表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾック・シンドローム  作者: Kentarou Theater


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/10

第五話「トマト・ケチャップ」


 脱出は、最初の十分だけ順調だった。


 エリカンネル五機が先行して通路を確保し、三人は地下から地上階へと上がっていった。エリカが心を通わせるたびに、ヴァンツェたちは監視カメラを潰し、隔壁のロックを解除した。


 問題は十一分目に起きた。


 施設全体に、警報が鳴った。


「——来たよ」


 エリカの声は静かだった。


 通路の向こうから足音が近づいてきた。走ってくる。複数。


 角を曲がって現れたのは、あの「目を合わせない」人たちだった。ただし今は戦闘服を着ていた。手にスタンロッド。


 その先頭に——一人だけ、違う男がいた。


 小柄。赤い短髪。そばかすだらけの顔。戦闘服の着こなしがどこか崩れている。目だけが、ぎらぎらと光っていた。


「やっと見つけた」


 男はヴィンターを見て、にやりと笑った。


「よお、No.07。久しぶりじゃねえか。——俺のこと覚えてるか?」


 ヴィンターの目が細くなった。


「……トマト」


「おっ、覚えてんじゃん。嬉しいねえ。同期のよしみってやつだ」


 カリーナはヴィンターの横顔を見た。


(同期——? この人も、強化人間——?)


「トマト・ケチャップ。被験体No.09。——失敗作だけどな」


 トマトは自嘲気味に笑った。だが目は笑っていなかった。


「失敗作は失敗作なりに、ここでうまくやってたんだよ。ゾック二号機のテストパイロットまで任せてもらえてたんだ。——なのにお前が来やがった」


「どけ。通る」


「通さねえよ。エリカを連れ戻す。それが俺の仕事だ」


 エリカがヴィンターの後ろから顔を出した。


「トマトさん。お願い、通して」


 トマトの表情が揺れた。一瞬だけ。本当に一瞬だけ、目の奥に別の感情が走った。


「……ダメだ、エリカ。俺には——」


「トマトさんも、私のお友達でしょ?」


 沈黙。


 トマトの手が、スタンロッドの上で震えていた。


「……お友達、ね」


 三秒の沈黙。


 トマトはスタンロッドを——床に落とした。


「……三十秒だけだ。三十秒だけ目をつぶる。俺は何も見なかった。いいな」


 ヴィンターはトマトの横を通り過ぎた。すれ違いざまに、小さく呟いた。


「恩に着る」


「うるせえ。——二度と来んな」


 トマトの後ろにいた強化人間たちは、指揮官が武器を落としたことで動きを止めていた。エリカが彼らの心に触れ、眠らせた。


 カリーナは走りながら振り返った。トマトが壁にもたれかかって天井を見上げていた。


(あの人も——ここに閉じ込められてるんだ。エリカちゃんと同じように)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ