11 三河家は何なのでして?
ホワイトデーの短編を公開する…かも。
当日までに間に合えば……。
オレは今、どうやら追い出されようとしているらしい。というのも、もう少し居なさいなと言われたわりにさっきから何も出てこない。水一杯も貰えない。おまけに執事っぽい少年がたまに姿を見せては睨み付けてくる。とっても好意的ではない雰囲気だ。
「……和奏様、私は帰りますね」
「えっ、ま、まだゆっくりしていってほしいわ。その、話す機会なんて滅多にないものね」
しかも、なぜか叔母さんは帰らせてくれんのだ!
なんだろう…オレ、家族ぐるみで嫌がらせ受けるようなことやらかしたか?
叔母さんはチラチラと少年執事くんや部屋の入口を見ているが、少年執事くんはそれをガン無視して、ただただオレを敵視している。居心地の悪さが最悪だ。誰か…誰か救世主よ来い!
「奥様、旦那様がお帰りです」
紺の制服に白いエプロンと身を包んだベテランらしき侍女が、三河公爵の帰宅を告げる。三河公爵ってどんな人だったかな…父上に聞いてみたときの様子を思いだしてみよう。
『三河公爵? ああ…見た目だけで判断しないであげてほしいかな。優しい人だから』
……つまり優しそうではない見た目ってことか? ダメだ、余計に分からなくなった。
「そう、今お迎えするわ。香ちゃんも是非、旦那様と喋っていって?」
「は、はあ…」
「ちょっと待ってくれる?」
叔母さんはドレスの裾をひるがえして迎えに行った。返事させてくれよ…。
「はぁ…」
「香様、少しよろしいですか」
…今度はなにかね、少年よ。オレ、凄く疲れてるんだけどな~。
「もう、お帰りになってくださいませんか」
「なぜでしょう?」
「私の主人様が機嫌を損ねていらっしゃいますので」
身勝手な。こっちは引き留められてここにいるんだっつーの、少しは考えてくれ…。つか、主人様って誰よ。
「はぁ…」
「聞いていますか」
「いえ、そもそも貴方の主人とやらを知らないんですが」
「コノハ様です」
あー、従兄弟の執事くんね。なるほど。道理で叔母さんが見つめるわけだ。破壊音してたし、息子が心配なのか。
「じゃあさ~『第二王子に会ってみない』って伝えといてくれない? オブラートに十回くらいくるんで」
許可貰えたことだしかーえろっと。疲れたから領地探索はまた今度でいっかな。言葉乱れちゃったし。
さっさか帰り支度を始めるオレに執事くんが唖然としている気がするが、どうってことないだろう。
「さよなら~」
「えっ、さ、さようなら? …あんなキャラだったっけ…」
「──────って感じで、約束まではこぎ着けられなかったらしい」
「お前は本当に令嬢と仲がいいな…まるで立ち会っていたような報告だ」
呆れ顔で玲哉は呟く。まあ仲がいいも何も『涼宮香』本人だからね。言わないけどさ。
ストローでジュースを吸い上げる。今日は涼宮公爵領地産トマトジュース。夏特有の甘さが堪らない、贅沢な一品ですぜ!
「で~、取り敢えずはウチに来るのを諦めた方がいいんじゃない?」
「『ウチに』?」
「…言葉の綾ってヤツだよ。細かいことばっか気にすると禿げるぞ」
夏の暑さは強烈で、ついつい頭がボーッとしちゃうんだよな。変なこと口走らないように注意せねば。
ところで、この世界にプールはあるのかね…あとで確認してみよう。
「そうするとコウとはしばらく会えないのか…」
「いやいや、この密会自体おかしいんだよ。なんで平民のガキが一国の王子と友達になる」
「平民が公爵家の庭で、しかもパーティーの最中にくつろいでいるわけがない。少なくとも男爵以上の地位を持つ親がいるだろう?」
…やべ、近いうちに突き止められそうだ。その前に姿を隠すべきかな。いっそ死んだと伝えるか。
背中に伝った冷や汗を隠して、取り敢えずもう少し粘ろう、あの態度悪い主従を巻き添えにして自分の保全を…と決意した。
「ま、まあそれはおいといて。分かったから待っててくれ。(何としてでも)連れ出してやる」
「ん? そうか。感謝する」
「まだ誘かい…連れてきてないけど」
「物騒なこと言わなかったか!?」
「気のせいだ」
翌日より、怒濤の『涼宮香プレゼンツ☆ボッチな王子のために従兄弟を生け贄大作戦!(笑)』が始まったのは言うまでもない。
待ってろよ玲哉、オレがお似合いの従兄弟を連行し…調教…もとい説得してやるからな!
評価してくれた方、どうもありがとうございます!
いつの間にかブックマーク件数も増えてて本当に感謝です。
頑張って書ききりたいと思います!
飽きないように…いや大丈夫かな……。




