8)選ばれし者の地へ
今回の事件があってからマノンも俺も自分のスキルをどう磨くか必死だ。
今日はオプシディアン領にある王立図書館にマノンと出かける。
伝説のレミニセンスとキラーなるものに関して調べる為だ。
「さすがにオプシディアンの町は人が多いね」
「王都だからな」
「あ、あれよ、あそこが王立図書館」
「すっごいでかいんだな」
「2000万冊の蔵書があるらしいよ」
2人はまるでパルテノン神殿のようなオプシディアン王立図書館に入った。
「さて、スキル関係の本はどこだ?」
調べると地下の一般は入れない場所だが、領主に申請届けを書いてもらったので、無事入ることができた。
ものすごい本の量だが、マノンはてきぱきと必要な本を探している。
「知輝、これみて」
「ん?伝承が書いてある本か?」
「そう、ここに書かれている天樹というのが鍵かも」
「すごい木だな、どこにあるんだ?」
「リトープス山脈って書いてあるわ」
「マノンすぐいくぞ」
「ちょっと知輝、どんなとこかわかって言ってるの?」
リトープス山脈は標高2000m級の山々が連なる険しい場所のようだ。
「もの凄く寒そうじゃないか。俺寒いのはちょっと」
「弱音はかないで。そこには選ばれし者だけが立ちることのできる伝説の桃源郷があるみたい」
「ここで必要な物は調達して、城で用意しよう」
俺たちは防寒着などをごっそり買い込んで帰宅の途についた。
そうそうおいしいパン屋のパンも買い込んだ。
頼れって言ったでしょと2時間パン屋に並ばされたのは俺だ。
やがて出立の日
「マノンのことを頼んだぞ」
イケおじの領主アンリはちょっと泣きそうな顔をしながら、俺に手を差し出したが、この記憶を見るのは回避したくて、ひざまづいて「おまかせください」と応えた。
母親のミュゲと弟のマクシムは笑いを我慢しながら「元気で」と手を振ってくれた。
さて、俺とマノンを乗せた馬車と荷馬車2台。それに騎馬隊の総勢15名のリトープス山脈行きキャラバンは城を出発した。
リトープス山脈のふもとまでは順調でも10日もかかる。
悪天候やトラブルがないことを願いながら出発した。
途中の道で山賊に出くわしたが、今回のマノンは魔法耐性のあるローブで身を守り、サクッと討伐。その後俺が記憶を読んでアジトを一掃。
今回は必殺の狙撃手や神官など頼れるメンツも揃っているから安泰だ。
貧しさゆえ悪に手を染めるという課題は後に解決するとして先を急いだ。
「しかし野営は楽しいな」
赤く燃える焚き火にあたりながら温かいシチューをいただくと冷えた身体に沁みた。
空には見たことのない星座が煌めいている。
そして11日目、ついにリトープス山脈のふもとの村に辿りついた。
宿で身体をやすめたら山に入る。
リトープス山脈に登ろうなんてものは何人いるんだろう?
「道がないぞ〜」
「当たり前じゃない、秘境なのよ」
「元輝様、マノン様わたくしにおまかせください」
「ウィンドスラッシュ」風をスキルに持った騎士が木をなぎ倒して道を開いていく。
「げっ、環境破壊で訴えられないのか?」
「元輝様早く!進みますよ」
地球だったら大問題だよなと思いながら前に進んだ。
陽も暮れるとかなり寒い。
「今日はこの辺で野営しましょう」
風のスキルのベッカーが全員が休める場所を作り出した。
道を作って進んでは野営を3日程続けた後、なにか暖かい風を感じた気がした。
「ちょっと高台に登ってみよう」
自力で森を抜けて少し開けた高台に駆け上がると、
眼下に拡がるのはこの森とは様子が違う、青々とした木々が生き生きと枝を広げる大地。
「おーいみんな。あそこが伝説の桃源郷じゃないか」
崖を降りながら久しぶりのワクワクという感情を思い出していた。




