第六話「目覚めるもの」
地上階に出たとき、足元が震えた。
地鳴りのような振動。施設全体が揺れた。蛍光灯が明滅した。
エリカの顔色が消えた。
「……起きた」
「何が」
「あれが——起きた」
地下の最深部から、低い唸りが伝わってきた。巨大な何かが動力を得て、覚醒する音。
「ビグ・ゾック。この施設の一番奥にあるもの。全高六十メートル。私を——あれの中に入れるつもりだったの」
(六十——メートル?)
「私が逃げたから、別の方法で起動させた。この施設の人たち——強化人間の人たちを、たくさん繋いで、無理やり」
カリーナは振り返った。あの目を合わせなかった人たち。ごはんを運んでくれた人もいたかもしれない。その人たちが今——
「止められる?」
エリカは俯いた。
「……止められるよ。私なら」
「でも?」
「あの中に入ったら——出てこられないかもしれない」
ヴィンターが口を開いた。
「入るな」
「でもお兄ちゃん——」
「入るな。俺が止める」
「お兄ちゃんには無理だよ。あれは——普通の兵器じゃない」
「俺が止める。お前は逃げろ。カリーナと一緒に」
エリカはヴィンターを見上げた。
「お兄ちゃん。私ね、ずっと待ってたの。毎日毎日、この子たちと一緒に。で、やっと来てくれた」
「ああ」
「だから——次は私の番」
エリカはヴィンターの手を振りほどいた。走り出した。通路の奥へ。格納庫へ。エリカンネルたちが主人の後を追うように動き出した。
「——待てエリカ!」
ヴィンターが追おうとした。カリーナが腕を掴んだ。
「離せ」
「少尉。追いかけるにしても——このままじゃどうにもならない」
カリーナは格納庫の方を見た。先ほど通り過ぎた場所。白い機体と——もう一機、青灰色の機体があった場所。
「あそこに、もう一機ありましたよね。ゾックっていう——」
「……カリーナ。あれは——」
「乗れるんですか」
「……やったことはない」
「やったことがないのは知ってます。乗れますかって聞いてます」
ヴィンターはカリーナを見た。三日間で、この女がこんな目をするのを初めて見た。
「……乗る」
「行きましょう」




