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【第二章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

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人か、魔物か1

「あれなんだったと思う?」


 日が暮れ、俺たちは野営することになった。

 枯れ木を集めて作った焚き火は明るく燃え、時折バチっと音を立てる。


 みんなはそれぞれ焚き火を中心にして思い思いに過ごしていた。

 焚き火をジッと見つめていたミャルエスカがふいに口を開く。


 誰にでもなく投げかけた問い。

 その質問の意味はみんな分かっている。


「あれ、とはあの化け物か……」


 俺たちはここまで大地の記憶という魔法を用い、過去の出来事を魔力で再現したものを頼りにザイハンシを追いかけてきた。

 その途中で死にかけのザイハンシに何かが起きた。


 いや、何かが起こされた。

 キツソウがザイハンシに何かをして、まるでザイハンシがコカピヨスと一つになったかのような姿になってしまったのである。


 人間が魔物と一つになってしまった。

 この世界の知識に乏しい俺だけじゃなく、ユベーラやミャルエスカたちにとっても衝撃的な光景だったのだ。


「‘何だろうな……ただやっぱりキツソウのせいだろうな’」


 何と聞かれても正確な答えは持たない。

 しかしカリンが魔物にされてしまったことなんかから考えるに、キツソウは人と魔物について研究をしていることはまず間違いない。


 どうにかしてザイハンシとコカピヨスを一つに混ぜ合わせたのだろう。


「‘あのニワトリ人間は……ザイハンシなのか、それともコカピヨスなのか。分からないな’」


 俺は見た目完璧に魔物であるが、精神性は人間だ。

 多少魔物の意識や本能みたいなものを感じることはあれど、理性的に考えて理性的に動いている。


 対してあのピヨハンシは見た目上人間と魔物のハーフであった。

 目は血走り、理性的には見えない。


 けれども何かをぶつぶつとつぶやくようにしながらどこかへ歩き出したのだった。

 見た目はハーフだが、精神はどちらにあるのか。


「‘どっちがいい……どっちでも気持ちは悪いな’」


 中身ザイハンシでも気持ち悪いし、中身コカピヨスでも気持ち悪い。

 ただ復讐するべき相手が一つになってくれたのは楽かもしれない。


「‘ぶっ殺せばよくなったしな’」


 あんな化け物捕まえておけない。

 出会ったら殺してしまえばいいのだから考えることが減って楽になった。


「まあ何でもいい。俺たちの目的はあれが周りに被害を及ぼす前に倒すことだ」


 ピヨハンシが何者なのかは気になることだが、ユベーラたちは捕獲のために派遣されたのではない。

 確かに相手に多少の変化はあったものの、目的が討伐であることに変わりはないのだった。


「必要なら倒して調べればいい。キツソウの方を追いかけている奴らが何かを掴むかもしれないしな」


 俺なんかは頭の中が疑問でいっぱいになっているのに、ユベーラは比較的サクッと割り切った。


「ふう、まあそうね」


 ミャルエスカはため息をつく。

 特に明確な答えが出てくることは期待もしていなかったようだ。


 ラグルドはいつの間にか目を閉じているし、ボルスティは頭の上にいたニワトリを膝の上に乗せて撫でている。

 大地の記憶を見た直後は二人も困惑していたけれど、今は普通に落ち着いている。

 

 意外と四人の中でミャルエスカが一番常識的な感覚の持ち主なのかもしれない。


「帰るなら今かもしれないよ?」


 ユベーラがクリアスのことを見る。


「……いえ、このまま最後まで追いかけます」


 危険度はさらに一つ上がったような感じがする。

 でもクリアスも諦めるつもりはなさそう。


 むしろキツソウの姿も見て、カリンとの関係を感じているのかもしれない。

 だいぶ状況は違うといっても人が魔物になった。


 どちらもキツソウが起こしたことなのだから関係がないとは言い切れない。


「‘それでいいさ……俺が守ってやる’」


「ラクさん……」


 夜になると少し肌寒さも感じるような気温になってきた。

 俺は毛皮があるから寒さにも強いが、クリアスはそうもいかない。


 荷物から毛布を取り出してクリアスの肩にかけてやる。

 こうした動作も二足歩行だと楽でいい。


「紳士的な魔獣ね」


「ええ、とっても」


 契約者を気遣って肩に毛布をかけてやる魔獣は他にいないだろう。

 中身人間だからこその細やかな気遣いだ。


「魔力はどうだ、ミャルエスカ?」


「まだ大丈夫よ」


 大地の記憶だってタダでは使えない。

 魔法な以上は魔力を消耗する。


 ポップンだけの魔力じゃなくて、ミャルエスカの方も魔力を使ってポップンを補助していた。

 本当なら夜通しピヨハンシを追いかけたいぐらいだが、ミャルエスカの負担の問題もある。


「戦えなかったら困るからな。魔力の残りには早めに気をつけてくれ」


「分かってるわよ」


 もちろんミャルエスカはただの追跡要員なだけじゃなく、戦える人でもある。

 戦いたくとも魔力がなければ戦力外にしかならないから気をつけて魔法を使っていく必要があるのだった。


「明日も早くから追跡を開始する。ミャルエスカ、君は休め、代わりにクリアスさん、夜の見張り番を交代で頼めるかな?」


「分かりました」


 ユベーラはクリアスに対しても容赦がない。

 ミャルエスカを休ませ、その代わりについてきたクリアスを働かせるようだ。


 見張りの番をするのは旅の上で常識なので、クリアスも素直に受け入れた。


「では俺から見張りを始めよう。みんなは早く寝るんだ」


 熟練した冒険者らしくミャルエスカたちはサッと地面に横になる。

 クリアスも肩にかけていた毛布を体に巻いて地面に寝転がった。


 腕枕でもしてやりたいところだけど、流石にそれは恥ずかしい。

 俺もクリアスの横で寝転がってさっさと眠りについてしまったのだった。


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