表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第二章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/110

記憶を追いかけて1

「‘荷物持ちもしやすくなったな’」


 人型になって、一つ良かったことがある。

 それは人型になったことだ。


 四足歩行じゃできなかったことができるようになった。

 ウルフの時も荷物は多少持っていたが、体の作りのせいで重たい荷物は持てなかった。


 だが二足の今ならデカめのリュックだって背負える。

 少しはクリアスの負担を減らして、多めの荷物だって持っていける。


 ヘルンがいなくなった分、俺が荷物を持てばいい。


「あんたがクリアスだね?」


「ええと……」


 食料など旅の準備を一日で終えた俺たちは、冒険者ギルドにやってきていた。

 ユベーラが待っているかと思ったら、声をかけてきたのは知らない女だった。


 紫の髪色をしていて唇は黒い口紅を塗っている。

 左目の下から右目の上にかけて前髪が斜めに切り揃えられているという独特な髪型をしている。

 

 若干のロックパンク感がある。

 あまりこの世界では見るタイプの人じゃない。


 こいつもなかなか強そうで、黒い魔力の塊のような魔獣を連れている。

 精霊とかゴースト系の魔物だろう。


 頭ぐらいのサイズしかないけれど、強い魔力を感じる。


「私はミャルエスカ。ユベーラさんから話は聞いているよ」


 ミャルエスカはにっと笑って手を差し出す。


「あっ、よろしくお願いします」


 クリアスもミャルエスカの手を取って握手する。


「可愛い魔獣を連れてるね」


 ミャルエスカは俺のことを見る。

 上から下まで値踏みするように視線を一巡させた後、ウインクして軽く手を振る。


 ロックパンクスタイルは好みではないが、こんな世界でも自分らしさを貫く姿は好感が持てた。

 可愛いと褒められたし第一印象は悪くない。


「行こうか。ユベーラは先に出てるから」


「分かりました」


 俺たちはミャルエスカについていく。


「……どこ見てるんですか」


「‘あっ……ちがっ!’」


 クリアスが少し不機嫌そうに俺に声をかけてくる。

 俺は前を歩くミャルエスカのことを見ていた。


 腰の左右には細身の剣を差していて、ミャルエスカはかなりぴっちりとしたパンツを履いている。

 魔物の革で作ったのか黒く艶やかなパンツもまたこの世界ではあまり見ないもので、つい見てしまっていた。


 別にお尻を眺めていたわけじゃない。

 それは誤解だ。


 しかし言い訳する言葉も通じない。


「ふん、知りません」


「‘……はぁ’」


「まあでも珍しい格好ですよね」


「ふふ、私の服が気になるのかい?」


「あっ、ごめんなさい」


「いいさ、悪口じゃないのは聞こえてるよ」


 振り返ったミャルエスカが笑顔を浮かべる。


「私も自分の格好が珍しいとは思うけど、こういうのが好きなんだ」


「服は、ご自分で?」


 クリアスも裁縫をしたりする。

 ミャルエスカの服をどうしているのか気になったようだ。


「服作るのが得意な友達がいてね。その子が作ってくれるのさ。あんたも服作るのかい?」


「趣味程度ですけど。昔から母がよくやっていたのを真似して」


「ふーん、良い趣味だね」


 見た目よりもミャルエスカは親しみやすい。

 俺とクリアスを邪険にしているような雰囲気もない。


「ここは……」


 ミャルエスカに連れてこられたのはメルドランギルド跡地だった。

 いまだに瓦礫状態の建物が残されているものの、規制は解除されている。


 そこにはユベーラを始めとして十名ほどの人のいた。


「ではそちらは頼むぞ」


 ユベーラを含めて三人、こちらに向かってくる。


「来てくれたか。ミャルエスカはもう知ってるな。こっちがラグルド、そしてこっちがボルスティ」


 短髪で目つきの悪い男がラグルド。

 ボルスティは坊主頭で笑顔のような細い目をしている。


 ラグルドの方に魔獣の姿は見えないが、ボルスティの頭にはニワトリのような魔獣がとまっていた。


「今回協力してくれるクリアスさんだ」


「よろしくお願いします」


「よろしくお願いしますね」


 クリアスが丁寧に頭を下げるとボルスティがニコリと笑う。

 ラグルドの方は軽く目を細めただけで、笑いもしない。


「四人で……いくんですか?」


 クリアスは当然の疑問を口にする。

 一緒にいた他の行かないのか。


 コカピヨスが強力な魔物なことはユベーラたちも知っているはずなのに。


「ここにいるメンバーは精鋭だ。これで倒せなかったら軍隊でも動かした方がいいかもしれない」


 ユベーラはニヤリと笑う。

 確かに全員それぞれ強そうだ。


 ゾロゾロと数を揃えるより少数のチームで素早く動くことを選んだのだろう。


「さて、行こうか。こうしている間にもザイハンシは逃げてしまうかもしれない」


 ケットとエルパーにはなかったピリッとした真剣な空気をまとい、俺たちは街を出る。

 クリアスの案内でザイハンシとコカピヨスと戦った場所に向かう。


「だいたいこの辺りです」


 コカピヨスと戦ったところはよく見れば地面が荒れている。

 火なんかの派手な攻撃はしなかったので分かりにくいが、よく地面を見ると石化させられて砕けた人のようなものも転がっていたりする。


「‘ここにくると思い出しちゃうな……’」


 もちろん思い出すのはヘルンのことだ。

 アニキ! という無邪気な言葉が聞こえてくるような気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ