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【第二章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第三章

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ダンジョン都市1

「もう少しで……大きな町に着くはずですね」


 少し前の大きな町で冒険者ギルドの人に写してもらった地図を眺めながら、クリアスは歩いている。


「きゃっ!?」


「‘おっと、大丈夫か?’」


 足元の石ころにつまずいてクリアスがバランスを崩す。

 危ないなと思っていた俺は、素早く反応してクリアスのことを支える。


「ありがとうございます、ラクさん」


 クリアスは俺に向かって笑顔を浮かべる。


「‘危なっかしいな……’」


 少しは成長してきたと思ったらこれだから目が離せない。


「へへ……ラクさんも大きくなりましたね」


 クリアスは照れくさそうにしながら自分の足で立つ。

 大きくなった、なんてまるで成長したようにいうけれど、成長というと少し違う。


 俺とクリアスが出会った最初の頃、俺はコボルトだった。

 それが今や立派なワーウルフ的な魔物になっている。


 成長といえば成長に見えるかもしれない。

 ただ俺は合成を重ねてこんなに大きくなった。


 子供のようなコボルトから大人のようなワーウルフになったのだった。


「地図を見ながらでは危ないですね」


 クリアスは地図を丁寧に畳む。

 道があっていることさえ確認できたら、あとは地図を眺める必要もない。


「アカさん、背中失礼しますね」


「ブッ」


 忌々しいピヨハンシを倒した町から旅を続けてきた俺たちには新たな仲間も増えていた。

 新たな仲間は豚だ。


 かなりデカめの大型犬ぐらいはありそうな豚も一応魔物である。

 基本的に動物は人間を除いて魔物扱いなので、契約しようと思えばほとんどの場合契約できる。


 こいつは晩飯にしようと俺が捕まえたところ、キラキラしたお目目で命乞いをしてきたので荷物持ちとしてクリアスが契約した。


「よいしょ……これでいいですね」

 

 クリアスは豚の背中に背負わせているリュックに地図をしまい込む。

 豚の名前はアカ。


 なんてことはなく、首に巻いたバンダナの色からそう呼ばれている。

 ちゃんとした名前をつけると、別れが惜しくなる。


 たとえ死なずとも合成をすれば存在はなくなり、たとえ同じ名前でも違う中身になってしまう。

 他の魔物は俺とは違う。


 だからちゃんとした名前をつけるのをやめた。

 その時につけたバンダナの色で呼ぶことにしたのだった。


「もう転びませんよ! 行きますか!」


 クリアスなりに考えている。

 何かがあった時に、心があまり傷つかないようにすることも大事だったりするのだ。

 

 俺は合成したって俺なのでラクっていう立派な名前で呼んでもらえる。


「‘早くベッドで寝たいもんだ’」


「ブヒッ」


「‘お前もか?’」


 ちなみにアカが何言ってるのか俺には分からない。

 だからヘルンのように意思疎通はできない。


 ただアカは俺の言うことをある程度理解しているらしくて、返事のような鳴き声は返してくる。

 俺も話せない方が変に情が移らなくていい。


 豚にアニキなんて呼ばれても嬉しくはないしな。


「‘こうしばらく町がないと宿が恋しくなるな’」


 歩きながら俺は体を伸ばす。

 前に泊まってから宿があるような町を経由せずにここまできている。


 食べ物ぐらいは売ってくれても、泊まれるところがなくて安全に野宿できるぐらいのことしかなかった。

 硬くて質の悪いベッドでも、地面よりいくらかマシだと野宿が続くと思うものだ。


「あっ! 見えてきましたよ!」


 日が落ちてきて、もう一日野宿かもしれないと覚悟し始めた頃、遠くの方に町が見えてきた。


「‘おお……何とも壮大だな’」


 まず見えてきたのは巨大な城壁だった。

 町中の様子はもうちょっと近づくと、開け放たれた城門からチラリと確認できるのみ。


「‘ここが城郭都市ビスタミオン、か’」


 入るのに多少のお金を取られ、俺たちは町にたどり着いた。

 もうすでに日は落ちてきて夕暮れの時間となっているが、城壁の内側に入ると大きな通りは魔力で点く明かりが置いてあったり人通りも多くて雰囲気は賑やかだった。


 石造りの通りや建物が続いていて、すごく情緒のある町並みだと俺でも感じる。

 ビスタミオンというこの都市は周辺でもとりわけ大きい。


 高い城壁に囲まれていて、城郭都市となっている。

 ただし、元がつく。


「ダンジョンにお宿があればいいんですけどね」


 なぜ元なのか。

 それはビスタミオンにはダンジョンがあるからだ。


 隣国との要地に築かれたビスタミオンは長らく単なる防衛の要所ともなる都市であった。

 しかしある時にダンジョンが発生して少し事情が変わった。


 少しばかり城郭都市としてやっていくのは大変になった。


「お金はありますから! ちょっといいところに泊まっちゃいましょうか!」


「‘良いベッドがある宿がいいな。美味いレストランが近くにあるとなおよし’」


 せっかく大きな町に来た。

 ダンジョンもあるし町に宿があることは確実だと言い切ってもいい。


 それにお金もある。

 ピヨハンシが賞金首となっていたので、そのお金をもらえた。


 結構な金額になって、流石に全部持って歩くなんてリスクは冒せないので冒険者ギルドに多くを預けてある。

 ただ今の手持ちの金額も旅に出た時とは比べ物にならない。


 体を労わるために、良い宿に泊まるぐらいの贅沢は許される。

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