里奈はたじたじになっていた。
いやあ、ムキになってるこいつをからかうのは面白いぜ。でもこれ以上やると、俺に被害が来そうなので、この辺にしておこう。
「あれだろ?なんか、一人で反応見るのが嫌なんだろ?それで燈色と一緒にって話じゃないの?」
「ま、まあ、私一人でも全然平気って言うか、余裕なんだけどぉ、燈色は私達の事をギルドで知っている唯一のメンバーだし、この瞬間を見届ける義務があるのよ!」
そう言いながら「びしっ!」と燈色を指さす里奈。
「はあ」
「とにかく!燈色と真司も一緒に見るの!わかった!?」
「へいへい」
「了解です」
俺と燈色は適当に姉貴の宣言に相槌を打っておいた。
「よーっし!じゃあいくわよ!」
そう言いながら里奈は、パソコンの前に改めて座りなおす。
実はすでにゲームにはログインしており、今はちょっと離席中になっている。なのでこれから「ただいま~」と戻り、そして例の実は姉弟でした宣言をするんだ。
俺は里奈程には緊張したりはしていないんだが、一応みんながどんな反応をするのは気にはなっている。
「皆なんて言うんだろうなあ」
「私もそこだけはちょっと気になります」
よくも今まで騙してたわね!みたいな展開にはならないと思うんだけど、じゃあどうなるのかって言われると、思いつかないな。
「まあ、「あ、そうだったんだ?」くらいのもんじゃね?」
「そうですね。私もそう思います」
だよな。衝撃的な展開になったりは、まあありえんな。
「そ、それじゃいくわよ!」
「お、おう」
やばい、なんか急に緊張してきた。こいつがずっと緊張してるもんだから、俺にも移ったんじゃねーのか?
エリナ「ただいまー」
団長「おかえりー」
アッキー「お帰りエリナちゃーん」
千隼「おっかおか~♪」
ライデン「ちゃーっす」
みんな戻って来た里奈に、それぞれのリアクションを取っている。なんか文字からでも、それぞれの性格がでるよな。
エリナ「えっと」
団長「どしたの?」
エリナ「あのですね、ちょっと皆に話があります」
アッキー「え?何々~」
千隼「え、なに?どうしたのエリナちゃん」
里奈の言葉に次々に反応する自由同盟の皆さん。そして次の里奈の言葉をじっと待つ。
・・・・・・・・・・・
団長「えっとエリナちゃん?」
ついに団長が我慢できずに話しかけて来た。
「おい里奈、お前何1分も黙ったままなんだよ!」
そう、こいつは発表があるって言ってから、1分近く黙ったままなんだ。
「いやなんか、やっぱ怖くなってきて・・・」
「あほか!発表があるって言ってるんだから、もう言うしかないんだよ!」
なんで急にへたれたんだよ・・・。
「そ、そうよね!」
「里奈さんふぁいと!」
「うん!」
なんだこのやり取りは・・・。
エリナ「えー実はですね・・・」
黙って里奈の言葉を待つ自由同盟ギルドチャット。
エリナ「私エリナは・・・」
「先輩、いよいよですね?」
「ちょっと緊張してきた」
「私もです」
思いのほか自由同盟のギルドチャットが静かなので、俺も燈色も緊張がMAXになってきた。やばい、早く言ってくれんとこっちが持たねえ。
そして、ついに里奈がキーボードを打ち込む!
エリナ「私エリナは、レベル100を目指します!」
団長「おおおおおおおっ!」
ライデン「まじかよ師匠!」
千隼「え!?エリナちゃんホントなの?」
アッキー「おお、ついに我がギルドからレベル100ユーザー爆誕?」
団長「応援するよ!」
エリナ「ありがとう団長」
千隼「私も出来ることはするから頑張ろうね!」
エリナ「千隼ありがとー」
アッキー「レベル100になったらお祝いパーティーしなきゃだね!」
団長「それいいね!また家でやろうか?」
千隼「賛成~♪」
ライデン「俺も負けねーぞ!」
エリナ「もうみんな気が早すぎだから!あーでもなんか言ったらすっきりしちゃった。今日はもう落ちるね」
団長「ほいほい、お疲れさん」
アッキー「またねーおやすみー」
千隼「エリナちゃんお疲れー」
かちっ。マウスをクリックする音がして、里奈はゲームからログアウトした。
「おい・・・」
「里奈さん・・・」
俺と燈色から呼ばれた里奈はゆっくりとこっちを振り向いて、引きつった顔でこう言った。
「やっぱ無理だって!あーもう、千隼辺りから一人ずつ言っていけばよかったー!」
里奈の奴、そんな事を言いながら頭を抱えてやがる。
「まあ、一応予想の範疇ではありました」
「そうだな」
そしてその後、あまりにもチャット欄がシーンとしてて怖かったとか、ひとしきり燈色に泣き言を言いながら自分の部屋に戻っていった。最初から俺の部屋ですんじゃねーよ。
いや、つーかさ?
あいつレベル100目指すの?
◇◆◇◆◇◆◇◆
「里奈さんレベル100目指すって本当ですか!?」
次の日、夜珍しく俺の家に遊びきた利香が、俺と姉貴に会うなりそう言ってきた。
「えっと、お前どこでその話聞いたの?」
「え?お兄ちゃんがツイッターでそう言ってたよ?エリナ師匠がレベル100目指すらしい!俺も負けねえ!って」
「まじか・・・」
「私のとこのギルド員が教えてくれたんで、結構みんな知ってるよ」
ガタタッ!
なんか音がしたんで振り向くと、話を聞いていた里奈が、柱に手をついて膝から崩れ落ちていた。
「あの里奈さん、大丈夫?」
「だ、大丈夫。うん私は大丈夫・・・」
そんな事をぶつぶつと言いながら、里奈は自分の部屋へと戻っていった。
「あの、先輩、私何か変な事言った?」
利香が不安そうな声でそう聴いてきた。
「あれだ、咄嗟の嘘は身を亡ぼすって事だ」
「は?」
利香は全く訳が分からないと言った感じの表情だ。
まあ、ちゃんとこいつには説明して、あんまり広めないでやってとお願いしておこう。
◇◆◇◆◇◆
「ダーク君!」
俺が街で倉庫整理をしていると、後ろからそう声を掛けられた。
「あ、黒乃さんこんにちはー」
「やあ、久しぶりだ」
それにしても黒乃さんは、もう絶対にゲーム内でのこのスタンスは崩す気はないらしい。
「それにしても、聞いたぞ」
「何をです?」
なんか、黒乃さんの耳に入るようなニュースあったっけ?
「エリナ君はレベル100を目指すらしいじゃないか」
ぶっ!黒乃さんの耳にまでその話届いてんのかよ・・・。
「それならそうと、この前会った時に言ってくれれば、私なりにアドバイスなど出来たものを」
いやあ、その時にはレベル100なんて全く目指してなかったんですよ実は。
んー、ゲーム内で説明するのもあれなんで、俺は電話をかけることにした。
「あれ?どうしたの真司君、急に電話なんて」
「あ、すみません。実は今の件なんですが・・・」
俺は一条さんに電話でその事について説明した。
「なるほど・・・。あー、なんか悪いことしちゃったかな・・・」
「いやいや、一条さんは全くわるくないですよ。そもそも急にへたれたあいつが悪いです」
これは事実だからな。あいつが勝手に言い出して勝手にヘタレた結果だからな。
「んー、わかった。でも、協力できることがあればなんでもするからね」
「了解っす。一条さんにそう言われたらあいつ喜びますよ」
「そっかな♪うん、よろしくね」
そういって俺は電話をきり、黒乃さんとも別れた。
まあ、これは本気でレベル100目指すしか無いだろうな。




