13)新たな能力者
知輝はふらつく水瀬を介助したときに、その記憶を見てしまった。
魔石に記憶を写していると
「それなに?」
水瀬は魔石に食いついた。
「俺、人の記憶を見れるんだよ。それでこの魔石に記憶を保存できるんだ」
「あっ、俺の記憶見たのかよ。プライバシーの侵害だろ」
「これは大切な証拠ですよ」
「おまえいいな。俺もそのスキル結構欲しいな」
元輝は水瀬に回復薬を飲ませてから食事を摂らせたり、風呂に入ってもらったり大忙しだった。
綺麗な服に着替えてもらうと、がたいのいい水瀬は意外とイケメンだった。
伸びた髪をひとつに結ぶとサムライみたいだ。
本人もちょっと気に入っている。
足に嵌められていたスキル封印の足枷も外させて、
「俺の馬で騎士団までいくぞ」
「馬とか乗れないんだけど」
「まあまあ捕まっててくれよ。あ、途中で魔獣がでたら大人しく隠れててくれよな」
「魔獣…」
ニガヨモギで作った魔獣よけ匂い袋をもらったおかけで順調に進んだが、最後の宿の手前で
「グルルルルル」という声を聞いた。
「水瀬さん木の陰に隠れて。なにかあったら使ってくれ」
水瀬に短剣を渡したが、こんな時に限って5体も出現した。
「メモリーディザスター」
2体まとめて混乱させて剣で切り裂く。
なんとか3体仕留めた時
「元輝うしろー」水瀬が叫ぶと同時に飛び出して短剣で突いた。
「ナイス。あと1体だ」水瀬に感謝の合図を送った。
最後の1体に「メモリーディザスター」と叫ぶと同時に剣を振ると、剣に力が込められ、魔獣は混乱している。
そこをこんどは水瀬が力任せに投げ飛ばした。
木に激突して動かなくなる魔獣。
「はあはあ、水瀬さんすごいですね」
「柔道有段者だからな」
「怖くないんですか?」
「この状況で怖いもなにもないだろ。それよりおまえの方がすごいだろ。俺にも教えろよ」
「スキルを磨くのに努力したんだぜ」
やがて騎士団までたどり着くとマノン、ベッカー、ノクスを集めて水瀬を紹介した。
愛想のいい方ではない水瀬は「よろしくっ」と小さく呟いた。
俺は魔石に保存した水瀬の映像を映し出した。
そこにはスキル調査をこばむ水瀬が縛り上げられ、鞭で何度も叩かれる様子が映し出された。
「キャーっ」マノンは悲鳴をあげて顔を背けた。
「どうして召喚者をこんな扱いに…」ベッカーも絶句した。
「その映像を止めろ」水瀬は叫んだ。
「止めません。この国の闇を暴くために俺の仲間に見てもらうんだ」
水瀬は無言で頷いた。
その時、マノンが急いでどこかに行こうとしたので腕を掴んで止めた。
「父親のところに行くのか?」
「そうよ、こんな非人道的なこと許されないわ」
「まて、全員で行こう。ただし落ち着いてちゃんと話をするんだ」
領主への謁見許可をとって、5人で話を聞きにいった。
しかし領主はそんなことが起きていた事実は聞かされていなかった。
「侍従のエドガルドを呼んでくれ」
「領主様失礼いたします」
エドガルドがすぐやってきた。
「領主様、わたくしが聞いているのは反抗的なものは施設で過ごしていただき、納得の上、その後の行き先を決めているということです」
「誰が管理しているんだ」
「それが神殿が管理をしております」
「その後の報告はないのか?」
「はい、召喚士は教会の所属でして、定期報告では水瀬さんの名前も見たことがありません」
知樹ははたと思いついて言った。
「俺は最初のスキル申請局の検査ではっきり結果が出なかったんだ。もしあの時点で記憶がみられることがわかったら神殿が囲い込んだかもしれないな」
「知輝様のスキルはレアですが、発覚してからマノン様に出会えたのがとてもラッキーかと」
「今では騎士団所属でスキルをシークレットにしておるからな」
「水瀬殿、最初はどこに幽閉されていたかおわかりになりますか?」
「急にしらない町にきたんだから、わからないに決まってるだろ。ただ、俺を鞭で打ったやつは神父みたいな格好をしてたな」
これは簡単には解決できないなと思ったが、酷い目にあわされている召喚者を救わなければと知輝は決意した。
「みんな俺に協力してくれ」
ベッカー、マノン、ノクスは大きく頷いた。
「水瀬はまずスキルを調べようや」
「わかったよ。おまえ異世界に仲間を作れてすごいよな」
「水瀬だってすぐに仲間になれるさ。ちょっとコミュ障ぽいけどさ」
「ふざけんなよっ、殴るぞ」
悪態をつきながらも水瀬が心を開いてきているのがうれしい。
侍従のエドガルドにベルクソエル城の地下の隠し部屋を手配してもらい、内々でのスキル調査をできるようにしてもらった。
「水瀬様、ここに手の平をお乗せください」
「ちっ、めんどうな」
愚痴りながらも手をのせると一部がゴールドに近く輝いた。
担当者が「これはすごい。格闘系のスキルです」と微笑んだ。
「水瀬さんすごいわ」マノンも大喜びだ。
領主も安堵のため息をついている横で、水瀬は誇らしげな笑みを浮かべて俺の胸をこつんと叩いた。




