14)消された記録を辿って
ベルクソエル城の地下の一室を拠点に召喚の闇を暴いていくことになった。
領主が神妙な顔で水瀬に声をかけた。
「水瀬殿、申し訳ない目にあわせてしまった。ここに謝罪する」
「今更いいよ。小早川がきてくれなければ、のたれ死んでたかもだな。感謝するよ」
初めて水瀬がお礼を口にした。
「水瀬さん…」マノンが目に涙をためている。
ノクスは「知輝のスキルは一部のものしか知らないから、俺たちがサポートして神殿潜入しないか?」と言い始めたが、
知輝は「俺1人で乗り込んだ方がいい」と突っぱねた。
と、ふと思いつき「スキルを隠蔽する魔法なりなにかないかな?」
「俺たちは騎士団で情報を聞いてくる」と言ってベッカーとノクスは出て行った。
「水瀬、魔道具見に行かないか?」
「魔道具ってなんだ?」
「面白いからついてこい。マノンはここで待機しててくれ」
「わかったわ。2人でいってらっしゃい」
久しぶりに魔道具屋の扉を開けた。
「久しぶりだな」
「マテリアルライズを買って行ったお客さんか、役立ったかい?」
「覚えててくれたのか」
「そりゃレアスキルのお客さんだからな、お連れさんは初めてだな」
水瀬はこれは何に使うのか?といろいろしつこく聞きだした。
これはもう止まらないなと途中で口を挟んで、
「店主、スキルを隠せる魔道具なんてないかい?」
「そうだな、擬装のリングがお勧めかな。ただ違うスキル判定されるので、そのスキルを求められるとめんどうじゃぞ」
「その辺を誤魔化すのは俺らにかかったら一発だな。なあ水瀬」
「そうかな。俺はバレそうだけど」
「おまえの方が得意そうだよ。店主俺とこいつの頼む」
「毎度ありがとうございます」
「なあ小早川、このスピード付与欲しいんだけど、それとこれこれ」
水瀬はおもしろい魔道具に釘付けだ。
「もう、スピード付与だけだぞ」
「ケチだなあ。この水をよぶカップもいるだろ〜」
「あんた達仲良いんだな」
俺と水瀬は同時に首を振って「そんなことありません」と声を揃えて叫んだ。
「シンクロしてるぞ」
店主もは大笑いしている。
魔道具屋を出て、飯屋に入った。
「この世界の飯よくわかんないから任せるよ」
「鉱山ではなに食ってたんだ?」
「毎日犬の餌みたいなのしか出されなかったよ」
「ひでえな。人権侵害じゃないか」
「まあ、訴える相手いなかったからさ」
酒が入ると水瀬は饒舌になってきて、前の世界のことや鉱山の話で時間が過ぎた。
「おまえ、騎士団に戻るんだから飲みすぎるなよ」
「前の世界でもみんな忙しいからめったに飲み屋もいかなかったし、なんか楽しくてさ」
水瀬って強がりだけどほんとは寂しがりなのかなと、ちょっと心がぎゅっとした。
ちょっと遅くなったが地下の拠点に戻るとみんな揃っていた。
「2人ともお酒くさい」マノンが嫌な顔をした。
「マノンちゃん、はいお土産」
店で包んでもらった焼肉を広げるとみんな大喜びだ。
「それでいい魔道具はあったの?」
焼き鳥を頬張りながらマノンが覗き込んできた。
一息ついたところで、例のスキル調査器を用意してもらった。
「じゃあ先に俺がやるぞ」
知輝が手を置くと一部が生活系の薄い青で反応した。
「う〜ん、これは物をほんのり温めるとか保温とか消臭かな」
次に水瀬が手を置くと、やはり薄い青緑系で
「これも生活系で濡れた布が少し乾かせるとかかな」
知輝と水瀬がグッドなポーズをして大笑いしている。
ノクスは「魔道具の威力ですか?」と目を見開いた。
「そうだよ、この指輪のお陰さ」知輝は太い金色に赤い宝石が飾られた指輪を見せた。
「水瀬とお揃いは嫌なんで、こいつのはこの銀の指輪だよ」
「俺だっておまえとお揃いなんてまっぴらごめんだ」
「2人とも仲良しさんだな」ベッカーが些細なことで喧嘩する2人を笑っている。
「俺、ベッカーとならお揃いでいいよ」
「水瀬うるさいっ」
みんな大笑いだ。
ベッカーとノクスが調べた魔道士の力では、魔力を使用していることががバレてしまう可能性があるので、隠蔽能力がある指輪が採用された。
「それでスキルを隠してどうするんじゃ?」
みなを見守っていた領主が不思議そうな顔で質問した。
「俺たち2人でもう一度スキル調査に行くんです。でもたいしたスキルじゃないので適当に帰そうとすると思うんですよ」
「そこで粘るのか?」
「はい。他の召喚者に会いたいとか、覚醒したらすごいとか」
「危険だが大丈夫か」
「はい。指輪をとれば最強ですから」
「ねえ知輝、知樹は結局スキル調査器では謎の赤のままなの?」
マノンが不思議そうに聞いてきた。
「試すかい?」
「見たいな」ノクスも興味津々だ。
調査器に手をのせると全体に赤で点滅した。
「あっ、これは」担当者が声をあげた。
「これは危険なスキルという反応ですよ、運良く検査官が知らなかったのでは」
「そうゆうことか、ラッキーだったな」
お陰で神殿側には知輝の情報は漏れていない。
翌日、騎士団が捉えた召喚者という体で、2人はスキル申請局に向かった。
ベッカーとノクスは2人を捉えた騎士ということで同行した。
申請局につく前に俺と水瀬は縄で繋がれ、いくぞと気合いを入れた。
「ちょっと左手が痛いぞ」
「水瀬少しだから我慢しろ」とベッカーが呆れている。
「第一騎士団のベッカーだ。こいつら昨日、街で喧嘩をしていて捕まえたんだが召喚者らしく、資料が見たい」
元から削除された水瀬のものはなく、元輝はランク外の記載があった。
「俺たち召喚されたのに放り出されて冗談じゃない」
「たまたまこいつと知り合って、2人で騎士団に文句言ってたらこのザマさ」
「元の世界に帰してくれよ」
「住むとこもないんだぜ」
ベッカーが縄をぎゅっと掴み上げて
「おまえら静かにしろ。これ以上騒ぐと牢屋に入れるぞ」
ベッカーノリノリだなと顔を見ると勝ち誇った笑顔をしてる。
「召喚者は神殿管理と聞いているが、こいつらをなんとかしてくれないか確認してくれ」
「少々お待ちください」
召喚門の調査官は20分ほど帰ってこなかった。
「ロングヘアのにいちゃん、コーヒー飲みたいんだけど〜」
「俺も飲みたい、持ってきてよ」
暇つぶしにベッカーをいじって遊んでいたが、ベッカーの20分は長かったろうなと可笑しかった。
やがて調査官が急いで帰ってきた。




