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俺と姉貴がオンラインゲームで付き合ってる話 続々  作者: 黒斬行弘


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24/41

罪悪感

「えっと、どうしたんだ里奈?」


 突然一条さんに謝りだした里奈に、俺と一条さんはちょっと驚いていた。


「あの里奈ちゃん、そうじゃないというのは・・・?」


 一条さんが少しだけ遠慮がちに聞いている。俺も何が「そうじゃない」のかは気になる所だ。


 これがもし、一条さんが里奈と一緒に遊びたいって言った事に対し「私は違うもん!」とかいう意味だったら目も当てられねえ。


 なんかさ、電車の感じだと気を遣わせたことについて悪いと思ってるのかな~とか考えてたんだけど、店にきてから黒乃さんと目も合わせないし、実は怒ってんの?とか考えちゃったんだよね。


 でもさっき「ごめんなさい」とか言い出すしさ、よくわからん。


「あの、違うんです。私、別に美琴さん・・・黒乃さんと遊びたくなかったとかそういう事じゃなくて・・・あの・・・その・・・」


 なんだよ、なんかすげえ歯切れ悪いなこいつ。いつもの里奈なら、もっとスパッと言ってると思うんだが。


「おい、お前一体何言ってるの?」


 俺は我慢できずについそう言っちまった。だってさっきからずーっともじもじしてるんだぜ?気持ち悪いっつーの。


「きっ!」


 すげえ目で(にら)まれた。


 なんなんだよこいつ一体。一条さんもこいつがどういうつもりなのかわからず、さっきからずっと戸惑っててんだけど。


「あの・・・」


 やっと里奈が重い口を開いた。一体何をそんなに固まってたんだろうか?一条さんはずっと黙って里奈が話すのを待っている。


「私、電車で真司から、美琴さんが私に気を使ってくれて、自分が黒乃だって事言わないでくれた事聞いたんです」


 それは確かに俺がこいつに話した事だ。一条さん、ゲーム内では男言葉であれな感じだが、本当はすげえ人の事考えていてくれる気遣いの人だ。


「それで私、あの、何と言うか、もう、黒乃さんにどんな顔して会えば良いのかわからなくて・・・」


 はあ?何こいつ、もしかして恥ずかしいやら何やらで、ずっと顔上げられなかっただけか?


「えっと、お前さ、それでずっと一条さんと目を合わせてなかったの?」


「なんでわかるのよ!?」


「あほか!お前、どれだけ下向いてたと思ってるんだ!俺でなくてもわかるわ!」


 こいつあれで平静を保ってたつもりなのか?ある意味すげえ奴だぜ・・・。


「そんなわけないじゃん!私ずっと普通にしてたもん!」


「あんな普通があるかーーー!」


「ぷっ」


 俺が里奈と不毛な喧嘩をしていると、一条さんが俺達を見て吹き出していた。うわー恥ずかしい・・・。一条さんの前でこいつと同レベルの喧嘩しちまった。


「ごめんごめん、だってなんか面白かったから」


 そう言いながら、涙をぬぐう一条さん。


 いやちょっとまて、これは笑いをこらえて涙が出てきたレベルの涙の量じゃねえ!


「あっと、あのこれ、ハンカチです!」


 俺は慌ててハンカチを渡したよ。


「ありがとう、ごめんね真司君」


 そういってハンカチを受け取る一条さん。


「あ、あの、あの、あれ、ど、どうしよう!」


 そして俺の姉はというと、俺の隣で盛大にテンパってる。普段だったらお前またテンパってるのかよ!って思う所だが、今のは俺も少し焦った。一体どうしたんだ。


「ごめんね、なんか嬉しくて」


「嬉しい・・・ですか?」


「うん、だって私、里奈ちゃんに嫌われてると思って・・・」


 ああ、さっきの里奈の態度だとそう思うよな。だって俺も思っちゃったもん。


「ち、違います!私が美琴さん嫌いなわけないです!」


 里奈はバン!とテーブルに手をついて、立ち上がりながらそう叫んだ。


「ねえ、さっきからあのテーブルの人達、泣いたり叫んだりしてるんだけど」


「もしかして、あの男二股かけてるの?」


「うわあ、大してカッコよくもない癖に、よくそんな事出来るわね」


「でもあの女の子、正面の女の子に好きとか言ってなかった?」


「えー!そういう事なの?」


 里奈の声にびっくりして、周囲を見回すと、そんなひそひそ話が俺の耳に聞こえて来た。


 こいつ、なんで大きな声で叫んでんだよあほか!


「あ・・・あの、すみません、お騒がせしました・・・」


 当の本人である里奈も、周囲からの視線に気付き、慌てて座りなおす。もうおせーけどな・・・。


「ぷっ・・・」


 一条さんを見ると、口元を隠しながら、今度こそ本気で笑いをこらえていらっしゃるようだ。まあ、結果オーライなのか?俺が一番割を食った気がするが・・・。どうせ俺はカッコよくもなんともねーよ!ふん。


 ちょっと店に居づらくなったので(主に俺が)、店を出ることにした。マスターには「お騒がせしました」と一言謝っておいたよ。そしたら、


「まあ、大変だろうけど頑張って」


等と励まされてしまった。


 一体俺は何を頑張れば良いんですかね。もんもんとした物を抱えながら店を後にした。


 一条さんの提案で、場所を近所のネットカフェに移した。フリースペースが開いていたので、そこで少し話をしたよ。


 まあ、お互いにごめんなさいとか言いあってたけどな。後はゲームの話とか、今度一緒に行く狩りの話とか。俺のレベルが幾つになっただとか・・・。


 途中から俺だけ帰りたくなったのは言うまでもないだろう。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「真司君」


 そろそろ帰ろうかと言う時に、一条さんから声を掛けられた。


「今日は本当にありがとね」


「いえいえ、今後も里奈の事よろしくおねがいしますね」


「もちろんだよ」


 そう言って笑う一条さんは、ちょっと可愛くてドキッとしちゃったよ。


「何一人前にお願いしますねとか言ってんのよ。生意気ね」


「うるせー、今日のお前に言われたくねー」


 思い当たる所がありすぎるのか、里奈の奴、ぷーっとほっぺを膨らませて明後日の方向へ「ぷいっ」と向きやがった。


 こいつにやられても可愛いともなんとも思わないが、それを見て一条さんがわらってるから、まあいいか。


◇◆◇◆◇◆◇


「ねえ、真司」


「ん?」


 帰りの電車の中で、里奈に話しかけられた。


「私さ、ギルドの皆にも、二人が姉弟だって言った方が良いかな?」


「は?突然どうした?」


 一体急にどうしたんだこいつ。今までずーっと隠し通そうとしてきたくせに、それ今更公表すんの?


「あー、えっと、今回の事でちょっと罪悪感と言うか・・・」


「ああ・・・」


 要は皆をだましているような気分になったって事か。今回の件も、もとはと言えば、こいつが姉弟だって事を隠していたことが発端だしな。それで気になってるのか。


「まあ、元々俺はどっちでも良いって言ってたからな。お前の好きにしたら?」


「何よそれ!ちょっとは真剣に考えなさいよ!」


「いやいや、だから俺はどっちでも良いんだよ本当に!だから里奈次第って事だ」


「むう」


 それから家に帰るまでずっと腕を組みながら考えていたようだ。さて、どうするんだろうなあ。


◇◆◇◆◇◆


 今日家には燈色(ひいろ)が泊まりに来ている。それだけなら、しょっちゅうある事なんだが、今日はちょっと違う。


 なぜなら今日は、俺と姉貴が姉弟であると、ギルドの皆に公表すると姉貴が決めたからだ。


 え?それと燈色が何の関係があるのかだって?


 話しはちょっと前に遡るんだけど・・・。



「やっぱギルドの皆に言う!」


「何を!?」


 こいつは、俺がベッドで漫画を読んでいたら突然ノックも無しに入ってきて、そう宣言した。なんなんだこいつは。


「何を?じゃないわよ!あんたと私が姉弟だって話に決まってるでしょ!」


「ああ・・・」


 すっかりそんな事忘れてた。


「ああ・・・って何よ、ああ・・・って!」


「いや、言うんだなーって」


「あんたにだって関係あるんだから真面目に聞きなさいよ!」


「いてー!」


 思い切り俺の事蹴りやがった。パンツ見えるぞ!


「いや、言えば良いじゃん。この前も言っただろ?」


「そうは言ってもこっちは恥ずかしいの!」


 何が恥ずかしいのか全くわからん。


「そうだ!」


「ん?」


「燈色に付いていてもらう!」


「なんで?」


「あんたじゃ役に立たないからに決まってるでしょ!」


 燈色なら何の役に立つんだろうか?俺は腹が立つのを通り越して、心底不思議で仕方なかったよ。


 そして今目の前に、PCの前で正座している姉貴と燈色を目にしているわけだ。何だかなあ。

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