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【第二章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

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同じ目線の高さ1

「ラクさん……?」


 真っ白な意識が、いつの間にか真っ暗になっていた。

 クリアスの声が聞こえて、俺は自分が目を閉じているのだと気づいた。


 目を開けると壁が見える。

 俺はクリアスに背を向けて立っているようだ。


 まず気づいたのは視線の高さ。

 前のウルフの体よりも視線が高い位置にある。


「‘ふぅ……’」


 胸いっぱいに空気を吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。

 合成直後の体の調子はすごく良い。


 生まれ変わった、そんな気分に満ちている。


「‘俺は……俺だな?’」


 誰にでもなく問いかける。

 確証も得られないが、とりあえず俺はラクだ。


 ヘルンでもなく、謎の魔物でもなく、俺は俺だ。


「‘クリアス’」


 俺は自分の姿を確認する前に振り返る。

 不安げに俺を見つめるクリアスの視線の向きを見れば、俺の目がどの高さにあるのかも分かる。


「これ……」


 クリアスは両手を突き出す。

 片手には青い布、もう片方にはピンクの布。


 ヘルンに着けていたものは合成の時に消えてしまった。

 わざと青い布を少し前に出している。


「……あっ」


 俺は目を細めて手を伸ばす。

 青い布に手を伸ばしてやるとクリアスは少し悲しそうに声を漏らした。


「‘本当は青がいいんだけどな’」


 ピンクは趣味じゃない。

 だが、もうピンクは俺の色だ。


「あっ……」


 俺はピンクの布を手に取る。


「‘巻いてくれ’」


「あの、顔が近いですよ……」


 俺は少し顎を上げてクリアスに体を近づける。

 クリアスは少しドギマギとした顔をする。


 それでも腕を伸ばして俺の首にピンクの布を巻いた。

 首周りが太くなったのか、少しだけ布がキツい気もする。


「‘ケモノ要素が強いな……’」


 とりあえずクリアスは安心させた。

 俺がラクだと分かって一安心、ニコニコだ。


 軽く手を確認する。

 ウルフとは違うが、人というにもまた違う。


 ケモノっぽさを残しながらちょっと人に寄ったような中途半端な手であった。

 視線を落とすと足が見える。


 足は割とケモノっぽい。


「……少しだけ待ってください」


 合成は上手くいった。

 俺は俺のまま、姿も大きく変化した。


 合成室にこれ以上留まる理由はない。

 行こうとしたら、クリアスはヘルンが寝かされていたところを名残惜しそうに見る。


 一度頭をさげる。

 それは感謝だったのだろうか、あるいは謝罪だったのだろうか。


 俺には分からない。


「行きましょうか」


 どちらの意味にしても、きっとクリアスもヘルンのことは忘れないんだろうな。


「また二人きりになってしまいましたね」


「‘そうだな’」


 小うるさい奴がいないから静かだ。

 何を言ってるのかクリアスには分からずとも、キーキーと何かを俺に話しかけていたことは分かっている。


 疎外感を感じて拗ねていた頃が懐かしいぐらいになってしまう。


「おお、強そうになりましたね。おめでとうございます!」


「はは……ありがとうございます」


 冒険者ギルドの職員は俺たちの胸中など知りもせず、合成された俺をみて祝いの言葉を口にした。

 おめでとうでもなんでもない合成なのだけど、そんなこと言ったってしょうがない。


「スキル鑑定はしていきますか?」


「……お願いします」


 新しい姿になったのだから、何かのスキルが目覚めていてもおかしくない。

 合成後のスキルチェックは流れとしてやっておく。


「こちらがスキル鑑定の結果です」


 サラッとスキルが鑑定されて、職員が鑑定結果を書き記した紙をクリアスに渡す。


『スキル鑑定結果

 毒耐性(小)

 疾走

 ファイヤーボール

 魔術の素養

 マジッククロー』


「‘順当にスキルが増えてくな’」


 今のところ、元々俺が持っていたスキルはそのまま引き継がれている。

 そして、新たなスキルが二つも増えた。


「‘魔術の素養……’」


 二つの中で、俺が注目したのは魔術の素養というスキルである。

 マジッククローというやつは、おそらく今の体の魔物のスキルだろうと思った。


 ただこの体が魔法の才能を持っていそうな感じはしない。

 ならば魔術の素養とやらがどこから来たのか。


「‘ヘルン……’」


 となるとヘルンしかない。


「‘あいつには……そんな可能性があったのか’」


 魔術の素養というスキルがどんなものなのか正確には分からない。

 だが魔法に関するスキルだろうことは想像に難くない。


「‘そうか……お前にも才能があったんだな’」


 俺は思わず目を細めてしまう。

 盾じゃなかった。


 ヘルンには杖でも持たせて、魔法の練習をさせた方がよかったのかもしれない。

 そしたら、もしまだ生きていて、これから先も生きていたとしたら魔法が使えるすごいゴブリンになっていた可能性もある。


「‘……まあ、生きてたら、だけどな’」


 全部長生きしてたらの話だ。

 死んでしまった今はもうそんなものただの仮定でしかない。


「‘だが……お前のくれたスキルは無駄にしないぞ’」


 魔術の素養。

 なんだか良さそうじゃないか。


 ヘルンが上手く扱えたのかは謎だし、今の俺に扱えるかも謎である。

 ただこうしてスキルを増やし、俺にできることが増えていけばきっと役立つ時が来る。


 無駄になるようなことは絶対にないと言い切ってやる。

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