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鷹取和希side・風変わりなご令嬢

『バレンタインにチョコがけ豆腐より』でミニストーリー公開中。

活動報告から閲覧可能。

割とどうでもいい内容かつ短いお話です。

よろしければどうぞ。

『和希様もさようなら……今日の真っ赤になってる和希様、可愛かったですよ』


 彼女の声が耳から離れない。

 俺は可愛いなんて言われて喜ぶような性格ではない。むしろ嫌がるタイプである。なのに…彼女のあの言葉に嬉しいと思っている自分がいる。なんとも不気味で───それでいて心地よい。







 この国の宰相を代々勤めている鷹取公爵家に産まれた俺は、深緑の髪と紅の瞳を持ち、実によく父親に似ていた。

 父親は出来た人で国王からの信頼も厚く、領地の経営が上手いため住民に慕われていたのだが、唯一の欠点が女運の無さだった。


 妻に迎えた女──俺の母親に当たる人は由緒ある公爵家の次女だったがとても金遣いが荒く、そして自分が何に置いても一番でなければ気が済まない面倒な女だ。世界は自分中心で回っていると信じて疑わないようなヤツは、政略結婚だというのに父親に愛を求めた。

 寝床に押しかけて無理矢理行為に及び、それにより軟禁に近い状態になるのだが、それでもめげずに愛を強請った。

 見目麗しい父親に愛されることで満たされようとしたのだろう。


 そのうちに妊娠している事実が分かり、鷹取和希、つまり俺が生まれた。

 ようやく父親が愛を囁くなんてあり得ないと理解した女は次のターゲットに俺を定めた。


 年が経つにつれ父親に似てゆく俺に希望を見いだして、女は一種の催眠を掛けた。母親を裏切らず永遠に愛し続けるというそれは呪いのようで、抵抗力のない幼い子どもは呆気なく堕ちた。

 母親を崇拝して指先に口づける子どもは異様で、父親が気づいたのは催眠が為されてから一年が経った頃だった。

 間もなく俺と母親は引き離され、母親はついに実家に帰された。

 ……それで終わればよかったのだが。


 送還された女は怒り狂った。髪を振り乱して錯乱する姿に両親はすっかり怯えてしまい、助けてくれと父親に泣きついた。

 治癒師を呼び寄せてみたり気分転換に外に連れ出してみたりと努力するもどれも無駄で、情けなく助けを求める女の両親が次第に可哀想に思えてくるほどだった。




 そんなある時、女は宗教に逃げ道を見いだした。

 怪しいブレスレットと聖書のようなものを片手に毎日教会に通う女。

 そしてそれは起こってしまった。


 父親の奨めで宰相となるために必死で机に向かっていると、身体を貫かれるかのような痛みが走り、黒い霧が雪崩れ込んできたのである。


『ヴァァァアアアアア!!!』


 発狂する俺に高笑いが聞こえた。


『あの人に似た息子が他の女と結ばれるなんて許せないィィイ!! そんなことになるくらいなら呪われてしまえェェエ!!』


 霧が収まったとき、俺はあまりの苦しさに意識を失い、一週間眠り続けた。これが九歳、三年前の出来事である。






 その日を境に全てが変わった。


 女にひたすら嫌われ、怖がられ、憎まれた。何をしたわけでもないのにメイドに毒を盛られて死にかけた。そのうち俺は女という女が恐ろしく思えてきて、ローブが手放せなくなった。女たちは俺の顔を見なければ敵意を向けてこなかったからである。女のなかでもより女らしく振る舞う女が特に強い敵意を向けてきた。






 三年後の今日。

 どうやら父親が忙しいらしく変わりに涼宮公爵令嬢のお祝いに来させてもらったが、会場入りするより前から気が気でなかった。パートナーなどいないし自分を見た貴族たちは物珍しげで不躾なまでに視線を寄せてくる。不快な視線を断ち切りたくとも全てを切れる訳ではない。早いところ令嬢に挨拶してお世辞のひとつでも与えて帰ろう。


 ところが令嬢はいなくて涼宮公爵と世間話をするはめになった。バルコニーの影で談笑している俺たちに声が掛けられたのはその時だった。


『お話し中に失礼します。お父様、少しよろしいでしょうか』


 一目見て風変わりなご令嬢だと思った。

 白銀の髪はボーイッシュに短い。ドレスはそれに合わせたのかシンプルかつ清楚なデザインをしている。何よりも俺を意識しない。大抵の女はローブで見えなくしていても怖がったり顔を歪めるのだが、この令嬢には一切ない。

 このあとの言葉も俺の興味を掻き立てた。


『…お連れの方が困っているようなので簡潔に言いましょう。疲れた、飽きた、だから部屋に帰って寝る』


 おまけに彼女は俺を知らないと言った。

 鷹取和希だと名乗れば宰相の息子かと確認され…それっきり。呪いに関して知らないのかも知れないがあまりに適当な態度で、とにかく眠たそうだった。

 涼宮公爵が俺をエスコートしてくれと頼めば目を輝かせ、ローブを取れと言ってくる。断れば不審者とはいたくないから離れろ。

 視線が怖いと弱音を吐けば、


『視線が怖いのなら貴方の全てを奪って他のものが気にならなくしてしまおう』


 俺よりも遥かに男らしく格好いい令嬢だった。予告通り俺の体力と集中力を踊ることで奪っていった彼女は目的を達成したと満足げに笑った。

 極めつけに冒頭の言葉だ。







「うちの娘はどうだい?」

「……素敵な令嬢ですね」


 お世辞ではなく心からそう思える。本当に…彼女は素敵だ。涼宮公爵が溺愛しているというのも頷ける。


「優しくて…綺麗で…」

「おや、もしかしてうちの姫は君を撃ち落としてしまったのかな?」


 撃ち落とされて…?

 そう、かもしれない。俺の鼓動はどくどくと音を立てて、彼女を追う視線は未練たらしく、遠ざかる彼女に胸が痛む。

 これは多分、そうなのだろう。


「……涼宮公爵……俺は、彼女の婚約候補に入ってますか?」

「…どうだろうね」


 いたずらっ子のように笑う公爵にちょっとした殺意を抱いてしまうほど、俺は彼女に夢中になってしまったらしい。









 ◆◆◆




 俺を怖がらない、男勝りなご令嬢。


 彼女を手にいれたい。





 俺はこの恋をなにがなんでも成就させると誓うのだった。






ターゲット・ロックオン。

和希の年齢は後々変えるかも。

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